甲状腺異常のある悪性眼球突出症および, 甲状腺異常の認められない悪性眼球突出症の各1例に, 漢方治療を行なったところ眼症状の軽快を得たので報告した。症例1は62才主婦で, 眼球突出 (右23, 左22mm), 視力低下 (右0.1, 左0.5), 全外眼筋麻痺, 眼瞼眼球結膜の充血浮腫を呈していたが甲状腺機能は正常であった。苓桂朮甘湯および当帰芍薬散のエキス荊を投与したところ, 7日後には眼球突出 (右21, 左20mm), 視力 (右0.6, 左0.7), と改善し, 充血浮腫, 眼球運動障害は消失, ほとんど正常となった。症例2は66才男で, 眼球突出, 眼球運動障害, 眼瞼眼球結膜の充血浮腫を呈し, 甲状腺機能検査の結果, euthyroid Graves病と考えられた。苓桂朮甘湯および八味地黄丸エキス剤を投与したところ視力, 眼球運動, 充血浮腫の改善, 消失を得た。
これらの結果から, 漢方療法は, 甲状腺異常の有無にかかわらず, 悪性眼球突出症に対して有効であると考えられた。
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