日本東洋医学雑誌
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69 巻 , 4 号
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原著
  • 溝井 令一, 田中 耕一郎, 植田 真一郎, 磯部 秀之, 奈良 和彦, 千葉 浩輝, 荒木 信夫, 山元 敏正
    原稿種別: 原著
    2018 年 69 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    症候性急性期脳梗塞の連続130例について気血水スコアを用い気虚,気鬱,気逆,血虚,瘀血,水滞の有無を評価し,同年代のその他の神経疾患連続93例を比較対照として比較検討した。多変量解析で急性期脳梗塞では他の神経疾患と比較して瘀血との関連性が最も高く,調整済みオッズ比(95%信頼区間)は4.6(2.45-8.91)だった。交絡因子となる性別を層別解析で調整しても瘀血の調整済みオッズ比(95%信頼区間)は男性で7.46(3.02-20.25),女性で2.63(1.02-7.11)と最も高かった。瘀血の素点(中央値,四分位範囲)は急性期脳梗塞(24点,18-33点)で他の神経疾患(16点,9-23点)より重症度が高かった。急性期脳梗塞群で臨床病型,入院時の重症度,性別との関連を検討したが瘀血の割合が最大だった。症候性の急性期脳梗塞では他の神経疾患と比較して瘀血との関連性が最も高いことが示唆された。

  • 高野 静子, 中村 道美, 森田 智, 龍 興一, 和泉 裕子, 永井 千草, 八木 明男, 島田 博文, 永嶺 宏一, 平崎 能郎, 岡本 ...
    原稿種別: 原著
    2018 年 69 巻 4 号 p. 328-335
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    千葉大学医学部附属病院和漢診療科にて,2006年8月から2015年8月までの初回入院患者のうち西洋薬を処方されていた159名を対象とし,患者背景,入退院時の薬剤数及び薬剤費を転帰別に調査した。軽快患者の西洋薬薬剤数は,入院時5.6±3.6剤から退院時5.3±3.5剤へ有意に減少した。漢方薬薬剤数は変わらなかった。全薬剤数は,入院時7.0±3.8剤から退院時6.7±3.6剤へ有意に減少した。不変患者の西洋薬薬剤数は,入院時5.1±3.4剤から退院時5.0±3.7剤へ減少した。漢方薬薬剤数は1.0±0.0剤から退院時1.3±0.5剤へ有意に増加した。全薬剤数は,入院時6.1±3.4剤から退院時6.3±3.9剤へ増加した。
    以上の結果より,漢方薬と西洋薬を併用することで,漢方診療はポリファーマシー関連する多剤服用の減量になる可能性が示唆された。その際に証による漢方治療が重要と考えられた。

  • 笛木 司, 吉田 理人, 田中 耕一郎, 千葉 浩輝, 加藤 憲忠, 並木 隆雄, 柴山 周乃, 藤田 康介, 須永 隆夫, 松岡 尚則, ...
    原稿種別: 原著
    2018 年 69 巻 4 号 p. 336-345
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    中国天津市及び上海市の上水道水を用いて「ウズ」の煎液を調製し,煎液中のアルカロイド量を,新潟市上水道水を用いた場合と比較した。中国の上水道水を用いて調製した煎液中のアコニチン型ジエステルアルカロイド(ADA)量は,新潟市上水道水を用いた場合に比べ有意に少なく,この原因として,中国の上水道水に多く含まれる炭酸水素イオンの緩衝作用によりウズ煎煮中のpH 低下が抑制されることが示唆された。また,ウズにカンゾウ,ショウキョウ,タイソウを共煎した場合,ウズ単味を煎じたときと比較して煎液中ADA 量が高値となり、さらにこの現象は中国の上水道水で煎液を調製した場合により顕著に観察された。煎じ時間が一定であっても,用いる水や共煎生薬により思わぬADA 量の変化を生じる可能性が示唆された。また『宋板傷寒論』成立期の医師たちが,生薬を慎重に組み合わせて煎液中のADA 量を調節していた可能性も考えられた。

臨床報告
  • 藤田 良介, 福嶋 裕造, 井藤 久雄, 田頭 秀悟, 栁原 茂人, 中村 陽祐, 大竹 実
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 346-349
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    尿路感染症は日常臨床において一般的な疾患であり,抗生剤が第1選択であるが再発例も多い,一般的には再発した時の治療も抗生剤の投与である。尿路不定愁訴や尿管結石への猪苓湯使用の報告は多いが,再発性尿路感染症への報告は少ない。本症例は84歳女性で4回尿路感染を再発し,4回入院をした。西洋医学的治療として抗生剤投与や神経因性膀胱に対してのα1遮断薬での治療及び生活指導を行ったが入院を繰り返した。猪苓湯を投与したところ,尿路感染の再発が起きなくなった。2ヵ月間に4回入退院を繰り返していたが,猪苓湯投与後は7ヵ月間再発することなく2ヵ月に1回外来通院をしている。猪苓湯は医療経済学的にも有用であると示唆される。

  • 地野 充時, 辻 正徳, 奥 雄介, 高橋 久美子, 八木 明男, 平崎 能郎, 岡本 英輝, 寺澤 捷年
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 350-358
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    身体症状を呈し登校困難となった8症例に対する漢方治療の効果について検討した。効果判定については,不登校診療ガイドラインに記載された評価基準を用いて客観的に評価した。西洋医学的診断としては,起立性調節障害が4例,片頭痛が2例,上腹部不随意運動・自律神経失調症がそれぞれ1例であり,漢方方剤の選択は証に随って行った。その結果,8例中5例が有効,2例がやや有効,1例が不変であった。半数以上に効果を認めたことで,登校困難児の中に漢方治療が有効な一群が存在することが示唆された。登校困難児には個別対応が必要であるが,漢方治療はまさしく個別治療であり,有用な治療手段になりうると考えられた。今回の報告は不登校児の漢方治療を多数例で検討した初めての報告であり,客観的な評価基準を用いた報告も過去に見られない。今後,一般小児科医に対しては伝統的な考え方に基づく漢方治療の有用性をさらに啓蒙していく必要がある。

  • 川島 春佳, 木村 容子, 伊藤 隆
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 359-365
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    アレルギー性鼻炎は,鼻粘膜のアレルギー性疾患であるが,様々な要因が増悪因子となる。今回,随証治療により用いた当帰芍薬散が奏功したアレルギー性鼻炎の4症例について報告する。
    症例1は31歳女性。冷え・月経不順に対して当帰芍薬散の内服を開始したところ,元々あった鼻炎症状が改善し,休薬により鼻炎症状が再燃した。症例2は40歳女性。子宮筋腫に対して内服していた桂枝茯苓丸加薏苡仁から当帰芍薬散に転方して,毎年認めていた花粉症状が軽快した。症例3は49歳女性。多種類の漢方薬を内服しても改善しなかった鼻炎症状が,当帰芍薬散に転方して速やかに消失した。症例4は65歳女性。葛根湯加川芎辛夷の内服後も残存した鼻炎症状に対し当帰芍薬散を併用して症状が改善した。
    古典では,当帰芍薬散の鼻炎に関する記載は見当たらないが,陰虚証で,水毒に加えて瘀血・血虚を認める鼻炎には,当帰芍薬散も鑑別処方の一つと考えられる。

  • 福原 慎也, 千福 貞博
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 366-373
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    透析患者は下肢有痛性筋痙攣を発症しやすく,芍薬甘草湯は有効であり,頓服として処方している。一方,治療当初に有効な芍薬甘草湯が次第に効果を減弱し,無効となる症例を経験するようになった。五臓論において筋痙攣は肝の失調状態であると考えられ,疏肝作用がある柴胡と芍薬を含む柴胡桂枝湯を投与した。その結果,10症例中9例の有効性を経験した。透析患者の下肢有痛性筋痙攣は,少陽枢機の開閉が失調することによる「定刻における周期性発作(=休作時有)」を来し,かつ陰陽不順接による症候である「陰陽(=自律神経)の失調」によって生じると考えられた。柴胡桂枝湯は少陽枢機の失調を整える小柴胡湯と,陰陽のバランスを調和する働きを有する桂枝湯の2方剤からなる処方であり,この両者の証を併せ持っている。透析患者の独特な生活リズムによって生じる下肢有痛性筋痙攣に柴胡桂枝湯は有効であったと判断される。

  • 鮎川 文夫, 金本 彩恵, 松本 康男, 杉田 公, 後藤 加奈子, 須永 隆夫
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    紫雲膏は痔疾や擦過創,切創,火傷などに対して日本で使用されてきた漢方の軟膏製剤である。糜爛を伴う放射線皮膚炎に対して紫雲膏を使用し良好な経過を辿った2例を経験したので報告する。症例1は72歳,男性。陰茎癌術後であり両側鼠経リンパ節転移の術後照射により生じた両鼠径部放射線皮膚炎に対して紫雲膏を使用した。両鼠径部の放射線皮膚炎は照射終了10日目には上皮化領域が広がり,アズレンやステロイド外用薬を使用する従来の治療法に比べて回復が早かった。症例2は60歳,男性,進行直腸癌化学療法後の再燃に対して骨盤部の照射を行った。 肛門周囲に疼痛を伴う放射線皮膚炎を生じたが紫雲膏塗布開始の翌日には疼痛が改善した。紫雲膏は糜爛を伴う放射線皮膚炎の回復を早め,鎮痛作用の発現も速やかであった。

  • 横山 浩一, 平崎 能郎, 岡本 英輝, 久永 明人, 小野 真吾, 伊藤 隆, 檜山 幸孝
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 379-385
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー
    蘇子降気湯は,医療衆方規矩の記載以降,足冷を伴う咳嗽に応用されてきた。原典の和剤局方などの古典には,その病態として虚証の者における多量の水様痰による気道閉塞が示唆されている。しかしながら,我々の経験した気管支炎後の強い咳嗽に本方が奏効した5症例では,喀痰の量はむしろ少なかった。これら自験例について腹力・腹候・足冷の有無を検討し,さらに本方が咳嗽に奏効した過去の臨床報告と合わせて喀痰の性状を調査した。この結果,本方は気剤として虚実・腹候を問わず応用可能であり,足冷は必須の症候ではなく気逆の一症候と考えられた。喀痰については,量は少なく粘稠である場合が多かった。本方の適応病態では,粘稠痰が気道閉塞を生じて喘鳴を伴う咳嗽を来しており,これを降気作用と穏やかな利水作用が改善するものと推測される。呼吸苦を伴う咳嗽の治療に際し,“粘稠で切れにくい喀痰” は蘇子降気湯の実用的な使用目標になると考えられた。
  • 原田 直之, 山本 佳乃子, 小暮 敏明
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 386-389
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    症例は59歳女性で,主訴は額と体幹の皮疹である。50歳頃に額に皮疹が生じて徐々に拡大した。近医皮膚科で尋常性乾癬と診断され,ステロイド軟膏で消褪と再燃を繰り返していたが徐々に拡大するため漢方薬治療を希望して来院した。皮疹は前額部が広範囲で,後頸部,前胸部,上下肢にも認められた。治頭瘡一方加減を処方したところ,約4ヵ月の経過で皮疹がほとんど消失した。前額部の皮疹がわずかに残存したため,21ヵ月後に帰耆建中湯へ転方したところ,やや改善がみられ治療を継続している。乾癬の漢方治療には駆瘀血剤,清熱滋潤作用のある方剤が用いられることが多い。本例では皮疹が頭頸部に集中していたことから,治頭瘡一方加減を処方し著効した。これまで乾癬に対する治頭瘡一方の臨床報告はみられないが,湿性の皮疹が頭部に集中する例では奏功しうると考える。

  • 福田 悟, 信太 賢治, 小林 玲音, 武冨 麻恵, 松本 美由季, 大嶽 浩司
    原稿種別: 臨床報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 390-395
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    術後遷延痛は時に西洋医学的治療で難渋することがある。患者は解離性大動脈瘤人工血管置換術を受けた39歳男性。痛みは主として胸骨正中部で,その皮膚は瘢痕・ケロイド化しアロディニアがみられた。プレガバリン,デュロキセチン,トラムセット®を服用するも痛みの改善なく,術後4ヵ月半で漢方治療と鍼治療(山元式新頭鍼療法とUnblocking 法)を開始した。瘀血,胸脇苦満,心下痞鞕より,桂枝茯苓丸加薏苡仁および柴胡桂枝湯(ツムラ®:7.5g 分3)を処方したが痛みの改善がなかったので煎じで黄耆桂枝五物湯を追加した。その構成生薬の黄耆を3~10g/日,冷えがみられたため附子を4~6g/日に増加したところ,痛みは徐々に改善し漢方治療開始約20ヵ月後に痛みは完全に消失した。鍼治療の効果も痛みの改善と共に延長した。黄耆桂枝五物湯加附子と鍼による東洋医学的治療は,冷えを有する術後遷延痛患者に有効であることが示唆された。

調査報告
  • 飯岡 秀晃
    原稿種別: 調査報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 396-401
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    漢方医学の教育は,看護教育の現場ではごく一部でしか行われていない。今回,母性看護の研修を受けた女子看護学生を対象に,漢方医学に関する書面によるアンケート調査を実施した。その結果,日本東洋医学会漢方専門医の存在を知らない看護学生は86%にのぼった。しかし,看護学生には漢方医学の講義が必要であるとの回答は70%,漢方薬が医療に必要だとの回答は78%にのぼった。さらに,漢方に関するスライド説明集(書面)を閲覧する前には,漢方医学の講義が看護学生に必要でないとした学生,あるいは漢方薬が医療に必要ないとした学生も,閲覧後では大部分の学生は看護学生には漢方医学の講義が必要であり,医療には漢方薬が必要であると回答した。

  • 蛯子 慶三, 高田 久実子, 伊藤 隆, 木村 容子, 佐藤 弘
    原稿種別: 調査報告
    2018 年 69 巻 4 号 p. 402-406
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    当研究所では寒証に対して面状電気温熱器を用いた置鍼治療を行っている。腰背部8ヵ所に置鍼後に面状電気温熱器を被せ,6段階に温度調節できるダイアルのうち2番目に熱い5チャンネルで20分間加温する本法を,寒証の治療および検査として用いている。加温途中で熱さを不快に感じたときには,治療目的で用いた場合は温度を下げて継続,検査目的で用いた場合はその時点で終了としている。2016年3月から10月までの8ヵ月間に実施した75例(224件)を対象に有害事象を調査したところ,皮膚表面のヒリヒリ・チリチリした感じが5件(2.2%),かゆみが3件(1.3%),体調不良が1件(0.4%)みられたが,いずれも一時的なものであり,重篤な有害事象は認めなかった。結果より,本法の安全性は高いと考えられた。漢方と鍼灸の臨床研究に繋げていくことが今後の課題である。

論説
  • 平地 治美, 坂井 由美, 鈴木 達彦, 平崎 能郎, 並木 隆雄
    原稿種別: 論説
    2018 年 69 巻 4 号 p. 407-416
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    日本漢方の特徴として「方証相対」を重んじた古方が独自に発展してきた点があげられるが,その発展の基礎の構築には類方分類が重要な位置を占めていたと考えられる。類方分類は古方の方意と適応を把握するために,また方剤の薬物組成の研究にも有用であることから,臨床面および教育面で有効な分類方法である。中国では徐霊胎以降大きな発展がなかった類方分類であるが,日本では吉益東洞以後,喜多村直寛をはじめとする考証学派を中心に発展。昭和期の漢方復興期には奥田謙三や大塚敬節らが教育や臨床に利用し,医療用漢方エキス製剤による臨床運用の基礎の構築に大きな影響を与えた。このように日本漢方において重要な位置を占める類方分類であるが,現状では日本での研究は途絶えている。傷寒雑病論を重要視した日本漢方独自の特徴の一つを活かすために再び類方分類に焦点を当て,江戸期・昭和期の古方の類方分類の試みを整理し考察した。

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