日本東洋医学雑誌
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58 巻, 1 号
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特別講演
  • ―高齢者医療における漢方医学の意義―
    折茂 肇
    2007 年 58 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2007/01/20
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    1) 高齢者の定義の見直しについて
    東京都老人医療センター及び老人総合研究所において長年蓄積されてきた医学的, 社会学的データを解析した結果, 65歳以上を高齢者とする現行の定義を変え, 75歳以上を高齢者と定義することを提案する。
    2) 高齢者医療の理念と戦略
    3) 統合医療の概念
    4) 高齢者医療の質を高めるためには, 医療従事者が統合医療の概念についての理解を深めて, 漢方医学が西洋医療の主要なパートナーであるとの認識の下に, 患者さんのための統合医療を行なう体制を確立することが必須である。
学会シンポジウム
原著
  • ―スポーツ漢方医学の可能性について―
    中田 英之, 八重樫 稔, 秋葉 哲生, 西村 甲, 石毛 敦, 渡邉 賢治
    2007 年 58 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2007/01/20
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    競技スポーツは健康を目的とした運動に比べ, 身体に強い負荷を与える。特に女子選手においては, 身体の消耗が激しいため月経不順, 慢性疲労を始めとした体調不良に陥りやすい。そのため, 選手は練習プログラムの未消化, 成績の悪化, 競技の継続困難をきたすこともある。我々は, スポーツトレーニング負荷で生じる身体症状と血液検査所見および漢方医学的所見の関係, さらに身体症状に対する漢方薬投与の有効性について検討した。対象は陸上自衛隊東北方面隊女子駅伝チーム9名 (19歳から27歳, 中央値19歳) である。トレーニング負荷前後でHb, BUN, AST, ALT, CPKの測定, 漢方医学的診察, 身体症状の聴取を行った。身体症状出現予防に桂枝茯苓丸, 六君子湯, 四物湯をトレーニング期間中に投与し, 症状の変化について調査した。トレーニング負荷によりCPKが500IU/l以上になる症例では, 全身倦怠感, 膝痛, 腰痛などの身体症状が出現し, 漢方医学的所見として小腹にお血の圧痛が認められた。漢方薬投与により, トレーニングに伴う各種自覚症状は完全に消失し, 計画的にトレーニングを行うことができた。選手の記録は全例で向上した。以上の成績は, スポーツ選手の管理に漢方薬を利用することが有用であることを強く示唆する。
臨床報告
  • 貝沼 茂三郎, 平崎 能郎, 野上 達也, 犬塚 央, 宮坂 史路, 中村 佳子, 堀江 延和, 木村 豪雄, 三潴 忠道
    2007 年 58 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2007/01/20
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    三黄湯 (千金方) が有効と思われた2症例を経験した。症例1は63才女性。多関節痛, 手足の火照りを主訴に2004年12月当科初診。主訴に加えてイライラ, 悪寒を目標に, 三黄湯 (千金方) を投与。Visual analogue scale (VAS) は初診時の100mmが, 10ヵ月後の2005年10月には23mmまで改善した。症例2は62才女性。全身痛を主訴に2004年8月当科初診。種々の方剤が無効。2005年6月入院。全身痛, 足の火照り, 精神不安, 悪寒を目標に三黄湯 (千金方) に転方。VASでは入院時の80mmが, 2ヵ月後には26mmまで改善した。三黄湯 (千金方) は疼痛性疾患で, 手足の火照り, 精神症状, 悪寒を伴うような場合にもっと積極的に投与すべきではないかと考えられた。
  • 小暮 敏明, 巽 武司, 佐藤 浩子, 伊藤 克彦, 関矢 信康, 並木 隆雄, 寺澤 捷年, 田村 遵一
    2007 年 58 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2007/01/20
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    和漢薬が奏効した線維筋痛症 (FMS) の二例を提示し, FMSの臨床像と甘草附子湯証との類似点を考察した。
    症例1は52歳, 女性で2001年左手関節痛を自覚, その後両側の肘, 肩, 足関節痛とその周囲の筋痛が出現。近医リウマチ科で精査を受けたが異常はなくFMSと診断された。NSAIDsが無効のため, 04年当科を紹介受診した。桂枝二越婢一湯加苓朮加防已黄耆湯葛根を投与, 内服2ヵ月で疼痛は半減。06年3月VASは20%となりNSAIDsは不要となった。
    症例2は58歳, 女性で10年前から左肘痛を自覚。2004年から項頸部痛や両側上肢, 肩の疼痛が出現し, 近医整形外科を受診。頸部X-rayや神経学的に異常がなかったためNSAIDsで経過観察となった。05年3月症状が不変のため4月に当科を紹介受診。炎症反応が陰性でACRのFMS分類基準に適合した。甘草附子湯の3ヵ月の服用でVASは30%となりADLは向上した。
  • 有島 武志, 佐々木 一郎, 吉田 麻美, 深尾 篤嗣, 大澤 仲昭, 花房 俊昭, 石野 尚吾, 花輪 壽彦
    2007 年 58 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2007/01/20
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    我々は, バセドウ病発症に伴い, 精神変調を来した, もしくは精神変調が悪化し, 西洋医学的治療により甲状腺機能が正常化したにも関わらず精神変調の改善が無く, 漢方治療を併用することで改善を認めた2症例を経験した。症例1は, 24歳女性。2000年にバセドウ病と診断され, 抗甲状腺剤による治療が開始され, 機能正常となったが, イライラ感, 不安感, 絶望感等の精神変調が改善しないため2005年2月来院。症例2は, 26歳女性。高校卒業後, 就職を契機にバセドウ病を発症。抗甲状腺剤による治療が開始されたが, 甲状腺機能は不安定で軽度の亢進と低下を繰り返し, その間にイライラ感, 疲れやすい, 気力減退, 脱毛等の症状が悪化し, 2005年1月来院。2例とも桂枝甘草竜骨牡蠣湯合半夏厚朴湯を処方 (症例1は経過中変方有り) し, それぞれ16週, 9週後には症状は著明に改善した。精神変調を併発したバセドウ病に対する漢方治療の有用性が示唆された。
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