日本東洋医学雑誌
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48 巻, 1 号
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  • 村上 和憲
    1997 年 48 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    白血球は生体を防御する上で重要な役割を果たしているが, 過剰な活性化を受けると顆粒球エラスターゼや活性酸素を放出し, 組織傷害を引き起こすことが知られている。今回, ラットでインドメタシン潰瘍モデルを作成し, その病態生理における活性化白血球の役割と漢方薬の効果について検討した。顆粒球エラスターゼの特異的阻害剤のONO-5046および六君子湯は胃粘膜病変形成を有意に抑制した。インドメタシン投与により胃には白血球が集積したが, ONO-5046および六君子湯はこれを有意に抑制した。また, 六君子湯は in vitro において顆粒球エラスターゼの放出を抑制することが判明した。これらの結果よりインドメタシン潰瘍形成には活性化白血球が重要な関与をしており, 胃酸分泌を抑制しなくとも活性化白血球を制御することで胃粘膜病変形成は抑制しうることが判明した。また, 六君子湯は活性化白血球のエラスターゼ放出を抑制することで, 潰瘍形成を抑制している可能性が考えられた。
  • 唐 方, 中西 由香, 中野 厚, 阿部 博子
    1997 年 48 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    加齢に伴う小腸粘膜形態の変化に対する六君子湯, 補中益気湯, 人参養栄湯, 半夏瀉心湯の影響を検討した。その結果, 36週齢ラットの小腸粘膜の変化には六君子湯, 補中益気湯のような補気健脾剤が有効で, 特に絨毛と微絨毛の吸収面積の改善には濃度依存性が認められた。ところが, 50週齢. 70週齢のより高齢のマウスに対しては人参養栄湯のような気血双補剤が有効で, 小腸の形態及び吸収機能が著明に改善されることが明らかになった。
  • 松田 三千雄
    1997 年 48 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    DLEはステロイド外用療法が広く行われているが難治である。今回著者はステロイド抵抗性のDLEに対し, 漢方製剤で著明改善した症例を経験したので報告する。漢方的診断のもとに証を決定した。その結果, 症例は気虚と〓血の合併と考えられた。そこで補中益気湯と桂枝茯苓丸を用いたところ皮疹と付随する全身症状も消失し, 経過良好である。
  • 水島 広子, 大野 裕, 神庭 重信, 山田 和男, 萬 知子, 山田 寛幸, 福澤 素子, 石井 弘一, 太田 博明, 村田 高明, 浅井 ...
    1997 年 48 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    身体表現性障害に対する漢方治療の有効性を調べるための予備的な研究として, 漢方外来初診患者100名 (男性17名, 女性83名, 平均年齢39±16歳) を対象に, somatoform disorders schedule より作成した身体表現性障害チェックリスト, 主観的幸福感を調べる subjective well-being inventory (SUBI) を施行した。身体表現性障害の患者は全体の65%を占めた。身体表現性障害の患者は身体疾患患者に比べてSUBIの positive スコアが有意に低く (p=0.042), negative スコアが有意に高かった (p=0.001)。身体表現性障害群では, 身体表現性障害の症状数はSUBIの positive スコアと負の相関関係 (r=-0.267, p=0.032) を, negative スコアと正の相関関係 (r=0.337, p=0.006) を示した。
  • 新井 一郎, 小松 靖弘, 山浦 常, 田口 進
    1997 年 48 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    桔梗湯の消化管ホルモン分泌に対する作用を健常人において検討するとともに, 慢性膵炎患者の腹部症状に対する効果を検討した。健常人において桔梗湯エキス顆粒5g投与により血漿コレシストキニン, セクレチン濃度の上昇が認められた。また, 桔梗湯エキス顆粒7.5g/日投与により慢性膵炎患者の腹痛, 圧痛, 下痢, 軟便などの自覚症状は消失した。これらのことから, 桔梗湯はヒトにおいてコレシストキニン, セクレチンなどの消化管ホルモン分泌を介する膵外分泌刺激作用を示す可能性があり, このことを通じて, 慢性膵炎患者の腹部症状に有効であると推測された。
  • 我妻 恵, 豊田 隆謙
    1997 年 48 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    耐糖能異常例について清心蓮子飲による耐糖能の変動の有意性を検討した。対象は, 75g-OGTTにて耐糖能異常が認められ, これまでに清心蓮子飲の投与を受けていない男性20例 (平均年齢42.0±14.7歳) で, 各例についてルーチンの75g-OGTTと, TJ-111清心蓮子飲2.5g (熱湯100ml溶解液) 服用30分後のGTTを行い, ルーチンのGTTでピークの血糖を呈した時点での血糖値およびIRI値と, 清心蓮子飲服用後のGTTの同時点での値を比較し, 変動の有意性を検討した。その結果, ルーチンGTTのピーク血糖値の平均は207.3±57.1mg/dl, 清心蓮子飲服用後では, 172.4±22.9mg/dlで, 両者に有意差が認められた (p<0.025)。これに対応するIRI値の平均は, ルーチンGTTでは, 49.7±35.5μU/ml, 清心蓮子飲服用後では, 35.6±12.5μU/mlで両者に有意差はなかった。従って, 清心蓮子飲投与によりインスリン感受性が改善した可能性が考えられる。
  • 仲西 宏元, 尾崎 昭弘
    1997 年 48 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    東洋医学における漢方療法は, 内因性に生体内の活性化を引き起こす。灸療法もまた漢方療法の相補的治療の一つとして行われてきている。灸刺激による効果は, 皮膚局所の血管の変化を引き起こす。温熱刺激効果によって血管拡張の変化を起こし, 同時に細静脈の血管透過性を亢進させるため, 局所的な代謝促進効果が認あられる。
    本実験は, 従来推測の域をでなかった局所温熱刺激による血管拡張作用の代謝促進効果を調べた。具体的には, 毛根の代謝促進効果を育毛の成長, 毛根の組織像の変化によって評価した。
    実験動物には休止期毛を有する6週齢のCH3/HeNCrJ系雄マウスを用い背部の毛を約8cm2を剃毛した。灸刺激は, 温筒灸を毛を剃った部の中央に1週間に2回行った。灸刺激には血管を長時間拡張させる作用が認められ, 毛包細胞を増加させ, マウスの育毛を促進した。
  • 小山 誠次
    1997 年 48 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    『日本東洋医学雑誌』第47巻第1号に筆者の論文「〓苡仁の治疣処方」が掲載された。今回, その論文の内容を追補しうる文献を見出したので報告する。山脇東洋著『養寿院山脇先生方函』には,「肬ヲ理スル方 〓苡仁五銭 右一味, 水三合ヲ以テ煮テー合ヲ取リ, 或ハ服シ, 或ハ洗フ。(原文漢文)」とあり, 山脇東洋が〓苡仁を民間薬的に疣の治療として使用していたことが明白である。本書の成立年は全く不明であるが, 治療年代は山脇東洋の没年 (宝暦十二年) より以前であることは論を侯たない。この記事は『大和本草』中の〓苡仁の治疣記事より遥かに確実である。また, 〓苡仁の治疣処方を最初に記載した『名家方選』は, 山田元倫が10歳代後半から秘かに諸家の諸名方を盗掠し, 纂集した書であり, 山田元倫の名は諸文献によれば惟亨となっているが,『名家方選』自叙には維亨とあり,『黴瘡約言』には惟亨とあるので, 始あは維亨だったかもしれない。
  • 木村 博
    1997 年 48 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    甘麦大棗湯が, ラットにおけるあくび行動の発現に対し影響を与えるか否かについて検討を加えた。ドパミンD-2受容体作動薬タリペキソール5~100μg/kgを皮下投与して直後より1時間のあくび行動を観察したところ, 25μg/kg投与群で最大のあくび行動の発現が見られた。ついで甘麦大棗湯の25~250mg/kgを経口摂取させ, その30分後にタリペキソールを最大効果が見られた用量で投与し, あくび行動誘発に対する効果を観察した。タリペキソール誘発あくび行動の発現は, 甘麦大棗湯の前投与により有意に抑制された。この結果より, 甘麦大棗湯は, 中枢性ドパミン性神経促進に基づくあくび行動の誘発に対して抑制作用を有することが示された。
  • 1997 年 48 巻 1 号 p. 59-70
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
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