日本口腔腫瘍学会誌
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24 巻, 4 号
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原著
  • ―生体および切除標本における超音波像と病理標本との比較―
    石井 純一, 八木原 一博, 桂野 美貴, 住本 和歌子, 宮嶋 大輔, 柳下 寿郎, 出雲 俊之
    2012 年 24 巻 4 号 p. 129-135
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/26
    ジャーナル フリー
    舌癌の正確な切除のためには術前に腫瘍の進展範囲についての情報が必要である。進展範囲は生体と切除標本超音波像を用いて計測された。二つの超音波像における腫瘍の進展範囲に関して相違は認められなかった。しかし,生体の超音波像と病理標本における腫瘍の進展範囲とは有意な差があった(p < 0.05)。しかしながら,生体超音波像の進展範囲とヘマトキシリンエオジン染色病理組織標本との間には大きさに関して有意な相関関係があった(p < 0.01)。さらに,回帰分析によると生体超音波像の腫瘍の進展範囲から病理標本の腫瘍の進展範囲を正確に予測することができた(R2:0.52~0.88)。
    このように超音波検査で腫瘍の進展範囲を正確に把握することは舌癌の患者の外科切除を計画するための検査として有用な方法であることが示された。
  • 玉置 盛浩, 山中 康嗣, 下村 弘幸, 笹平 智則, 山川 延宏, 柳生 貴裕, 青木 久美子, 今井 裕一郎, 桐田 忠昭
    2012 年 24 巻 4 号 p. 137-145
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/26
    ジャーナル フリー
    1995年から2010年までに当科で加療した唾液腺原発粘表皮癌12例(男性6例,女性6例,平均年齢59.3歳)に対して臨床病理学的検討を行ったので報告する。
    Goode分類による病理組織学的悪性度は低悪性度8例,高悪性度4例であった。年齢と病理組織学的悪性度との関連は,低悪性度の平均年齢は55.1歳,高悪性度は67.5歳で年齢差を認めなかった。性別との関連では,低悪性度は女性が多く,高悪性度は男性に多かった。頸部リンパ節転移との関連では,低悪性度はN0が多く,高悪性度はN1-3が多かった。臨床病期分類との関連では,低悪性度はstage Iが多く,高悪性度はstage IVAが多かった。原発巣制御率との関連では,低悪性度75.0%に対して高悪性度の制御率は25.0%と低下していた。生存率は,低悪性度の5年死因特異的累積生存率87.5%に対して高悪性度は25.0%と不良であった。同様に5年無病累積生存率も低悪性度72.9%に対して高悪性度は22.0%と不良であった。
    Goode分類は粘表皮癌の予後予測として有用な病理組織学的悪性度分類であると思われた。
臨床統計
  • 野池 淳一, 柴田 哲伸, 植松 美由紀, 清水 武, 五島 秀樹, 長谷部 大地, 横林 敏夫
    2012 年 24 巻 4 号 p. 147-154
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/26
    ジャーナル フリー
    角化囊胞性歯原性腫瘍(KCOT)は,錯角化を呈する重層扁平上皮に被覆された良性の顎骨腫瘍であり,そのもっとも重要な臨床的特徴は,手術後の再発率が高い傾向があることである。
    今回われわれは,1983年から2010年にかけて長野赤十字病院口腔外科にて治療を行ったKCOTの63例について検討した。患者の平均年齢は40歳で,性差はみられなかった。発生部位は,下顎角部を中心に前方あるいは上方におよぶものが多かった。手術方法は59例に対して摘出術が施行され,10例に再発が認められた。開窓後摘出術を施行した2例,下顎骨辺縁切除術を施行した1例,下顎骨区域切除術を施行した1例には再発がみられなかった。全体として再発率は15.9%であった。再発の多くは,腫瘍に接触する歯根の周囲にみられた。手術から再発までの期間は平均4年3か月であった。
    この調査の結果,KCOTにおいては他の顎骨囊胞よりも積極的な治療と,長期間の経過観察が必要であると思われた。
症例報告
  • 今井 裕一郎, 上田 順宏, 畠中 利英, 柳生 貴裕, 中村 泰士, 山川 延宏, 青木 久美子, 山中 康嗣, 桐田 忠昭
    2012 年 24 巻 4 号 p. 155-163
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/26
    ジャーナル フリー
    上顎悪性腫瘍に対する術後の欠損部位に対して,再建手術が進歩した現在でも顎義歯が多く適応されている。顎義歯には中空型と天蓋開放型があるが,浸水液が貯留して雑菌の繁殖や発音時の音のひずみ,共鳴といった欠点がある。
    近年,CTなどの三次元画像データからCAD/CAM技術を応用し,実物と同形態の立体モデルが製作可能な光造型装置が臨床応用されるようになった。しかし,モデル作製に費用と時間を要するものであった。
    今回,われわれは上顎悪性腫瘍切除後の顎義歯作製時に従来型の光造型法に代わり,インクジェット法を利用した三次元積層造形モデルを応用した。本法は軟部組織を抽出し,モデル化することによって口腔内印象では得ることのできない上顎悪性腫瘍切除後の欠損腔全体をモデル化することが可能となり,アンダーカットを有効に活用した辺縁封鎖性の良い空気注入式顎義歯製作に有効な方法であると思われた。
  • ―2例報告―
    木村 幸紀, 花澤 智美, 岡野 友宏, 入江 太朗, 美島 健二, 新谷 悟
    2012 年 24 巻 4 号 p. 165-172
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/26
    ジャーナル フリー
    われわれの施設では,最近,舌扁平上皮癌で2例の外側咽頭後リンパ節転移がみられた。1例は過去に同側の舌癌で局所切除を受けていた34歳の女性で,舌の疼痛を生じて来院した。口腔内診査ではT2N0舌扁平上皮癌が示唆された。舌部分切除が施行された。術後のCTで頸部リンパ節転移がみられたため機能的頸部郭清術が施行された。しかしながら,1か月後にCTで転移性の咽頭後リンパ節が認められた。もう1例は80歳の女性で,舌の接触痛を生じて来院した。初診時の診査ではT4a舌扁平上皮が示唆された。CTでは両側性の頸部リンパ節転移がみられ,T4aN2cM0舌癌の診断となったが,さらに転移性の咽頭後リンパ節が認められた。これら自験例2症例と本邦で報告されている外側咽頭後リンパ節転移を生じた舌癌7例を検討した。TN分類の内訳は次の通りであった:T1;2例,T2;1例,rT2;1例,T3;2例,T4;2例,不明;1例,N0;5例,N1;1例,N2c;2例,不明;1例。全例で外側咽頭後リンパ節転移は頸部転移と同側にみられた。外側咽頭後リンパ節転移の殆どは原発巣の治療後の1年以内に生じていた。外側咽頭後リンパ節転移は外科的治療がなされた場合のみに制御されていた。よって,舌癌の患者においても,外科的切除や遠隔転移の予防が不可能となりかねない節外浸潤が起こる前に外側咽頭後リンパ節転移の早期発見のための画像診断に関心を寄せるべきである。
  • 脇田 祐輔, 田上 隆一郎, 古賀 真, 中村 守厳, 岩本 修, 楠川 仁悟
    2012 年 24 巻 4 号 p. 173-177
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/26
    ジャーナル フリー
    Forestier病は,脊椎の前縦靭帯骨化と肥厚を起こし脊椎強直をきたす疾患である。このため,Forestier病が頸椎に生じた場合には,気道管理の困難や嚥下障害が起こることが危惧される。
    今回,われわれはForestier病を伴う舌扁平上皮癌患者の1例を報告する。患者は69歳男性。右舌縁部の有痛性腫瘤形成にて2008年3月中旬当センターを受診した。口腔内所見では,右舌縁部に 22×18×10mmの肉芽腫様腫瘤を認めた。CT検査では頸椎の骨過形成を認め,それによる気管の偏位と気道の狭窄を認めた。同年4月中旬,全身麻酔下に舌部分切除術を施行した。手術に先立って,舌切除後の気道閉塞や誤嚥を考慮して気管切開を行った。術後経過は良好で誤嚥を認めていない。術後48か月が経過したが,Forestier病の進行による嚥下障害の出現や舌癌の再発,転移は認めていない。
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