日本東洋医学雑誌
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57 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 関矢 信康, 地野 充時, 後藤 博三, 柴原 直利, 嶋田 豊, 喜多 敏明, 寺澤 捷年
    2006 年 57 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 2006/05/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    九味檳榔湯は浅田宗伯の創方であり脚気樣症状を呈する水毒体質者によく用いられる処方である。我々は腹部右側の鼓音の存在は九味檳榔湯を使用する際の一つの目標になりうることを既に報告している。今回, これまで報告のなかった慢性痒疹, 皮膚〓痒症, 慢性蕁麻疹などの皮膚疾患さらに冷え症の症例に対し水滞の症候と腹部右側の鼓音を目標として九味檳榔湯を投与して著効を得た。このことから九味檳榔湯の使用を考慮する際にはこれまで重視されてきた所見に加えて右側型の鼓音の有無を検討することで, より高い精度で処方決定しうること, さらにはこれまで鑑別に挙げられることの無かった病態に対しても本方を応用しうる可能性が示唆された。
  • 松井 龍吉, 小林 祥泰
    2006 年 57 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2006/05/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    再発した胸水貯留に対し, 五苓散を投与したところ胸水の著明な減少と再発が見られなくなった症例を経験した。症例は61歳男性。うっ血生心不全, 大動脈弁閉鎖不全症, アルコール性肝障害などにて外来治療中であった。●●●●●●うっ血性心不全の急性増悪にて胸水が貯留。胸腔ドレーン留置などにより胸水は消失するが, 再度貯留し当院入院。入院後よりそれまでの内服薬を変更することなく, 五苓散を追加投与したところ胸水が消失し全身の浮腫性変化も見られなくなった。さらにその後も胸水の再貯留も見られていない。五苓散はいわゆる「水滞」を基盤にした種々の疾患に対し, 口渇, 尿不利を目標に投与される方剤である。急性疾患において血管内脱水と消化管の余分の水分のアンバランスを是正する処方であり,本例においても単なる利尿のみでなく, 利水として何らかの水分調節作用を示したと考えられた。
  • 鈴木 隆
    2006 年 57 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2006/05/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    症例1は27歳の1回経産婦。前回, 妊娠中毒症および骨盤位で帝王切開術で分娩す。今回は経膣分娩 (VBAC: vaginal birth after cesarean) を希望していた。今回の妊娠経過に特に異常は見られず。妊娠37週5日で破水のため入院す。感染予防のため抗生物質投与しつつ, 自然陣痛の発来を待機する。破水後44時間経過し陣痛が発来しないため帝王切開術による分娩の終了を考えたが, 桂枝茯苓丸エキスを頓服で投与したところ, 子宮収縮が始まる。その後陣痛増強し, 妊娠38週1日正常分娩す。症例2は33歳の1回経産婦。前回, 微弱陣痛のため oxytocin による陣痛促進で経膣分娩す。今回妊娠39週5日で誘発分娩 (社会的適応) 希望のため入院す。前回経験した陣痛促進がつらかったため (本人の弁), 今回の oxytocin の投与に躊躇が見られたので, 桂枝茯苓丸エキスを頓服で投与したところ, 子宮収縮が始まる。その後陣痛増強し, 同日正常分娩す。
    桂枝茯苓丸は代表的な駆〓血薬として臨床の場で広く応用されている。一方, 催生湯として, 万病回春には陣痛促進作用をうかがわせる記述があるが, 近年, 桂枝茯苓丸を陣痛促進の目的で使用した報告は少ない。桂枝茯苓丸が oxytocin や prostaglandin の代用になるとは考えていないが, 桂枝茯苓丸の投与で反復帝王切開術を回避し, また, 陣痛を増強して正常分娩に導いた症例を経験したので報告した。
  • 松田 三千雄, 菊地 梨沙, 飯田 憲治
    2006 年 57 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2006/05/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    Hailey-Hailey 病に対し疎経活血湯が著効した1症例を報告する。
    症例は70歳, 女性。家族歴で母, 姉, 祖母に同症がある。2004年8月頃から両鼡径部の掻痒を伴う湿潤性紅斑が出現し, 同年9月に受診した。組織検査から Hailey-Hailey 病と確定診断した。舌の亀裂, 臍窩不仁, 口渇, 盗汗から腎陰虚にて六味丸, 易疲労感から気虚と考え補中益気湯を選択した。皮膚病変は表皮に病変有ること, 湿潤性, 紅斑から風湿熱と考え越婢加朮湯を選んだ。それぞれエキス剤で1日各2包を朝夕内服してもらった。全身症状は改善したが皮膚症状は軽度改善したのみだった。風湿をより強力に除くため越婢加朮湯をやめて疎経活血湯に変更したところ著効した。
  • 萬谷 直樹, 山口 力威
    2006 年 57 巻 3 号 p. 359-360
    発行日: 2006/05/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    慢性便秘患者100人において便の形状と年齢の関係を調査した。兎糞状便の患者は太い便の患者に比較して, 有意に年齢が若かった。便の形状と年齢に関する漢方医学の説は再検討が必要であろう。
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