注腸X線造影所見と漢方医学的腹部症候, 有効薬方との関連性について検討した。
対象は当診療部通院中の患者で, 115例である。方法は注腸造影施行前の漢方医学的腹診所見, 注腸検査後, 証に従い治療した結果有効であった処方と, 後日, 注腸X線造影所見との相関を推計学的に検討した。
結果は, (1) 左右の臍傍圧痛を認める例では, S字結腸が Jacoby 線よりも尾側, すなわち骨盤腔内に留まる例が増多し, またS字結腸の屈曲回数も増加していた。(2) 駆〓血剤が適応となる症例では, S字結腸が骨盤腔内に留まる例が増多していた。(3) 柴胡剤が適応となる症例では, 脾攣曲の屈曲の程度が著しかった。(4) 桂枝湯類が適応となる症例では, 大腸の生理的収縮の頻度が増加していた。
以上の成績から, 大腸の形態や機能に注目することにより漢方医学的な診断と治療の精度が向上する可能性を示唆するものである。
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