短期間で増悪傾向にあった慢性腎不全患者に対して補中益気湯とともに桂枝茯苓丸加紅花大黄を兼用し良好な経過を得た一症例を経験した。
症例は29歳の女性。87年近医で尿蛋白から腎生検を受けIgA腎症と診断された。同年11月, 和漢薬治療を希望し当科受診, 五苓散, 白虎加人参湯などを投与され腎機能は安定したが, 一時患者の判断で通院していなかった。92年2月急性肺炎の合併を契機に腎機能が増悪し当科再受診。Cr2.8mg/d
l, BUN20mg/d
lで, 高血圧も呈したため, 〓入院。食事療法と血圧のコントロールを行い, 第10病日よりプレドニゾロン (PSL) 40mg/日を開始した。尿蛋白が不変のため第18病日から3日間 methyl-PSL1g/日を投与したが, 第38病日 (PSL投与4週後) にCr5.0mg/d
lとなった。そこで当初投与していた柴苓湯を補中益気湯に転方, さらに桂枝茯苓丸加紅花大黄を兼用後, 腎機能は好転し, 第108病日にCr2.7mg/d
l, BUN26mg/d
lと低下, PSLを20mg/日まで減量, 第110病日退院, 外来通院後も良好な経過を得た。
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