Na
2O-ZnO-SiO
2系硝子熔融の際における蝋石坩堝の浸蝕状態ならびに浸蝕機構を明かにするために熱天秤, 顯微鏡およびX線寫眞を使用して, まづ蝋石坩堝の微細組織を原料の檢討から始めて, 燒締め前の坩堝, 燒締めた坩堝の順序に追究していつた。その結果, 燒締め前の坩堝組織は主としてパイロフィライトと木節粘土り各加熱分解物を微晶として含むマトリックスと殘存のパイロフィライトおよびシャモット塊から成つており, 燒締めた坩堝では組織の大部分が上記のマトリックスと微細なムライトとの緻密な燒結體であつて, その處々にクリストバライトおよびAl
2O
3質に富んだ領域 (往々内部にムライト或はダイアスポアシュードモルフを含む) が出來ていることを確かめた。このような蝋石坩堝はNa
2O-ZnO-SiO
2系硝子の熔融に際して, 何れも硝子との接觸部分に硝子の浸透による浸蝕層を生じ, これに隣接した硝子中にムライト, Zn-スピネルあるいは六角板状の結晶 (未確定) を析出するが, 後の二者は一般に共存しておらず, 又ZnO成分を多量に含有した硝子によつて, 浸蝕層内のAl
2O
3質に富んだ領域は選擇的に浸されている。
本研究に對し終始有力な御助言を與えて下さつた本學助教授山田久夫氏に厚く感謝致します。又, 試料製作に當つて種々御盡力下さつた岩城硝子株式會社の佐藤實氏及び旭硝子株式會社の宇野達路氏に對し心から御禮申上げます。
抄録全体を表示