舌癌における腫瘍の診断にはMRIも多く用いられているが炎症等の非腫瘍性変化を伴うときは, 画像上の予想浸潤範囲が実際の腫瘍浸潤範囲と異なることも経験される。そこで, 今回術前MR画像診断における予想腫瘍局在範囲と実際の手術切除物の病理組織学的浸潤範囲との整合性, 組織分化度や浸潤部の間質反応の要因を含めて検討を行った。対象は1990年から2000年までの間に当科を受診し, 病理組織学的検査にて診断された舌扁平上皮癌でMRI撮影した45例とした。MR撮影装置はSHIMADZU社製, 超伝導1.5Tで, 撮影法はスピンエコー法, T1強調像, T2強調像, 造影MR画像を行った。画像評価として腫瘍の有無の判定のほか予想腫瘍浸潤範囲の計測を行った。切除物の病理組織学的浸潤範囲の計測, 組織分化度, 浸潤様式, 間質のリンパ球浸潤, 線維化の有無について評価を行った。T1強調像における感度は64.5%, 特異度70%, 精度65.5%, T2強調像の感度は89.9%, 特異度80%, 精度87.3%, 造影MR画像, 感度は75%, 特異度90%, 精度78.6%, となり, 感度は特にT2強調像で最も高く腫瘍の検出には有効であると考えられた。発育様式, 分化度, 浸潤様式, 間質におけるリンパ球浸潤, 線維化の有無について, MR診断の感度が高かったT2強調像での腫瘍境界性状について大きく明瞭型と不明瞭型の2群にわけその関連性をFisher検定にて求めた。その結果, 特に内向型の発育様式を示す腫瘍で不明瞭型を示す傾向がみられた。次に病理組織学的腫瘍深達度が20mm以下の群と20mmをこえる群の2群に分け, 3タイプのMR撮像条件における両者の相関係数を求めたところ腫瘍径20mm以下の群よりも20mmをこえる群において, 特にT2強調画の相関係数は0.91と高値で強い相関を示した。T2強調画は切除範囲の決定に参考になると考えられた。
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