日本東洋医学雑誌
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43 巻, 2 号
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  • 藤平 健
    1992 年 43 巻 2 号 p. 241-253
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
  • 村国 均, 小澤 哲郎, 清宮 清治, 継 行男
    1992 年 43 巻 2 号 p. 255-262
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    慢性胃炎や消化管術後などで上腹部不定愁訴を有した患者に有効とされる六君子湯について, 8本の双極電極を消化管に植込んだ3頭のイヌを用いて筋電図学的に検討を加えた。六君子湯は消化管の空腹期強収縮運動 (IMC) の発現周期を短縮し, 十二指腸から回腸までの蠕動運動の伝播時間である全小腸伝播時間 (TET) を統計学的に有意に促進した。さらに消化管局所の運動亢進を示唆するIMCの phase II の出現率も増加した。臨床上, 実験から得られたこれら所見はもたれ感, 空腹感の欠如, 食欲不振, 吐逆, 便秘などの改善につながると思われた。一方, 六君子湯は食後期運動にたいしては筋電図学上明らかな作用を認めなかった。六君子湯の作用機序は消化管平滑筋にたいするアセチルコリン放出の促進などの直接作用でなく, 平滑筋側のムスカリン受容体, あるいは筋収縮のメカニズムであるCaイオンなどの second messenger に影響を及ぼすことが考えられた。
  • 〓血の臨床的一所見としての有用性について
    小林 陽二, 福生 吉裕, 赫 彰郎, 金川 卓郎
    1992 年 43 巻 2 号 p. 263-273
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症や血栓症に伴う〓血状態の臨床的判定の一助として Diagonal Ear Lobe Crease (ELC) の有無判定が有用か否かを768名の健康診断受診者を対象に行った。その結果, ELC (+) 群において高血圧者や心電図異常者の頻度およびTC,β-Lp, Atherogenic Index などの血清脂質は有意に高く, Apo AI, Apo AI/B ratio は低値傾向, Apo AII は有意に低値であった。各種疾患で入院中の患者34例を対象に行った寺澤らの診断法による〓血度測定とELCの有無判測の結果, ELC (+) 群で有意に〓血度は高かった。以上の成績からELCと動脈硬化症は関連性が高いものと考えられ, 動脈硬化症や血栓症に伴う〓血の判定においてELCの有無判定を考慮して良いものと考えられた。動脈硬化症は未病の状態と考えられることから, ELC有無判定のような簡易な方法で〓血状態を臨床的に診断できることは有用であると思慮定れた。
  • 健康被験者における解析
    矢船 明史, 丁 宗鉄
    1992 年 43 巻 2 号 p. 275-283
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    漢方処方の薬効成分の体内動態には, かなりの個体間変動があることが知られている。しかし漢方の分野では, この個体差を導入した解析結果の報告はない。
    本論文では, 小青竜湯 (エキス剤) 経口単回投与後の健康成人男子ボランティア8人における血中エフェドリン濃度について, 個体間変動を導入することにより, population pharmacokinetics の観点から動態解析を行い, その結果を報告する。
    また, 得られた結果をもとに, 多回投与時の血中濃度のシミュレーションを行い, その結果を報告する。
  • 古田 一史, 川俣 博嗣, 三潴 忠道, 寺澤 捷年
    1992 年 43 巻 2 号 p. 285-291
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    我々は, 補中益気湯が奏功した睡眠呼吸障害 (sleep related respiratory disturbance: 以下SRRDとする) の1例を経験した。症例は75歳男性で脳梗塞と糖尿病で入院。入院中にいびきが大きいことを指摘され, 睡眠中の呼吸波をモニターし同時にパルスオキシメーターにより動脈血酸素飽和度を測定した。チェーンストークス様呼吸と著しい動脈血酸素飽和度の低下が出現しSRRDと診断した。その原因として, 著明な扁桃肥大に舌根沈下を含む上気道構成諸筋の弛緩が加わり上気道の狭窄をきたしたためと考えられた。舌根沈下を含む上気道構成諸筋の弛緩を東洋医学的に中気下陥の一種と考え補中益気湯を投与することによりチェーンストークス様呼吸の頻度が減少し, 最低動脈血酸素飽和度も改善された。SRRDの西洋医学的薬物療法は検討されている症例も少なく, 有効例無効例が混在する場合も多いため, 適応および限界に関していまだ確立されていない。かかる病態に補中益気湯が奏功したことは東西両医学において意義の大きいものであり, また上気道構成諸筋の弛緩を東洋医学的に中気下陥の一種と解釈しえたことは補中益気湯の新たな治療分野を開拓したものと考えられる。
  • 粕田 晴之, 赤澤 訓, 斎藤 仁, 清水 禮壽
    1992 年 43 巻 2 号 p. 293-295
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の女性で, 11年来の鼻アレルギーで西洋医学的な治療を受けてきたが効果が得られず, 漢方処方を目的として来院した。鼻閉, 鼻汁, くしゃみ等の鼻アレルギー症状の他に足の冷え, 肩こり, 強い生理痛および生理時の頭痛を訴え, 〓血圧痛点を認めたため, 理血薬の適応と判断した。当帰芍薬散の投与で鼻アレルギーは軽減したが肩こり, 生理痛と頭痛は持続した。胸脇苦満があり, 加味逍遥散に変更すると, 肩こりは軽減したが鼻アレルギーは増悪した。花粉症の季節には口唇が乾燥するとのことで寒虚燥証の理血薬である温経湯に変更したところ, 現代医療の点鼻液と点眼液から離脱でき, すべての症状, 愁訴から解放された。鼻アレルギーに対しては小青竜湯が頻用されているが, 特に本症例のごとく鼻アレルギー以外の症状を伴う場合には, 証にあわせて適切な方剤を選択することが根本治療につながる道となると考えられた。
  • 森脇 義弘, 山本 俊郎, 片村 宏, 杉山 貢
    1992 年 43 巻 2 号 p. 297-301
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍による癌性腹膜炎6例に柴苓湯エキス顆粒を投与した。服薬状況は良好で, 明らかな副作用は認められなかった。腹部膨満感, 下腿浮腫の減少を認め, 柴苓湯投与前に乏尿傾向のあった症例では尿量の増加などを認めた。明らかな予後の改善は見られなかったが, 全身的な化学療法が可能となった症例もあり, 柴苓湯エキス顆粒の投与は, 悪液質にある末期癌の癌性腹膜炎症例の自覚症状の改善, 適切な尿量の確保による腹腔内貯留液の減少, さらにはPS(performance status) の grade や quality of life の向上に有用であると思われた。また, 尿量に関しては, 循環血漿量, 血清電解質のバランスを保ちながら, 調節的に作用するものと思われた。
  • 森脇 義弘, 山本 俊郎, 片村 宏, 杉山 貢
    1992 年 43 巻 2 号 p. 303-308
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    単純性腸閉塞症24例に大建中湯エキス顆粒15g/日を経チューブ的または経口的に投与した。チューブによる減圧, 消化管運動促進薬の投与は適宜併用した。保存的解除率は95.8%, 有効率は70.8%であった。減圧チューブを挿入した20例で, 治療を開始してから三分粥, 五分粥摂取までの期間は9.1±3.6日, 10.4±4.1日と, 大建中湯を使用しなかった対照群のそれと変りなかった。チューブ内投与を行なった13例では, チューブ抜去から三分粥, 五分粥摂取までの期間は3.6±1.5日, 4.6±1.7日で, 対照群よりも短期間であった。減圧チューブを挿入しなかった4例の治療開始後三分粥, 五分粥摂取可能となるまでの期間は4.2±1.6日, 6.7±1.9日で, 対照群のそれよりも短期間であった。また, 腸閉塞の改善度を定量化するために, 従来, 胃排出能の試験として用いられてきたアセトアミノフェンの吸収試験を用いたところ, 臨床症状や腹部単純X線所見の改善を良く反映していた。
  • 加藤 一彦, 堀江 良彰, 川瀬 敦之, 浜野 恭一
    1992 年 43 巻 2 号 p. 309-313
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    胃切除後骨障害患者9例, うち女性7例, 男性2例, 平均年齢71.9±9.5, 術後経過年数平均10年, に対し, 6症例に補中益気湯投与, 3症例にビタミンDとカルシウム投与を行い, 投与後5~6ヵ月後MD/MS (microdensitometry/multiple scanning) 法にて骨塩量を測定し比較検討した。
    両群共に, 骨塩量, 骨密度, 断面2次モーメントなどの骨指標の改善を認めた。ビタミンDとカルシウム投与群において特に良好な改善を認めた。
    補中益気湯は, 胃切除後の胃障害を改善する効果があると思われた。
  • 神崎 順徳, 福田 洋典
    1992 年 43 巻 2 号 p. 315-317
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の治療成績の良くない平均80dB以上の高度難聴のタイプ (聾型および聾) の症例に対して牛車腎気丸の投与をおこない良好の治療成績を示した。
  • 黒河内 彰
    1992 年 43 巻 2 号 p. 319-324
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    抗精神病薬の副作用として鼻閉をきたした精神分裂病の5例に対して葛根湯エキス顆粒 (医療用; TJ-1) の有効性を検討した。
    結果は, すなわち, 2例が著明改善, 2例が中等度改善, 慢性副鼻腔炎の既往をもつところの1例が軽度改善であり副作用は全く認められなかった。拒薬もなく速やかな治療導入ができたことにより臨床上も極めて使用しやすいと思われた。その機序は, 葛根湯の成分である麻黄のエフェドリンとしてのアドレナリン類似の薬理作用が他の成分と複雑に影響し合って鼻粘膜により選択的に作用したものと推察する。
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