日本東洋医学雑誌
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39 巻, 1 号
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  • 高橋 宏三, 土佐 寛順, 嶋田 豊, 新谷 卓弘, 寺澤 捷年
    1988 年 39 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    漢方医学的な舌診所見と胃X線所見との関連性について検討した。
    対象は当診療部通院中の患者で, 94例である。方法は胃X線検査直前に舌写真を撮影し, 後日, 舌写真と胃X線写真を個別に検討した。舌所見は, 舌質を腫大, 歯痕, 亀裂, 萎縮, 舌尖部の赤み, 点刺の有無について, また舌苔を厚さ, 色調について評価した。胃X線所見は, 胃角の高さ, 大彎鋸歯像, 萎縮性変化, びらんなどについて評価した。
    結果は, (1) 舌の腫大および歯痕と大彎鋸歯像の出現に関連があり, (2) 舌の萎縮が高度なほど胃角が低位であり, (3) 舌苔が厚く黄色調であるほど胃びらんが高度で, (4) 舌苔が白色調であれば胃角低位であることが明らかになった。
    これらの成績は漢方医学的舌診所見の出現の背景因子と胃X線所見の出現因子との間に共通の因子のあることを示唆するものである。
  • 脈診の意義
    遠藤 次郎
    1988 年 39 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    著者は古典に基づいて三部九候診の意義を再検討し, この脈診法は, 本来, 5つの神蔵と3つの形蔵と胃気とを診るためのものであることを明らかにした。また, 同じ目的を持つ診察法が素問を中心に数多く見られることを例証し, 三部九候診をこれらの診察法と対比して考察した。
  • 経脈説からの検討
    遠藤 次郎
    1988 年 39 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    三部九候診を経脈説の立場から検討し, これが五陰六陽の経脈説に基づいていることを明らかにした。また, 古典中の類例との比較から, これが現在の経脈説よりも古い時代に行われていたことを推定した。
  • 遠田 裕政, 岡本 洋明, 森山 健三, 渋谷 知宣, 雨宮 修二
    1988 年 39 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎の19歳の少女を漢方で治療した。当科外来での皮膚病変は, 胸部, 腹部, 肘窩部や膝窩部にも認められたが, 顔面と頸項部において特に顕著であった。
    初めは, 白虎加人参湯の煎剤を, それらの成分の通常量のままで処方したが, 後に, 黄連を追加した。顔面の潮紅と口渇を改善するために, 黄連と石膏の量を徐々に増量した。この治療を始めて25週後, 皮膚病変はほとんど消失し, 以後少なくも3年間は, 何の治療も必要のない状態である。
    皮疹の治癒のメカニズムについて,“細胞病理学”の観点と“個体病理学”の観点から, 若干の考察を加えた。
  • 岡 孝和, 松浦 達雄
    1988 年 39 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    心臓神経症は心理的因子の関与が大きいとされる疾患であるが, 針治療が著効することが少なくない。
    9年間胸部不快感, 胸痛を訴えた56歳の女性が2回の針治療で胸部不快感, 胸痛が消失した。第5, 6胸椎棘突起に過敏点を認め, X線撮影で同部位での椎関関節可動性が制限されていることが確められた。そこで第5, 6胸椎夾脊穴に針治療を行ったところ, 自覚症状, 過敏点ともに消失。可動性も回復した。
    以上より, 心臓神経症の診断において背診が重要であること, 治療において針治療が有用であること, 治癒のメカニズムとして椎間関節機能異常の整復が示唆された。
  • 近澤 幸嗣郎, 荒木 重雄, 玉田 太朗, 伊藤 清夫, 伊藤 裕至, 新井 基夫
    1988 年 39 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    修治附子および烏頭の aconitine 類と総 alkaloids 量を測定するとともに, 各種漢方薬中に加えてその煎液中に移行する総 alkaloids 量をも測定した。修治附子は烏頭に比べて総 alkaloids の含有量が高かつた。しかし原型の aconitine 類は烏頭のほうが高く, なかでも hypaconitine の量が4.9倍高かった。また各種漢方薬中に加えた場合, 総 alkaloids の残存率は烏頭よりも修治附子のほうが高く, この値は混じる薬方により影響をうけることが明らかとなった。修治附子または烏頭を単剤で煎じた場合より各種薬方中に加えた場合のほうが, 総 alkaloids の残存率は減少した。同一の附子片に含まれる有効成分でも煎液への残存率, 残存量は混ずる薬方により異なり, それが臨床的に有効にして副作用の軽減をもたらす可能性が示唆された。
  • 中村 謙介, 盛 克巳, 太田 東吾, 貝田 豊郷, 佐橋 佳郎, 富田 寛, 村山 暉之
    1988 年 39 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    〓苡仁湯 (明医指掌) の証は, 整形外科疾患に幅広く応用できると考え, ゆるい投与基準を設けて, 種々の整形外科外来患者に投与してその効果を調べることを企てた。
    しかしながら, 本方が漢方製剤であることの心理効果を可及的に除く目的で, 西洋薬に多い糖衣錠を用いることにしたため, 入手したものは苡仁湯加味方であった。以下, 〓苡仁湯加味方の治療経験を述べる。
    集計可能総数は41例, その約7割に有効であった。この中にはまず西洋薬で治療して充分な効果が得られないために, 本錠に変えて効果を調べた一群が含まれている。この結果より, 本錠は西洋薬と補完的に使用しても, 満足すべき効果があがることを確認した。
    しかしながら, 他の漢方薬から本錠に転じて, また本錠から他の漢方薬に変えて有効であったものが合計4例あり, 常に証の診断に慎重であるべきだと反省した。
  • 薬酒方剤総論
    王 元武, 赤堀 幸男
    1988 年 39 巻 1 号 p. 49-64
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    中国の薬酒は疾病の治療・予防のために創製された方剤であり, 中医弁証に基づく組方原則により組成され, 多くの種類の疾病に対応できる方剤体糸を構成する。
    このような中国薬酒の本質を解明するために, 歴代典籍の記述を参照して, 酒と薬酒の歴史を考証し, 酒の種類・薬性・宜忌についての記述を引用して酒の本性と特徴を詳しく論述した。これら基礎資料をもとにして, 中医学基礎理論の組方原則に基づく薬酒方剤の組成解析を実施し, 薬酒中における酒の地位は君・使両薬としての二重性を持つことを明らかにした。君薬とは定義通りの主薬であり, 使薬とは引薬・行薬勢・薬性制約・薬効改変の四種の作用を包含する。この方中地位の二重性は, 極めて特殊な事例であり, 薬酒方剤の特質を構成する最も本質的な因子である。
    さらに, 薬酒方剤の分類を提示し, 著名な薬酒についての解説を行い, 薬酒使用上の注意点を指摘して安全有効な使用法を提言した。
  • 松橋 俊夫
    1988 年 39 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1988/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
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