(1) 多数のビトリアスチャイナ製品について釉応力と素地の熱膨脹係数とを測定して, 釉応力は素地の熱膨脹係数に比例して変化することを見出した. この関係は,
S(kg/cm
2)≒470[6.2×10
-6-α
B(20-450℃)]×10
6kg/cm
2で表わせる.
Sは釉応力, α
B(20-450℃) は常温 (20℃) と釉の最低なまし温度 (450℃) との範囲の素地の熱膨脹係数である. 使用した釉の熱膨脹係数は6.7×10
-6であった. 釉応力は素地の熱膨脹係数が1.0×10
-6増すとほぼ470kg/cm
2圧縮応力が増す. 注目すべきことは釉応力が0の時の素地の熱膨脹係数は6.2×10
-6, すなわち釉のそれより0.5×10
-6だけ小さいことである.
(2) 同一試料について素地の相対的結晶量をX線回折法によって測定した. ビトリアスチャイナ製品の素地は石英, クリストバライト, ムライトおよびガラスよりなり, 貫入品と無貫入品とでは石英とクリストバライトの相対含有量が異なるが, ムライト含有量は両者間でほとんど変らないことが判った. 素地の熱膨脹係数は
IQ(100)+1/6・
ICrist(101) であらわした石英及びクリストバライトの含有量の増加と共に増した. ここで
IQ(100) 及び
ICrist(101) はそれぞれ石英の (100) 面及びクリストバライトの (101) 面よりのX線回折線の強度である.
IQ(100)+1/6・
ICrist(101)≒20で釉応力は0,
IQ(100)+1/6・
ICrist(101) が20より大きいか小さいかによって釉応力は圧縮あるいは引張りとなった.
このようにビトリアスチャイナの貫入安全度は素地中の石英とクリストバライトの相対的含有量の測定によって定量的に予測でき, また前報で述べたように釉応力の測定によってもできる.
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