日本東洋医学雑誌
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38 巻, 1 号
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  • 奔豚気病の治療経験と文献的考察
    寺澤 捷年, 土佐 寛順, 檜山 幸孝, 三浦 圭子, 今田屋 章
    1987 年 38 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    奔豚気病と考えられた5症例を報告した。第1例は19歳女性, 発作性の胸内苦悶感と動悸を主訴とし, 苓桂甘棗湯が著効を奏した。第2例は30歳主婦。交通事故を契機に発症した発作性の身体の熱感と動悸である。桂枝加竜骨牡蠣湯と苓桂朮甘本湯のエキス剤で完治した。第3例は63歳男性。息切れ, めまい感を主訴に来院した。苓桂味甘湯に加味逍遥散を兼用して好結果を得た。第4例は35歳主婦。右半身のシビレと筋肉のヒキツリを主訴に来院。良枳湯が一時奏効したが, 再発し, 小品奔豚湯により寛解している。第5例は47歳主婦で, 動悸発作を主訴に来院。苓桂甘棗湯で主要な症状は改善したが, 心下の痞鞭と熱候があり金匱奔豚湯で良好な経過である。
    文献的にみると奔豚湯は金匱, 肘後, 小品, 広済など数多く, その方意も異なっている。治験としては苓桂甘棗湯がもっとも多く, 良枳湯, 桂枝加竜骨牡蠣湯, 金匱奔豚湯, 肘後奔豚湯も数例ずつみられる。しかし苓桂味甘湯と小品奔豚湯の報告はなく, 本報告が近年においてははじめての記載である。
    浅田宗伯は奔豚気病の認識と関心が深く,「独嘯庵, 奔豚気必ずしも奔豚湯を用ひずと言はれたれど, 余の門にては, 奔豚湯必ずしも奔豚を治するのみならずとして, 活用するなり」と貴重な口訣を残している。
  • 奔豚気病の病態生理的側面
    土佐 寛順, 寺澤 捷年, 檜山 幸孝, 三浦 圭子, 今田屋 章
    1987 年 38 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    奔豚気病の症例に発泡剤を服用させ上部消化管X線撮影を試みたところ, 奔豚気様発作が誘発された。このことから胃腔内に送気する奔豚誘発試験法を考察し, これを用いて血中のノルェピネフリン, エピネフリンの挙動についてHPLC法で検討した。
    症例1は44歳の主婦。卵巣機能不全を基礎疾患に有する奔豚気病類似の病態である。エピネフリン値は負荷試験前においてすでに高値を示したが, 負荷試験によりさらに上昇し, かつノルエピネフリンも著明に増加した。
    症例2は49歳の主婦。慢性関節リウマチを基礎疾患に有するが, 精神葛藤により奔豚気様症状を呈した。奔豚負荷試験によりノルエピネフリン, エピネフリンは共に著増した。
    奔豚気病は水滞を基盤にもつ者に精神的負荷がかかり, 副腎髄質と自律神経反射機構が反応し, 悪循環を形成しつつ進展して行くものであろうと推論した。
  • 奔豚誘発試験法による病型分類
    寺澤 捷年, 土佐 寛順, 檜山 幸孝, 三浦 圭子, 今田屋 章
    1987 年 38 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    正常人4例, 奔豚気 (類似) 症例22例について奔豚誘発試験を実施した。本試験法は正常人においては血中エピネフリン (Epi), ノルエピネフリン (NE) は正常域値内で推移した。22症例のEpiとNEの挙動と有効薬方から, 本症は正常反応型, 奔豚I型, II型, III型とその他に分類された。
    奔豚I型はNE単独反応型であり, 自律神経反射系が主として関与する病態であると考えられた。III型はI型の亜型, II型はNEとEpiが共に反応性に増加し, 副腎髄質の関与が示された。
    自覚症状でもI型とIII型には相違があり, I型では発作性の要素が強く, III型は緊張持続型を示唆するものであった。
    本試験法は本症の発作間歓期においてこれを確診する有力な1つの方法であり, 治療効果の判定にも有用であることを論じた。
  • 活性酸素およびSRS-A遊離に対する抑制効果
    宮本 康嗣, 黒岩 中, 岡田 秀親, 古川 達雄
    1987 年 38 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    強い咳と痰を伴った急性気管支炎の患者に対する清肺湯の投与により, 症状の改善が認められた。清肺湯の投与前には, 患者の末梢血白血球の活性酸素化学発光は異常亢進を示した。この活性酸素化学発光の異常亢進は, 5週間の清肺湯の内服により正常化した。さらに in vitro の実験系においても清肺湯は, その添加によりオプソニン化ザイモザン刺激時のヒト白血球における活性酸素化学発光, および抗原刺激時の感作モルモット肺組織からのSRS-A遊離を用量依存的に抑制した。これらの結果は, 清肺湯が一部ではSRS-ロイコトリエンのようなケミカルメディエーターの生成をコントロールすることにより気管支炎の症状の改善に寄与しうるものと考えられる。
  • 松橋 俊夫
    1987 年 38 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
  • 小野 孝彦, 松本 克彦, 別府 真琴, 西本 隆, 田川 和光, 藤岡 農宏
    1987 年 38 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    患者は腹痛と下血を主訴とする46歳の男性である。37歳頃にブドウ膜炎, 〓瘡様皮疹, 口腔内アフタの出現でベーチェット病と診断されていた。昭和59年1月頃より左側腹部痛が出現し, 一時軽減したが再び増悪, 穿孔性腹膜炎をきたして●●●●●●緊急手術が実施された。陰部潰瘍も認め, ベーチェット病の完全型, 盲腸から上行結腸に多発性潰瘍を伴う腸管ベーチェット病と診断された。手術後も計4回の下血ないしは血便を認めたが, 黄土湯を投与し, 効果的であると思われた。その後, 清肺湯加減 (古今方彙, 便血門) に変方し, プレドニン20mgを併用したところ消化器症状が消失し, さらにプレドニンもすみやかに減量, 離脱できた。副腎皮質ホルモンの投与は, 大量短期投与 (60mg), 維持量20mgの報告例があるが, 本症例において, 漢方方剤の使用により, その必要量が減量され, 副作用の発現が抑えられたと考えられた。
  • 東洋医学における臨床科学化に関する研究
    小林 詔司, 森 和
    1987 年 38 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
  • 戸田 静男
    1987 年 38 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    艾の品質は, 夾雑物少なく, 繊維が細く密で, 熱の上昇が緩和であるものが良いとされている。その判定基準は, 経験的であり一定でない。このことから, 科学的な判別基準が必要と思われるので, 薄層クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーを用いて検討した。その結果, 夾雑物の有無により艾の薄層クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーいずれもクロマトパターンが異なっていた。
    このことは, 艾の品質を判別していく上で一助になると思われる。
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