日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
46 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 工学的手法を用いた脈波形状の定量化
    石山 仁, 笠原 宏, 上馬場 和夫, 許 鳳浩, 天野 和彦, 石井 弘允
    1995 年 46 巻 2 号 p. 243-249
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    工学系において信号波形の歪の程度を数値化する場合, 歪率と呼ぼれる係数がよく用いられる。著者らは脈波形状の違いを歪率で定量的に表すことが可能かどうかを考察するため, 74例 (20~40代の男性, 74名) の脈波についてフーリエ解析を行い, その脈波の歪率を算出した。記録した脈波を Dicrotic notch と Ejection wave の振幅比により費兆馥らの脈波模型で平脈, 滑脈および弦脈といわれている形状に選別し, それら3群の歪率を比較した結果, 歪率で形状の違いを定量的に表すことができた。
  • 木多 秀彰, 宮田 秀夫, 富田 利夫, 佐藤 直毅, 門馬 公経, 小暮 洋暉
    1995 年 46 巻 2 号 p. 251-256
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    出血性ショックに対する茯苓四逆湯の効果について, 犬を用いて実験的に検討を行った。即ち, 雑種成犬12頭について茯苓四逆湯を投与した6頭 (漢方群) と, 生食のみを投与した6頭 (対照群) に分け, ペントバルビタール26mg/kg麻酔下に気管内挿管を行い人工呼吸器に接続し, Wiggers の変法を用いて出血性ショックモデルを作成した。薬剤は代償期直後に注腸法により投与した。茯苓四逆湯は, 茯苓4g, 甘草2g, 乾姜2g, 人参2g, 附子2gを約30分間煎じたものを用いた。
    その結果, 平均動脈圧の推移に有意差はみられなかったが, 漢方群では観察期の心係数が2.68l/min/m2と対照群に比して有意に高値を示した。また, 漢方群ではショック後の体温の低下が抑えられた。
    茯苓四逆湯は出血性ショックに対し, 心拍出量増加及び体温の保持効果を示し, ショック状態に対する有用性が示唆された。
  • 山上 裕章, 橋爪 圭司, 下川 充, 古家 仁
    1995 年 46 巻 2 号 p. 257-261
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    神経プロヅク療法で改善がプラトーに達した寒虚証例8例にツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス顆粒を投与しその効果について検討を行った。投与3週間後には愁訴は有意に改善し, Visual analogue scale は5.6から3となり, 3ヵ月後では2例の症状が消失した。副作用は特に認められなかった。当帰四逆加呉茱萸生姜湯投与による持続的な末梢循環改善作用が効を奏したと考えられる。
  • 豊田 一
    1995 年 46 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    ステロイド軟膏は, 一時的には劇的に効果を表すかの如く見えるが, 長期の連用により種々の副作用が発現し, 逆に治療の妨げとなる。また皮膚乾燥防止に使用されているワセリンにも, 近時皮膚障害の報告がみられる。和剤局方の神仙太乙膏にはステロイド軟膏にみられる副作用はなくアトピー性皮膚炎に対して89.1%の治癒効果が得られたので報告する。
  • 名越 温古, 高橋 重明, 松岡 利恵, 井手 潔
    1995 年 46 巻 2 号 p. 269-277
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    再生不良性貧血 (再不貧) 5例, 不応性貧血 (primary acquired refractory anemia: PARA) 2例に対して人参養栄湯を単独, または, 他剤との併用にて投与し臨床的な有用性を検討した結果, 再不貧の5例中3例, PARAの2例中1例に有効であった。有効性は赤血球系 (改善率, 43%) と血小板系 (改善率, 57%) とにみられたが, 白血球系にはみられなかった。病態の異なる2つの疾患に効果があり, かつ, 赤血球系, 血小板系に有効性がみられたことは, 人参養栄湯が直接的に幹細胞レベルに作用するだけでなく, 骨髄微小環境を介して間接的に影響している可能性が示唆された。
  • 後藤 博三, 嶋田 豊, 柴原 直利, 津田 昌樹, 寺澤 捷年
    1995 年 46 巻 2 号 p. 279-283
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    症例は27歳の女性, 1982年に右鎖骨部に腫脹, 熱感, 疹痛が出現し, 慢性化膿性骨髄炎と診断され掻爬術を施行された。その後も再燃, 寛解を繰り返し, 1992年7月中旬, 妊娠後に右鎖骨部から上腕の鈍痛及び微熱が出現し, 同年〓に当科入院。身体所見, 検査成績より妊娠を契機として増悪した右鎖骨慢性化膿性骨髄炎と診断した。和漢診療学的には, 頭痛と軽い悪寒を伴う体熱感があり, 脈が浮であったことから, 病位は太陽病期にあると考えた。そこで, 桂枝麻黄各半湯を投与し, また鍼治療を併用したところ, 症状は徐々に軽減し, 検査成績にも改善が得られた。本症例は, 慢性化膿性骨髄炎遷延例に対して東洋医学的治療が有用であることを示唆している。さらに, 抗生物質の大量投与や外科的治療の適応となりにくい妊婦に対して効果を呈したことは, 和漢薬治療の臨床上の有用性を示したと考えられる。
  • 本間 行彦
    1995 年 46 巻 2 号 p. 285-291
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    かぜウイルスを感染させて発熱させた動物において, 解熱剤を投与すると死亡率が増加し, 解熱剤による解熱は生体にとって不利であるという報告が基礎研究分野から出されている。著者はこの問題を臨床的に確かめるために, かぜ症候群患者に解熱鎮痛消炎剤 (Fenoprofen 1200mg/日, 分3) または漢方薬を投与し, 初診時に37.0℃以上の発熱のある80名について, 両者の症状の経過を比較検討した。その結果, 熱の持続期間は解熱剤群 (n=45) 2.6±1.7日, 漢方薬群 (n=35) 1.5±1.9日 (p<0.001) と前者が長く, 発熱の再燃も漢方群 (0%) より解熱剤群 (11.1%) に多い傾向がみられた。全症状の持続期間も前者が6.6±3.6日, 後者が5.1±1.9日 (p<0.05) と解熱剤群が有意に長く, 漢方薬群に比較してかぜの回復が遅延することが知られた。
    以上より, 有熱かぜ患者に対する漢方薬投与は解熱剤使用より有利であると考えられた。また, かぜにおける発熱は生体の合目的的反応と推測され, 解熱剤使用は問題であるかもしれない。
  • 桂 敏夫
    1995 年 46 巻 2 号 p. 293-299
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    腹痛に対しては普通, 芍薬甘草湯 (以下芍甘湯とする) が用いられるが, 甘草湯もこれに劣らず有用である。外来で日頃遭遇する腹痛の中では, 急性の感冒やこれに伴う胃腸炎による一過性のものが多いが, 1年間子供を主とする130例に対してこの両者を内服と口に含むだけの2通りの方法で止痛までの時間を測定した。
    この2薬方と2方法の4通りのいずれにもほとんど差がなく, 大部分のものは数分から10分以内で腹痛が消失した。
  • 大宜見 義夫
    1995 年 46 巻 2 号 p. 301-308
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    咳, 鼻水, 鼻閉, 悪心, 悪寒, 頭痛, 腹痛などの急性症状を訴える患者に対して漢方製剤がしばしば即効性を示すことがある。
    筆者は, 急性症状を呈する患者に漢方製剤を投与する際, 証の判定に迷ったり, 決定した処方の有効性を確認したい時,「確認投与」と称して, 漢方製剤を外来で投与し, 30分以内でその効果を確かめる方法を行っている。
    これまで行った確認投与の中から, 対象として選んだ339例について漢方エキス製剤 (ツムラ) による即効性の検討を行った。
    使用回数の多かった漢方エキス製剤は, 麻杏甘石湯, 五苓散, 人参湯, 半夏厚朴湯, 真武湯, 半夏瀉心湯, 黄連解毒湯, 川〓茶調散などであった。70%以上の有効性を示した主なエキス製剤は, 苓甘姜味辛夏仁湯, 川〓茶調散, 安中散, 半夏瀉心湯, 小青竜湯, 麻杏甘石湯, 麦門冬湯, 真武湯などであった。
    外来での, 即効性を生かした確認投与は, 証の判定や処方の決定に際して有用である。
  • 白尾 一定, 前之原 茂穂, 愛甲 孝
    1995 年 46 巻 2 号 p. 309-313
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    消化器外科に入院した患者84例を対象として, 栄養状態と虚実証の関連について検討した。虚実証の判定は, 大竹の虚実判定スコアーを用いて行った。癌患者の%理想体重は, 非癌患者より有意に低値であった (p<0.01)。癌患者と非癌患者の虚実証の頻度に差は認められなかった。虚実判定スコアーは握力 (r=0.6), %理想体重 (r=0.29), 血清アルブミン (r=0.27) との有意の相関が認められた (p<0.05~0.01)。とくに, 握力は一元配置分析にて虚証, 中間証と実証の3群間に有意差が認められた (p<0.01)。虚実判定スコアーは栄養評価の一つとして有用と思われた。
  • 篠原 明徳, 清水 寛
    1995 年 46 巻 2 号 p. 315-318
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    3年前より慢性的な鼻閉塞と膿性血性鼻漏を訴えていた患者に中医学的アプローチを行ない症状の消失を見た。四診により八綱弁証では,「表寒実燥証・欝・升・収」として葛根湯加川〓辛夷エキスを処方し, 手太陰肺経と手陽明大腸経の募穴に強い圧痛を認めたことなどから臓腑経絡弁証では両経の気滞があるものとして, 肺経の絡穴である列欠穴と大腸経の局所穴としての迎香穴を配穴し週1回の鍼治療を併用し, 症状の消失が認められた。西洋医学的専門医療の恩恵にあずかることが困難な山間僻地の患者にとって, 中医学的治療が有用であった一例であると考えられた。
feedback
Top