窯業協會誌
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88 巻, 1017 号
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  • 頓行 宏
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 229-234
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    K2O-MO-B2O3系ガラス (M=Ca, Sr, Ba) の網目結合中のπ電子状態を知るために, それらガラス中に溶存させたVO2+イオンの光吸収スペクトルを測定し, それによって得られた知見に基づき, ガラス中のカルシウム, ストロンチウム並びにバリウムの存在形態を検討した. その結果, ガラス中のそれらの元素は, ガラスの網目構造を修飾するイオンとして存在するが, いずれの場合も, 一部がガラスの網目構造中に入り, ガラスの網目結合中のπ電子の非局在化に寄与することが考えられた. また, カルシウムからバリウムへといくにつれて, それら元素の修飾イオン的性格は, 強まることが考えられた.
  • 高橋 克明, 三浦 嘉也
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 235-242
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    3種のアルカリ土類ホウ酸塩 (CaO-B2O3, SrO-B2O3及びBaO-B2O3) 融液におけるNi2+イオンの還元電極反応をクロノポテンショメトリーで調べるとともに, Ni2+イオンの拡散に関する知見を得た. 白金電極上で, Ni2+イオンは可逆2電子還元反応を行う. Ni2+イオンの拡散係数はアルカリ土類酸化物濃度の増加にしたがって大きくなり, そのアレニウス型表示は湾曲するが, 2本の直線で近似することがほぼ可能であった. Ni2+イオンの拡散の活性化エネルギーはBaO>SrO>CaOの順に小さくなるが, これはアルカリ土類イオンの起分極力が大きくなるにしたがって, Ni2+イオンに対する酸素イオンの影響力が弱められるためであろう. 相関係数を0.6とし, Nernst-Einstein式を用いて電気伝導度から算出したアルカリ土類イオンの拡散係数は, Ni2+イオンの値とほぼ同じオーダーであったことから, Ni2+イオンはガラス融液中でアルカリ土類イオンと類似の役割を占めているものと思われる. Ni2+イオンの拡散係数は母体ガラスの単位体積中の酸素イオンの充てん度と密接な関連があり, 酸素イオンが増せば拡散係数は小さくなる.
  • 岡田 繁, 阿刀田 徹三
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 242-247
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    窒化ジルコニウム (ZrN) の生成機構と反応速度を調べるために酸化ジルコニウム (ZrO2) とグラファイト (C) との混合物を1気圧窒素ふん囲気中, 1300°-1600℃で0-16時間加熱した. その結果, 次の事項が明らかになった.
    原料のC/ZrO2 (モル比) の増加は窒化ジルコニウムの生成を促進する. 窒化反応は1350℃より始まる. その過程で安定な正方晶ZrO2相及び立方晶ZrC1-xNxなどの中間相の生成が認められた.
    窒化ジルコニウムの生成速度は1次反応速度式に従い, その際の見掛けの活性化エネルギーは64.7kcal/molであった.
    中間相としてZrC及びZrxO1-yNy相 (β-Zr7O11N2, β-Zr7O8N4やγ-Zr2ON2など) の生成は認められなかった.
    本研究における窒化反応温度範囲では純粋なZrN相を得ることは困難であった.
  • 熊谷 正人, 内村 良治, 岸高 寿
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 248-257
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    耐火物の曲げ試験時におけるAE特性と応力-ひずみ曲線を測定し, 耐火物の変形, 破壊挙動について検討した. 更に, 耐火物材質や試験片の処理条件, 潜在き裂の有無などの耐火物の内部構造の違いがAE特性に及ぼす影響を調べた.
    その結果,
    (1) 通常の耐火物では, 低応力域からAEが観測され, 高応力域になるにつれて増加し, 破断応力の70-80%付近からAE計数が急増する.
    (2) ち密質耐火物では, 高応力域までAEが少ない.
    (3) 耐火物の破壊に至るまでのAE特性, すなわち微小破壊挙動にはその微構造の違いを反映して大きな違いが認められるが, 変形過程をマクロ的にみると, 四つの共通した過程を経て破断に至る.
    (4) 一般に, 耐火物では低応力域でカイザー効果が成立するが, 高応力域や進展性のき裂を有する試験片では成立しない.
    (5) 耐火物中の自然き裂やラミネーションはその存在をAEによって検出しうる.
    今後, 耐火物の探傷手段としてのAE法の可能性を多方面から検討する必要がある.
  • 長谷 貞三, 鈴木 弘茂
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 258-264
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ホウ素と炭素を1wt%ずつ添加したβ-SiCの初期焼結を研究した. 1700°-1900℃間における等温収縮率は初期段階において時間の1/3乗に依存する機構で進行し, この機構の活性化エネルギーとして200±29kcal/molが得られた. また, 無添加, 1wt%C添加及び1wt%B+1wt%C添加圧粉体を同時に加熱して, 組織変化に及ぼす添加物の影響をも調査した. これらの実験で得られた結果は, 添加物が粒子間の粒界で粒界相として存在し, 粒界とネック表面における粒界相中へのβ-SiCの固溶度差から生じた粒界相中のSi (あるいはC) 原子の拡散律速で初期焼結が進行するとして合理的に説明できた.
  • 斎藤 肇, 山井 巌
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 265-270
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    フッ素を含むケイ酸塩融体と炭素との反応により発生した気相種よりのβ-SiCウイスカーの気相成長を高温で研究した. フッ化物として, NaF, Na2SiF6及びNa3AlF6を用いた. 生成した繊維状品はX線回折でβ-SiCであり, 電子線回折と電子顕微鏡で単結晶すなわちウイスカーであった. このウイスカーは3-5mmの長さで好収率で成長した. この条件はSiO2に対するフッ化物中のNaF成分のモル比は約1, 温度は1350°-1400℃で, 反応時間は本実験では1-4時間であった.
    以前に示唆されているように, 本研究の反応の中間種として, SiOが考えられた. このSiOガスの発生はSiF4によって促進されているとみられた. このSiF4ガスは, SiO2/NaFのモル比が1以上の条件で融体中から, 大気圧以上で発生しているはずであった. ビーズ状にケイ酸塩の小球が付いたウイスカーがしばしば現れた. このビーズ状のウイスカーは, 3SiO+CO=SiC+2SiO2の反応で形成された. 一方通常のウイスカーは, SiO+3CO=SiC+2CO2の反応で成長したと考えられた. 以上の結果を詳細に熱化学データから考察した.
  • 長谷川 洋, 安達 邦彦, 安井 至, 今岡 稔
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 271-277
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Li2O・SiO2ガラスのX線回折を測定し, それより動径分布曲線 (RDF) を算出し, pair-function法を用いて構造解析を行った. アルカリメタケイ酸塩ガラスには多数の構造モデルが提起されており, SiO4 4面体の連結の仕方により鎖状構造, 環状の単離イオン構造などが主張されている. 動径分布曲線及び密度などとの対応から環状構造及び側鎖をもつ鎖状構造は不適当で, 結晶と同じ直鎖状構造が適当と判断された. この構造では鎖の曲げ方, Li+イオンの位置など変化させうるパラメーターが幾つかあるので, それによる計算RDF (モデル内の各原子対のpair-functionの和) の変化を見て, 実験RDFとの一致の具合を調べた. その結果ジグザグに0-8°折れ曲がったものが適当で, その方向は結晶と同じ方向及びそれと直角方向が適当であることが分った. この折れ曲がり角度は結晶 (24.8°) と比し相当小さく, Cs+, K+, Na+とイオン半径の減少とともに折れ曲がり角は増大する傾向があるのにLi+で再び小さくなる点特異である. Li+イオンはK+のように同一鎖の2個の非架橋酸素で配位されることはできず, 非架橋架橋各1個ずつと別の鎖の非架橋酸素2個で配位された構造となっている.
  • 赤木 三郎
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 278-284
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アルコール溶液によるソーダ・石灰・ケイ酸ガラスびんの侵食とそれに伴う反応生成物について検討するため, 中性ないし微弱なアルカリ性の水及び33%エチルアルコール溶液をガラスびんに満たし, エチルアルコールの沸点以下の温度に加熱して, ガラスからそれぞれの内容液中に溶出したNa, Ca, Siイオンを定量し, 固相の生成状態の観察を行って, 次の実験結果を得た.
    (1) アルコール溶液中に溶出した各ガラス成分の量は, いずれも水の場合に比べて少なく, ガラスに対する水の侵食作用はアルコールの添加によって弱くなった.
    (2) アルコール溶液では, 微細な固相の析出に基づく沈殿物や白濁が生じやすかった. これは, ガラスと水との反応生成物であるカルシウムケイ酸塩の溶解度が, アルコール溶液においては著しく低下するためと考えられる.
    (3) アルコール溶液でガラス細片状のフレークス (Spicules) が発生しやすいという傾向は認められなかった.
  • 宇田川 重和, 浦部 和順, 矢野 豊彦, 夏目 幹子
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 285-291
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Ca2SiO4の相転移を高温プリセッションカメラを用いて研究し, Ca2SiO4の多形間の相転移において共軸関係が保たれることが明らかとなった. 得られた結果を総括すると以下のようになる.
    (1) γ→α'L相転移ではaγ//aα'L, bγ//bα'L, cγ//cα'Lの共軸関係が保たれる.
    (2) α'L→α'H相転移ではaα'L//aα'H, bα'L//bα'H, cα'L//cα'Hの共軸関係が保たれるが, α'L相の超格子反射の回折強度は温度の上昇とともに減少する.
    (3) α'L→β相転移では, aα'L//a*β, bα'L//cβ, cα'L//bβの共軸関係が保たれる. なおこの相転移で生成したβ相の結晶中には (100) 双晶がしばしば観察された.
    (4) β→γ相転移では, a*β//aγ, bβ//cγ, cβ//bγの共軸関係が保たれる.
    上述の共軸関係及びCa2SiO4の各多形の結晶構造に基づき, Ca2SiO4の相転移の機構を論じ, 更に相転移の間に起こる原子移動の観点からこの機構を明らかにした.
  • 長谷川 安利, 田中 英彦, 堤正 幸, 鈴木 弘茂
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 292-297
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    5wt% Y2O3と2wt% Al2O3を添加剤として加え焼結したSi3N4の酸化挙動を検討した. Si3N4焼結体はAME社とStarck社製の2種の粉末を用いて, ホットプレスにより作られた. 酸化は純酸素中, 1200°と1300℃の定温で, 30日まで行った.
    酸化による増量と酸化膜の厚み測定から, 酸化膜の生成量と酸化時間がほぼ放物線則に従って変化することが認められ, 酸化が拡散の関与した構構で進行すると考えられた. 酸化により生成する相はクリストバライト, Y2O3・2SiO2及びガラス相であり, クリストバライトは酸化時間が長くなるとガラス相に変化した. ガラス相の生成はNa, Ca, 及びFe等の不純物が酸化膜へ集積することに原因する.
    酸化膜の表面形状は酸化時間とともに変化したが, 酸化膜内部はクリストバライトとガラスから成るち密な相を形成した.
  • 三友 護, 長谷川 安利, 板東 義雄, 渡辺 昭輝, 鈴木 弘茂
    1980 年 88 巻 1017 号 p. 298-304
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    高温強度に及ぼす粒界相の影響を調べるため, 2種類のβ-サイアロンをホットプレスにより得た. (i) 原料窒化物表面の酸化物, ボールミル中のアルミナの混入量を補正し, Si4Al2O2N6の組成になるように調合した “balanced” サイアロン (B-サイアロン), (ii) 補正しないサイアロン (A-サイアロン).
    A-, B-サイアロンの曲げ強度を室温から1400℃まで測定した. A-サイアロンの室温強度は48kg/mm2であり, 温度とともに低下し, 1400℃では37kg/mm2であった. 一方, B-サイアロンの室温強度は44kg/mm2であり, 1300℃まで低下せず, 1400℃ではわずか低下し, 41kg/mm2であった.
    A-サイアロン中に存在するX相を透過型電子顕微鏡及び熱膨張測定で調べた. A-サイアロンのX相は約3vol%, B-サイアロンにはほとんど存在しない. A-サイアロンの高温での強度低下はX相が多いためと考えられる.
    破面の観察によると破壊は表面の傷及び焼結体の不均一に起因する大きな粒子から始まる. 室温では粒内破壊, 高温では粒内及び粒界破壊であった.
    本研究の結果, 組成の “補正” は高温強度の改良に有効であることが明らかとなった.
  • 1980 年 88 巻 1017 号 p. A25-A30
    発行日: 1980/05/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
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