難治性パニック障害に対して, 竜骨湯が著効した一例を経験した。症例は55歳女性。2003年3月頃から気力低下, 集中力低下, 突然の不安感に伴う動悸や血圧上昇 (収縮期血圧190mmHg以上) が出現。症状が激しい時は救急搬送される程であった。しかし精密検査では特記異常は認められず, 自律神経失調症と診断され, SSRIを含めた抗うつ薬, 抗不安薬が処方されたが, 改善を認めなかった。また, 数種類の医療用漢方製剤も順次処方されたが無効であったため, 更なる加療を求め2005年7月22日当院紹介受診。初診時, DSM-IVの基準に基づきパニック障害と診断。臨床所見から奔豚気病を疑い苓桂甘棗湯を煎じ薬で処方した。しかし1週間後も全く効果を認めず, 希望のなさや, 物忘れ, 悲傷感が強く感じられた。そこで, 初診時のSDS, POMS, 自律神経機能検査などの結果も踏まえ, 抑うつを背景とし, 極度の緊張を伴ったパニック障害と判断し, 竜骨湯に変方した。その結果自覚症状はほとんど消失し, 西洋薬もすべて中止できた。また, 心理テスト, 自律神経機能検査, 気血水スコアにおいても改善を認めた。竜骨湯は, 抑うつを伴ったパニック障害に有効である可能性が示唆された。
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