副鼻腔真菌症に対する治療は上顎洞の洗浄,手術が一般的である。今回は洗浄のみでは改善しなかったが,辛夷清肺湯を使用したところ,急激に真菌塊が排泄された症例を経験したので報告する。
57歳男性。X 年5月17日,某大学病院歯科で右上顎智歯を抜歯したが,術前 CT にて右上顎洞真菌症が疑われ,同年6月19日,同院耳鼻科に紹介された。右上顎洞は大きく開放されており,洞内に真菌塊があり,外来で生理食塩水にて適宜洗浄を行い,自宅でも洗浄をしていた。10月19日自宅に近い当院を紹介受診した。辛夷清肺湯を処方した。11月11日,自宅で鼻洗浄をしていたら,真菌塊が排出された。病理ではアスペルギルスであった。
過去の文献を渉猟した限りでは副鼻腔真菌症に対する辛夷清肺湯の報告はない。洗浄のみでは改善しない副鼻腔真菌症症例に試してみる価値があると思われた。
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