術後肝障害に対する小柴胡湯の効果, 特に術前投与について検討し, さらに中医弁証的考察を加えた。対象は呼吸器および消化器外科患者66例で, 小柴胡湯5g/dayを術前のみ投与したI群 (16例), 術後も投与したII群 (17例) で, 臨床症状, 血液生化学検査, 中医弁証の三面より対照のIII群 (33例) と比較し以下の成績を得た。1) 臨床症状: 全身倦怠感, 食欲不振, performance status いずれもII群が最良でI群, III群の順に不良となった。2) 血液生化学検査: III群では術後GOT, GPT, LDH,γ-GTP, LAP, TB, DBが上昇し遷延したが, I・II群では上昇しないか, 上昇しても速やかに正常化した。3) 中医弁証: 術前の証の36.4%が術後転化したが特にII群は47.1%と高率で脾虚証への転化が多数みられた。
以上より小柴胡湯は術後肝障害軽減に有効で術前投与でも効果が期待できた。
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