日本東洋医学雑誌
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45 巻, 3 号
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  • 漢方処方臨床第一相試験に対する適用
    矢船 明史, 丁 宗鉄
    1995 年 45 巻 3 号 p. 509-519
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は, 血圧日内変動評価のための二次元ベキ正規変換モデルを提示することである。このモデルは Uragari らによるモデルを拡張したものであるが, 収縮期血圧と拡張期血圧の相関をモデルに導入し, また Box-Cox 変換後のデータが途切れた分布 (truncated distribution) を有することを考慮している。本論文では, モデルの適用例として, 漢方処方の臨床第一相試験から得られたデータの解析例を示す。さらに, 血圧日内変動に対する漢方処方の薬効評価の必要性について論述する。
  • 原田 清行, 中田 好則
    1995 年 45 巻 3 号 p. 521-527
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    更年期障害の漢方治療治療時における, 血中エストロゲン値, 骨量を測定し, これらの変化について検討した。
    対象は当院, 更年期ホルモン外来を受診した65例とし, 治療は (1) エストロゲン療法, および (2) 漢方療法として (a) 柴胡加竜骨牡蛎湯, (b) 桂枝茯苓丸, (c) 桃核承気湯の投与を, また (3) 対照として (a) カルシウム製剤のみの投与, および (b) 精神療法 (無治療群とする), をそれぞれ6ヵ月間施行し, 治療前, 治療後に血中E2値, 骨塩量, 骨皮質幅指数などを測定した。
    その結果, 柴胡加竜骨牡蛎湯群に血中E2値の増加が, 柴胡加竜骨牡蛎湯群, 桃核承気湯群に骨塩量, 骨皮質幅指数の減少の緩和が認められ, このため柴胡加竜骨牡蛎湯は骨粗鬆症の予防に有効と判定した。また漢方療法にカルシウム製剤を併用することにより, 閉経期の骨粗鬆症の予防に高い有用性を示すことが示唆された。
  • 小山 誠次
    1995 年 45 巻 3 号 p. 529-534
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    加味逍遙散の出典は書物により一定しない。今日の10種薬物の処方からみれば,『和剤局方』には単に逍遙散のみ収載され,『女科撮要』,『内科摘要』には生姜, 薄荷を含まない8種薬物の処方が収載されているだけである。薛己以後,『万病回春』に初めて10種薬物の処方が登場する。また四物湯合方の出典も書物により一定しない。『和剤局方』には四物湯合方の記載はないが,『内科摘要』に8種薬物処方の加味逍遙散合四物湯の医案例がある。更に『勿誤薬室方函口訣』には10種薬物処方の加味逍遙散合四物湯は確かに記載されているが, 今回の調査でそれより約90年前の『療治経験筆記』に周身痒瘡に対する同合方の記載を見出した。一般的に方剤の出典は, 加味逍遙散のように成立経緯が複雑な場合, 構成の各段階に貢献のあった所作は全て出典の一部分をなし, 合方については原則的に複数処方を用いて著明な治験例があった所作が出典になると考察した。
  • 今井 隆喜, 大野 修嗣, 浅岡 俊之, 田中 政彦, 秋山 雄次, 鈴木 輝彦, 土肥 豊
    1995 年 45 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    我々は, 漢方薬が奏効したリウマチ性多発筋痛症の一例を経験した。症例は53歳女性で頸部のこわばりと疼痛にて発症, 筋痛は激しくしだいに両肩両上肢へと広がり, 体重減少を認め, 赤沈値1時間100mm以上であった。プレドニソロン10mg/日の加療によって改善傾向を示したことからPMRと診断された。経過良好であったがプレドニソロン減量にて筋痛再燃し, 赤沈値も1時間83mmと亢進が認められ, 漢方治療を求め当科外来受診。柴苓湯・意苡仁湯により, 2ヵ月後には頸部のこわばりのみとなり体重も増加傾向が認められた。初診より半年後にはプレドニソロンの減量から中止に至った。その後現在まで柴苓湯・芍薬甘草湯のみの投与にて臨床症状なく赤沈値も1時間16/mm迄改善し, 経過良好である。
  • 高木 嘉子
    1995 年 45 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    治打撲一方は, 香川修庵により創方された処方であるといわれ, 打撲, 捻挫, 疼痛等に用いられる薬方である。打撲直後より, 数日経たものに用いる場合が多い。打撲や捻挫の既往のあるもの18例に, 臍右横1~2横指附近に放散する圧痛と抵抗を認め, 本湯の服用により症状の改善・軽減とともに, 圧痛・抵抗の軽減または消退を認めた。また1例ではあるが, 打撲の新しいものでは, 圧痛・抵抗は認められず, 日を経てから出現していた。既往の古いもの, 40年経過しているものにも, 圧痛と抵抗を認め, 本湯の服用により, 症状も圧痛, 抵抗も消退した。
    打撲歴と, 圧痛抵抗を目標に投薬して著効を得たことから, 治打撲一方の腹候の一つとして有効性があると思われるので報告したいと思う。
  • 赤尾 清剛, 阿部 博子
    1995 年 45 巻 3 号 p. 547-550
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    専門医にてアレルギー性鼻炎と診断され西洋医学的に治療を受けたが症状改善が得られず, 漢方治療を求めて来院した24例に桂枝湯合麻黄細辛附子湯を投与し21例に改善が得られた。それらの症例のなかで他のアレルギー性疾患を合併し, 小青竜湯を主とした漢方治療後も症状改善の得られなかった症例に桂枝湯合麻黄細辛附子湯を投与し著効を得た8例について, その証を提示し小青竜湯との比較をした。
  • 我妻 恵, 本宮 雅吉
    1995 年 45 巻 3 号 p. 551-556
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    清心蓮子飲投与によりインスリン非依存型糖尿病の血糖コントロールを行い, 5年の経過を追跡できた男性3例, 3年の経過の女性1例, および2年の経過の女性3例の計7例を報告し, 清心蓮子飲が有効に作用し得る条件を考察した。清心蓮子飲1日7.5gを食前30分に投与し, 体重およびHbA1の経過を記録した。
    清心蓮子飲投与による5~2年の経過中, HbA1が8%を越えて一時的悪化を呈した症例では, 悪化直前, または同時期に体重増加傾向を伴っていることが多かった。従って, 清心蓮子飲によるNIDDMの血糖コントロールにおいても, 西洋薬によるコントロールの時と同様に, 食事療法および運動療法を基本とした体重コントロールのための生活指導は不可欠であることが示唆された。生活指導により体重減少が始まった症例は, 虚証の傾向にあると考えられ, 清心蓮子飲投与は漢方医学的立場からも適することが示唆された。清心蓮子飲投与による副作用は認められなかった。
  • 渡辺 一郎
    1995 年 45 巻 3 号 p. 557-561
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    近年の社会構造の変革に伴い, 疾病の病態にも変化がみられる。桃核承気湯証の増加もその一つであろう。当院においても本方剤が頻用処方となったので, 1992年1月~10月末までの外来患者で本方エキス剤投与183例中効果判定可能な125例 (男12例, 女113例) につき臨床効果の検討を試みた。
    投与例数の多い順に有効率をみると, 月経困難症82%, 過多月経74%, 高血圧随伴症状69%, 更年期障害72%, 腰痛59%, 冷えのぼせ55%, 月経不順55%, しみ38%, にきび60%, 痔核57%, アトピー性皮膚炎60%, その他外陰打撲症, 前立腺肥大, 脳血栓後遺症がみられる。
    本方は古典 (湯液) の指示, 構成生薬から陽明病期・〓血病態で精神不安, 上熱下寒などの気逆を示すものに有効で, ストレスの多い, 美食で運動不足, 便秘などの背景をもつ今日的症例に幅広く適応されるべきと思う。
  • 阪本 次夫, 星野 昌伯
    1995 年 45 巻 3 号 p. 563-568
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    外来通院の脳血管障害者50例 (32~81歳) に, 夜間熟睡中, 腓腹筋痙攣が起こって睡眠が障害されるかどうかを訊ね, 有痙攣者は11例 (22%) であった。このうち週1~3日以上発生する患者8例に芍薬甘草湯エキス顆粒2.5gを2週間毎日就寝前に投与し, 効果十分なものは同量を, 効果不十分なものはその倍量を, さらに2週間投与し, 4週目にその治療効果を判定した。
    その結果4週間服用できた5例全員に著明改善から軽度改善を認めた。その効果発現は早かった。この成績は筋弛緩剤やマイナートランキライザーに劣らないもので, 脳血管障害者の腓腹筋痙攣に対し, 芍薬甘草湯エキス顆粒は有用であることを認めた。
    2週以上服用した患者の1例に偽アルドステロン症の副作用を認めた。これは本剤の唯一の欠点であるが, 服用中止によりすみやかに消失した。
  • 高濱 正人
    1995 年 45 巻 3 号 p. 569-574
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    RAの薬物療法中でコントロール不良や抗リウマチ剤の副作用により蛋白尿, 腎機能低下, 下腿浮腫などの症状を伴う10症例に対して防已黄耆湯7.5g/日を併せて投与しその有効性を検討した。
    症状の改善は全症例の80%に認められ,RAでは抗リウマチ剤に防已黄者湯を併用することで水毒症状やDMARDsなどの薬物による副作用の改善が認められた。
  • 小泉 久仁弥, 花輪 壽彦, 石野 尚吾, 大塚 恭男
    1995 年 45 巻 3 号 p. 575-577
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性。6歳より気管支喘息があった。27歳時に, 前額部が膨らむ感覚, 頬部のしびれ, 目の痛みなどの異常感覚が出現。次第に悪化してきた。伏といった特徴的な脈証と〓血の徴候より桃核承気湯, 桃核承気湯合大黄牡丹皮湯を証に応じて使い分け, 次第に異常感覚が消失。柴朴湯エキス中止後に出現していた喘息発作も, 次第に出現しなくなった。「伏」といった一見虚証と間違いやすい脈の中に実証の脈があることを再認識した。
  • 岡本 康太郎, 岡本 芳文, 高橋 栄司
    1995 年 45 巻 3 号 p. 579-586
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    向精神薬服用後に口渇や口乾を訴えた37例 (男性18例, 女性19例) に, 五苓散または麦門冬湯を投与して有効性と安全性につき検討を加えた。
    五苓散は口渇に対しての改善率 (著明改善+改善) は40.0%,口乾に対しては25.0%であった。
    麦門冬湯は口渇に対しての改善率 (著明改善+改善) は47.1%, 口乾に対しては59.1%であった。
    口渇に対しては五苓散, 麦門冬湯で効果に差はみられなかった。しかし, 口乾に対しては麦門冬湯がきわめて有効であった。
  • 田中 裕士, 菅谷 文子, 山岸 雅彦, 五十嵐 知文, 笹岡 彰一, 阿部 庄作
    1995 年 45 巻 3 号 p. 587-594
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎 (IIP) における小柴胡湯長期投与による治療効果について検討した。ステロイド剤を服用していないIIP症例29例を, 小柴胡湯投与群 (小柴胡湯群; n=9) と小柴胡湯非投与対照群 (対照群; n=20) に分け, 臨床症状, 呼吸加機能について11~43ヵ月の期間経時的に観察した。小柴胡湯投与による副作用の発現はなかった。結果は, 対照群20例すべて観察期間中に改善した例はなく, 小柴胡湯群では, 有効1例, やや有効3例, 無効5例で, やや有効のうちの2例は小柴胡湯の「証」である胸脇苦満を持っていた。以上の結果より, 症状が軽度であるIIP症例に対しては, 肺病変の進行を抑制させるという点で, 小柴胡湯は有用な薬剤であることが示唆された。
  • 駆〓血剤と清熱剤の合方効果
    三田 哲郎, 伴野 純代, 池谷 敏彦
    1995 年 45 巻 3 号 p. 595-600
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    思春期以降のアトピー性皮膚炎患者に認められる顔面紅皮症型皮疹に関与している証を, 〓血と熱証が主役と考えて, 駆〓血剤と清熱剤の合方による効果を検討した。顔面紅皮症型皮疹を有するAD患者20例中15例 (75%) が全身的〓血状態, 5剤 (25%) が全身的非〓血状態であった。15剤の全身的〓血状態の症例のうち, 著明な便秘傾向を有する7例 (46.7%) に清熱剤 (白虎加人参湯あるいは黄連解毒湯) と桃核承気湯を合方して使用した結果, 全例で有効以上が示された。便秘傾向がないか, 明らかでない8例 (53.3%) では, 清熱剤 (白虎加人参湯あるいは黄連解毒湯) と桂枝茯苓丸を合方して全例で有効以上が示された。
    全身的非〓血状態であっても, 駆〓血剤を清熱剤に合方した方が有効な症例が認められたことから, アトピー性皮膚炎の顔面紅皮症型皮疹には, 原則として駆〓血剤と清熱剤の合方を考慮すべきと思われた。
  • 岩淵 愼助
    1995 年 45 巻 3 号 p. 601-607
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    Three elderly female patients with pyometra unaccompanied by uterine cancer received and responded to a combination of an antibiotic or antibacterial agent and Haino-san-kyo-to. Not only did the symptoms improved but also transvaginal ultrasonic tomography revealed a decrease in the cavity of the uterus and loss of its content. The draining effect of the treatment was thus confirmed.
  • 増井 義一, 大澤 仲昭, 吉田 麻美, 渋谷 知宣
    1995 年 45 巻 3 号 p. 609-614
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    西洋医学的な対症療法では対応できなくなった HTLV-I-associated myelopathy 症例に小柴胡湯を投与したところ, 瞑眩様症状の後に臨床症状の改善をみた。本例に対する小柴胡湯の効果は, その抗炎症作用と免疫調整作用によるものと考え, 特にサイトカインを介した後者の作用に注目した。本症に対して西洋医学的に有効な治療法がない現在, 症例を集積して漢方治療が検討されるべきである。
  • 酒谷 信一, 伊藤 須美子, 鄭 為堯
    1995 年 45 巻 3 号 p. 615-618
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    糖尿性網膜症の症例33例 (男12, 女21) について全身的背景を目標にした漢方治療のアプローチとその効果について考察を加えた。
    症例の多くは単純型および前増殖型網膜症であった。弁証分型別にみると, 気虚・陰虚および気陰両虚に痰湿や〓血を伴うものが多く, 気滞-〓血を示すものもみられた。それぞれに全身的背景を考慮した方剤 (医療用漢方エキス剤) を6ヵ月以上用いた。
    経過観察の目標として, 出血斑・白斑および視力の推移を観察した。何れの観点からも80%以上の改善がみられた。
    DMRに対する方剤の選択には基本的病態に注目して, これをきめる必要があると思われた。
  • 小山 誠次
    1995 年 45 巻 3 号 p. 619-623
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    葛根湯加川〓辛夷の出典に関しては従来より本朝経験方と記され, その成立について寺澤は論説『葛根湯加川〓辛夷の成立に関する一考察』で, 辛夷の加味については1940年代までの文献には皆無であるとか, 辛夷の出典についての明確な資料がないなどと述べている。今回, 川〓と辛夷の加味について以上の点を踏まえて検討した。まずコブシが辛夷に充てられて使用されるようになった経緯のこと,『本草綱目』に「芦〓為之使」と記載されていること, 吉益東洞のような全く辛夷を処方しない流派もあったこと, さらには江戸時代に梅毒治療の一環として葛根湯加味方が採用されることもあり, その加味方として川〓を含む処方, 辛夷を含む処方, および川〓, 辛夷を含む処方等があり, 梅毒疹の出現状況や水銀剤の副作用軽減目的等に応じて対処されてきたことなどを明白にした。今回の調査範囲では葛根湯合五物解毒湯加辛夷が最も葛根湯加川〓辛夷に近い処方だった。
  • 東西両医学に共通する「疾患分類」の提唱
    中川 定明
    1995 年 45 巻 3 号 p. 625-631
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    College of American Pathologistが編集した顕微鏡的病変のコード表 Systematized nomenclature of medicine (SNOMED) には約4万種の形態学的病変名がコード番号で分類されている。それはウイルヒョウが細胞病理学説に従って「物質代謝障害」「循環障害」「炎症」「再生・修復」「腫瘍」「奇形」の範疇に大分類したもので, すべての疾患が示す病変を分類・鑑別するためのものである。疾患名は同義語をふくめておそらく万単位にのぼる。一方, 中国伝統医学には永い伝統があるので多数の疾患名があるが, 西洋医学のそれに較べれば比較にならないほど少ない。中医学では疾患を八綱弁証, 気血津液弁証, 臓騎弁証, 六経弁証, 衛気営血弁証, 病邪弁証, 外感熱病気弁証の7つの弁証で判別したせいぜい百余の『証』としての機能異常群にまとめている。『証』は疾患の類別ではなく複数の症候の全人的な類別である。東西医学にはこういう相違があるが,「症状」と「病変」には東西に変わりはない筈であるから, 疾患を病理解剖学的に追求する西洋医学と全人的・機能的に追求する東洋医学の両者に共通するものは「症状」であり「病変」である。この視点に立って, 全身に分布する「病変」および「機能性疾患」から病気を眺めて比較・対照をすることを企図して, その可能性の根拠を述べた。
  • 看護婦からみた患者の背景と意識
    松岡 京子, 福永 澄子
    1995 年 45 巻 3 号 p. 633-641
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    私たちの勤務する麻生飯塚病院は総合病院であり, そこへ1992年4月1日に漢方診療科が設立された。私たちは当院の看護婦としては初めて東洋医学に携わった。今回, 患者の背景とアンケートによる意識調査を行い, 漢方診療科の意義と役割についてまとめた。患者の背景によると年齢は幅広く,疾患は多彩である。遠方からの受診者が多く (県外8.5%), 院内職員 (13.6%) や家族受診 (29.3%) も目立つ。アンケー・トによる意識調査の結果, 煎じ薬は私たちが予想していたより患者には飲みやすく (41%), 効果の出現も早かった (1ヵ月以内59%)。漢方診療科は独自の診察方法があり, 問診は内科の3~4倍の時間をかける。西洋医学的な診察や治療も行う。以上のことから当科は東西両医学を含めた総合診療科的な役割を期待されていると思われた。私たち看護婦は医療スタッフや患者に対し, 漢方に対する知識や情報の提供に努めなければならないと感じた。
  • 津谷 喜一郎, 並木 隆雄, 村松 慎一
    1995 年 45 巻 3 号 p. 643-653
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    米国国立医学図書館 (NLM) により作成される世界的な医学データベースの MEDLINE における, 漢字文化圏の国・エリアからの収録雑誌について調査した。8ヵ国・エリアから全部で180の収録雑誌があり, 英語のアルファベット順に, 中国 (32誌), 香港 (2誌), 日本 (124誌), 韓国 (6誌), マレーシア (2誌), シンガポール (4誌), 台湾 (8誌), タイ (3誌) である。このうち, 中国では28誌 (88%) が中国語, 日本では66誌 (53%) が日本語, 韓国では1誌 (17%) が韓国語, 台湾では5誌 (63%) が中国語のものである。伝統医学領域の雑誌は,中国からのみに3誌存在する。世界に正しく日本の東洋医学を伝えるためにも,『日本東洋医学雑誌』の MEDLINE 収録へ向けての努力が望まれる。
  • 1995 年 45 巻 3 号 p. 659-661
    発行日: 1995/01/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
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