日本東洋医学雑誌
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51 巻, 1 号
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  • 藤田 仁志
    2000 年 51 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    生後1年までに3回以上腹診できた正常健康児28例の腹診の変化を調べた。初回は生後1週までに行い, その後は乳児健診時に腹診した。胸脇苦満は19例で, 心下部の抵抗, 臍上悸はいずれの症例でも認めなかった。腹直筋の緊張は17例でいずれの月齢でも認めた。小腹不仁は15例でいずれの月齢でも認めたが, 月齢と共に陽性率は低下した。正中芯は生後1週で19/28例, そのうち11例はその後いずれの月齢でも認めなかった。7~10ヵ月では1/15例で陽性であった。小腹不仁, 正中芯の結果は生後1年までに速やかに腎が発達してゆくためと考えられる。腹力は21例でいずれの時期も2.5~3/5であった。
  • 佐藤-西森 婦美子
    2000 年 51 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    補中益気湯加〓苡仁が奏効した小児3症例を経験した。投与期間は1~4ヵ月である。
    症例1: 1歳男児。貨幣状湿疹。はじめ服薬の継続ができず皮疹は増悪した。〓苡仁エキス散は連用できたが改善はみられず, 初診時より3ヵ月後の補中益気湯と〓苡仁のエキスを継続服用し皮疹は徐々に消失した。
    症例2: 2歳男児。アトピー性皮膚炎。第2診時の補中益気湯は連用するも改善はみられなかった。補中益気湯と麻杏〓甘湯のエキスの投与2週間後には皮疹はやや改善も, 服用を毎回嫌がるために補中益気湯と〓苡仁のエキスに変更したところ, 継続服用し皮疹はほぼ消失した。
    症例3: 4歳女児。アトピー性皮膚炎。便秘の訴えがあるため補中益気湯加〓苡仁・杏仁としたところほぼ毎日服用できた。開始から4週間後には皮疹は改善を示し便通も良好となった。
    小児の漢方治療は服用の継続が難しく, しばしば治療の中断を余儀なくされる。同方は服用継続のしやすい有用な方剤であった。
  • 引網 宏彰, 長坂 和彦, 土佐 寛順, 嶋田 豊, 寺澤 捷年
    2000 年 51 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    『千金方』に収載される〓樓湯は胸痺に対する方剤とされているが, その治験報告は極めて少ない。我々は,『千金方』〓樓湯が奏効した胸痛, 胸部不快感の4症例を経験した。これらの有効4症例と無効4症例の臨床像を比較し, その使用目標について検討した。その結果, 有効例は虚証で, 冷えのぼせ, 肩こり, 弱脈, 歯痕舌, 臍上悸, 小腹不仁, 臍傍圧痛, 気鬱を伴うことが多かった。また,『千金方』〓樓湯証は〓樓薤白白酒湯あるいは〓樓薤白半夏湯証に上焦の気滞を伴うものと考えられた。
  • 片寄 大, 二宮 本報, 遠藤 正人, 白土 邦男
    2000 年 51 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    症例は2弁置換術後, 慢性閉塞性肺疾患合併76歳男性。水分制限が守れず心不全で毎年入退院をくり返しており, 病識の欠如が問題とされていた。しかしながら東洋医学的診察により, 舌に高度の陰虚 (陰液虚) を示唆する所見を認めたことより, 利尿剤使用による傷陰が口渇を増悪させ, 水分摂取コントロール困難をきたした可能性が考えられた。当科外来で利尿剤増量の回避, 清肺湯による清熱, 牛車腎気丸による補腎に加え, 麦門冬湯を処方したところ, 下大静脈径が漢方治療前 (∅=19.6±2.2mm,α=0.05, n=13) と比較して有意の減少を示し (∅=8mm, p<0.01, smimoff 棄却検定法), 麦門冬湯投与後, 心不全コントロールが良好となった。麦門冬湯の心不全予防機構として, 麦門冬湯が口渇の減少をもたらし患者の水分摂取行動が変化した可能性が考えられた。
  • 松崎 茂
    2000 年 51 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    熱傷急性期の患者2名に漢方治療を試みた。症例1は足の熱傷で, 漢方治療前の連日の消炎鎮痛剤内服にもかかわらず, 患部の腫脹が悪化した。局所の高度な発赤, 腫脹, 熱感, 浸出液の他に口渇もあった。局所の証と津液不足から越婢加朮湯を投与し2日で局所所見は軽快した。症例2は顔面熱傷で, 受傷直後から漢方治療を施行した。水疱形成, 疼痛, 興奮には黄連解毒湯と桔梗石膏を投与した。発赤, 腫脹, 熱感が高度になってからは越婢加朮湯を投与した。3日程で, 落屑を残すのみとなった。
    熱傷治療では, 漢方薬を併用することにより, 短期間に自覚症状の軽減が得られると思われた。
  • 古妻 嘉一, 土方 康世
    2000 年 51 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    近年本邦での乳癌死亡率は急激に増加しており, 乳癌の早期発見による早期治療が必要である。種々の画像診断法も著しく進歩してきているが, それでも乳腺症内に潜伏せる微小乳癌を発見することに難渋する場合が多い。西洋医学ではこのような場合に抗エストロゲン剤を投与して乳腺症を治療しつつ, 潜伏せる乳癌を浮かび上がらせる診断治療的内分泌療法が行われている。しかし, これらの薬剤には副作用も多く投与中断を余儀なくされる場合もあり, 従って確定診断として手術生検を必要とされる症例も多い。我々は東洋医学で安全性が高く乳腺症に有効とされている桂枝茯苓丸に着目し, 抗エストロゲン剤の代わりに利用出来るかを検討した。その結果, 乳腺症218例の内116例に桂枝茯苓丸を投与し, 4例の乳癌を発見した。この4例中2例は穿刺吸引細胞診にて, 残り2例は手術生検にて乳癌と確定診断した。診断的内分泌療法に桂枝茯苓丸が有効であることが示唆された。
  • 柴原 直利, 嶋田 豊, 伊藤 隆, 新谷 卓弘, 喜多 敏明, 後藤 博三, 寺澤 捷年
    2000 年 51 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    C型慢性肝炎は高率に肝硬変症へと進展し, 自然治癒の可能性は非常に低いとされている。筆者らは, 和漢薬治療によりC型肝炎ウイルスが消失したC型慢性肝炎の一例を経験した。症例は37歳の女性。1982年の第一子出産時に輸血を受けた。1983年1月頃に全身倦怠感を自覚し, 慢性肝炎と診断され治療を受けていた。1988年に肝生検により慢性活動性肝炎と診断され, 同年5月に当科を受診した。初診時より補中益気湯・桂枝茯苓丸を併用投与し, 自覚症状は改善したが, ALT値は不変であった。しかし, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与後より徐々にALT値に改善が得られ, 加味逍遥散料に転方した1996年5月以降は正常化した。ウイルス学的検査においては, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与中である1995年3月に測定したHCV RNA定量では104 Kcopies/mlを示したが, 1998年4月以降は検出感度以下となった。
  • 小暮 敏明, 新沢 敦, 藤永 洋, 新谷 卓弘, 嶋田 豊, 寺澤 捷年
    2000 年 51 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    〓苡仁湯( 明医指掌) 加味方が奏効したRA患者の臨床的特徴について考察した。症例1は47歳女性。1983年両手関節痛で発症。84年近医でRAと診断, 金製剤, NSAIDs で加療されたが無効。89年和漢薬治療を希望し当科受診。桂枝加苓朮附湯, 附子湯で加療していたが95年9月, 多関節痛が増悪したため〓苡仁湯加羌活独活防風 (以下〓苡仁湯加味) へ転方, 疼痛の軽減と炎症反応の低下を得た。症例2は50歳女性。86年両手指関節痛出現, 近医でRAと診断され, 近くの薬局で購入した漢方薬を内服していた。91年当科受診。桂枝加苓朮附湯合桂枝茯苓丸料加防已黄耆〓苡仁で加療していたが, 96年5月多関節痛が増悪し〓苡仁湯加味へ転方。疼痛と炎症反応の低下を得た。症例3は42歳女性。91年多関節痛出現, 近医でRAと診断, NSAID とブシラミンの投与を受けた。93年当科受診。桂枝二越婢一湯加苓朮附, 桂枝芍薬知母湯で疼痛は軽減していたが, 96年5月両肘両膝関節痛が増悪したため〓苡仁湯加味へ転方, 疼痛と炎症反応の低下を得た。
    本方の目標の一端を明らかにするため, 本方剤を投与した呈示3例を含む9例 (有効5例, 無効4例) を検討した。RAの Stage, Class は, ほぼ同様で両群とも変形が進行していた。口渇, 自汗に差はなく, 水滞と軽い血虚も両群にみられた。一方, 有効群は, RAに特徴的な早朝の関節痛に加えて, 夕刻にも疼痛を訴えたことから, 関節痛の日内での変化を検索した。その結果, 夕刻の疼痛は有効群の特徴で, 無効群では訴えていなかった。以上から, 本方剤は少陽病期の準位で虚証, 軽度の水滞と血虚を伴い, 日常生活後の夕刻に関節痛が増悪するRAに有効であることが示唆された。この知見は本方の従来からの運用法に加え新たな本方剤の使用目標の一つとなる可能性がある。
  • 藤田 仁志
    2000 年 51 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
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