日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
36 巻, 4 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 横尾 聡, 去川 俊二, 長谷川 泰子, 中村 英玄, 山口 高広, 小川 将, 牧口 貴哉
    2024 年 36 巻 4 号 p. 73-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー
    手術によって生じた顎口腔領域の機能障害や美容・整容的障害は,術前と同一の状態に回復することはできない。術後の欠損に適合した新たな機能体系を構築し,患者が受容できる機能を再形成することが重要で,その再建をfunctional unit reconstructionと呼ぶ。美容・整容面では,術後に患者が受容できるための新たな顔面外形の形成が重要であり,これをframework reconstructionという。Functional unitの概念から考えると,舌,口底,下顎など,顎口腔領域の単体再建では機能再建は不可能であることに気づく。顎口腔領域全体の機能において,各器官が持つ機能性を考慮することが重要で,機能複合体としてひとつの再建を行う必要がある。そのためには,口腔外科医,形成外科医,頭頸部外科医,顎顔面補綴医などが「摂食とは何か,患者が術後受け入れられる顔貌とは何か」という壮大なテーマについて共通の理解を共有しなければならない。すなわち,治療の目的・目標という共通認識,つまり,咀嚼や顎関節機能を含む顎口腔機能とfunctional unit reconstructionの理解が必要である。加えて,下顎再建は顔面の再建であり,患者が術後に受け入れられる顔面のframeworkに関する術者の思考が必須である。
症例報告
  • 須田 大亮, 船山 昭典, 新美 奏恵, 佐久間 英伸, 齋藤 大輔, 林 孝文, 丸山 智, 田沼 順一, 小林 正治
    2024 年 36 巻 4 号 p. 89-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー
    口腔領域の転移性腫瘍は比較的まれであり,なかでも膵癌の口腔転移は極めて少ない。今回われわれは下顎歯肉への転移性腫瘍を契機に膵癌の診断に至った1例を経験したので報告する。患者は57歳女性。既往歴として糖尿病と腰椎椎間板ヘルニアがあった。左側下顎第二大臼歯遠心の歯肉腫脹と出血を自覚し近医歯科で消炎処置を受けたが,1か月経過しても改善しなかったため,消炎と智歯抜歯の依頼で当科を紹介受診した。左側下顎第二大臼歯遠心歯肉に10×5mmの隆起性の腫瘤を認め,造影CTでは造影性を認めた。細胞診の結果はLow grade squamous intraepithelial lesion(LSIL)で,生検ではAdenocarcinomaの診断であった。免疫組織化学ではCK7,CK20,MUC1が陽性,CDX2,PAX8,MUC2が陰性で,膵癌,胃癌,大腸癌等の転移性腫瘍が疑われたためPET/CTによる全身検索を行った。膵尾部のFDG集積を伴う腫瘤と腹膜播種病変,両肺と肝臓の多発結節,脊椎や骨盤に多発するFDG集積を認め,診断は膵癌ならびに多発転移疑いであった。当院消化器内科に対診し膵臓の超音波内視鏡下穿刺吸引法EUS-FNAによりAdenocarcinomaの確定診が得られた。ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法を行ったがその後,BSCの方針となり,初診の131日後に死亡した。
  • 福田 直志, 髙丸 菜都美, 秋田 和也, 野上 幸裕, 常松 貴明, 栗尾 奈愛
    2024 年 36 巻 4 号 p. 97-104
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー
    超選択的動脈塞栓術を併用し治療した上顎に発生した中心性巨細胞肉芽腫の1例について報告する。患者は16歳の女性で,右側上顎の無痛性腫瘤の精査・加療を目的に当科を受診した。生検の結果は巨細胞病変疑いの診断であった。画像検査により病変内の豊富な血管網が検出されたため,超選択的動脈塞栓術の後に全身麻酔下に摘出搔爬術を施行した。病理組織学的に病変は最終的に巨細胞肉芽腫と診断された。術後4年を経過するが,再発は認めていない。
feedback
Top