日本東洋医学雑誌
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36 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 土佐 寛順, 寺沢 捷年, 今田屋 章
    1985 年 36 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    心下痞鞭の診断学的意義を明らかにする目的で, 心下痞鞭に伴って出現する自他覚症状について検討した。有意に相関して出現する消化器症状は食欲低下, 嘔気, 心下痞, 下腹部の腹満感であった。また全身的な自覚症状としては, 肩凝り, 背部痛, 易疲労, 四肢関節の痛みが心下痞鞭と併存することが明らかとなった。腹部他覚症状のうち心下痞鞭と有意に相関するものは, 左・右の胸脇苦満, 濟傍圧痛 (右) であった。さらに下腿浮腫とも有意に相関した。また腹部単純レ線像でみる胃の形態のうち, 体部前庭部にガス像があり皺壁像のみられるものとの間に有意の相関が得られた。
    これらの併存する自他覚症状を総合すると, 心下痞鞭は「湿」に侵された生体が腹部で呈する, ひとつの反応ではないかと考えられた。
  • 光藤 英彦
    1985 年 36 巻 3 号 p. 165-184
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
  • 康治本傷寒論における湯の生薬構成の基本パターンについて
    遠田 裕政
    1985 年 36 巻 3 号 p. 185-196
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    康治本傷寒論に記載されている50方の湯について, 第1類薬 (桂枝, 甘草, 大黄, 大棗, 乾姜, 生姜) の有無・配合のあり方 (基本パターン) を調べ, 整理し, 考察した。一般の傷寒論と金匱要略とでは33種の基本パターンがあったが, 康治本傷寒論では, 19種であった。ここに存在しなかった14種の基本パターンを研究することにより, 逆に, 康治本傷寒論での「生薬の使われ方の法則」の一部が, 明瞭になってきた。すなわち, 康治本傷寒論では, 1) 桂枝は常に甘草とともに使用された, 2) 乾姜は, 大黄や生姜とは, けっしてともに使用されることはなかった, 3) 大棗がない時は, 生姜と甘草がともに使用されることはなかった, ということである。
    以上のことを, さらに考察することによって, 康治本傷寒論が, 一般の傷寒論の原始的な形態のものであることを, 強く示唆する結果が得られたように思われる。
  • 雪村 八一郎
    1985 年 36 巻 3 号 p. 197-204
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能亢進症の経過中生ずる心不全は治療に対し抵抗性を示すとされている。今回, 心不全の生じた本症患者8例に柴胡加竜骨牡湯エキス剤を投与することで, この心不全からの回復が得られたので報告する。
    症例は男2女6の8例で, 年令は30―71才。全例, 血中甲状腺ホルモン測定, あるいはTRH試験で診断を確認している。5例は抗甲状腺剤, 遮断剤による治療中, 3例は未治療時に, 下肢浮腫から肺水腫までの心不全を生じた。5例には抗甲状腺剤とβ遮断剤を, 2例には抗甲状剤を投与しながら, また1例には両剤とも投与せず, 柴胡加竜骨牡蛎湯エキス剤を投与したところ, 3週から3日の経過で心不全の消失が得られた。
    また, このことから柴胡加竜骨牡蛎湯の指示である煩驚, 〓語とは交感神経刺激により精神神経過敏が生じた状態, 胸満, 小便不利, 一尽重不可転側とは高拍出性心不全が生じた状態ではないかと推察された。
  • 山田 光胤
    1985 年 36 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    湿疹の治療として, 陽証の場合, 実証のものには葛根湯加味を用い, 虚証のものには桂枝加黄耆湯を使用して効果のあった症例を, すでに報告した。また, 同じく陽証で, 腹証に胸脇苦満ならびに腹直筋の緊張をみとめるものに, 〓風敗毒散の奏効した症例も報告した。
    しかるところ, 上記薬方の証に近似していながら, いずれもみるべき効果のなかった, 重症アトピー性皮膚炎に対して, 桂枝二越婢一湯加味が奏効した2, 3の例を経験したので, 総括して報告する。
  • 松下 嘉一
    1985 年 36 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    難治の顔面筋の痙攣に鍼及び灸刺激の鎮静作用を利用して, その症状の改善を図った。筋の起始部, 筋の終止部また, 筋における神経の終末部に近く, 刺入点をとり, 適宜の深さをもって刺激すると筋の痙れんは鎮静する。この目的の下に, 症例をもって, 鍼および灸の諸手技を検討することにより, 次のような結果を得た。
    即ち, 太めの鍼の置鍼は有効である。即効性がある。直接灸は有効である。灸の効果は持続性を有する特微がある。
  • 山崎 正寿
    1985 年 36 巻 3 号 p. 213-224
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2010/12/13
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞は漢方医学では「真心痛」といわれている。今回, 潜名方の括〓湯を4例の急性心筋梗塞の患者に用い, 自他覚所見の改善とともに, RIによる心筋血流スキャンでは, 梗塞患者2例のRI心筋摂取率が35~50%低下し, 心プールスキャンでは2例において, 左室駆出率の変化は認められなかった。これらの結果より, 括〓湯の心筋梗塞に対する作用は, 心ポンプ機能に対するより, 心筋血流に対して影響があると考えられる。
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