心身のストレスが発病の誘因とされる中心性漿液性網脈絡膜症の黄斑浮腫の成因を東洋医学的に解釈しようとした。対象は当院を受診した男性19名, 女性11名であり, 年齢は31歳より53歳の範囲にあった。漢方的診断に基づき主に漢方薬エキス剤のみを処方し, 視力, 中心視野または蛍光眼底検査により経過を観察した。その結果, 発病に関与したと考えられるストレスは, 視覚的なもの8例, 精神的なもの14例, 肉体的なもの3例, 不明5例であった。症状は肝経の異常22例, 脾経の異常16例, 腎経の異常8例, 心経の異常1例を認め, この中で肝うつ脾虚は9例であった。1ヵ月以内に治癒した23例に使用された方剤は柴胡剤, 駆〓血剤, 地黄剤, 利水剤, 補脾剤であった。漢方的診断, 使用方剤の結果より, この疾患の黄斑浮腫は, 視覚的または精神的ストレスが肝に影響し, 肝が脾を傷害すること, または腎虚または生来の脾虚等による水滞に関連があると考えられた。
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