上記4成分系において, アルミナ・セメントとして良好な水硬性を期待できる組成範囲を再検討することを最終目的として, 特に従来, その影響が水硬性に対して重大であると考えられている成分SiO
2およびFe
2O
3の役割ないし挙動について検討した.
所定の組成に調合し, 焼成法により合成した試料の水硬強度を測定し, 試料中に生成した化合物の種類および量と対比して, 各試料の水硬性を論じ, さらにSiO
2, Fe
2O
3が水硬性に対して与える影響を明らかにした. SiO
2は, アルミナ・セメントの主成分である化合物CAの生成に対して好ましくない成分であり, 組成に含み得る量に関して, 従来6%が限界であるという説が支持されていたが, 本研究の結果より限界値が9%に達することを確かめた. 同時に鉄分の量によってはSiO
27%近傍に低強度を示す組成の存在することを見出し, その理由を考察した.
一方Fe
2O
3はCAおよびCA
2と, Fe
3+イオンとAl
3+イオンとが置換した固溶体を形成することを示唆する結果を得た. 固溶の限界値は, CAに対して4.76%, CA
2に対して15.0%であった.
固溶限界以下の鉄の存在は, 却ってCAの水硬性を上昇させ, さらに, 4.76%を越えると初期強度は若干低下するが, 10%までの鉄は, 長期強度の発現に対して, 有効な働きをすることを見出した.
抄録全体を表示