この研究で, 著者らはNa
2O-Fe
2O
3-NiO-B
2O
3-P
2O
5系ガラスあるいはガラスセラミックスの結晶化によって, 磁性結晶物質を得る可能性と通常のガラス形成技術により, 任意な形の成形物を得る可能性を検討した. 研究した溶融組成は, 25-35mol% Fe
2O
3, 10-20mol% NiO, 10-20mol% Na
2O, 10-40mol% B
2O
3, 10-45mol% P
2O
5である. 磁気特性, 電気伝導, 誘電緩和がNa
2O-Fe
2O
3-NiO-B
2O
3-P
2O
5シリーズの急冷と結晶化試料について測定された. 得られた結果は次のとおりである.
1) 25-30mol% Fe
2O
3, 10-20mol% NiO, 10-20mol% Na
2O, 10-40mol% B
2O
3, 10-45mol% P
2O
5組成の溶融は, 冷却により任意な形に成形でき, そして, ある急冷試料は磁化を示した.
2) ガラスセラミックスの磁化は, Fe
2O
3の量とともに増加し, 極大がB
2O
3/B
2O
3+P
2O
5組成比≈0.56-0.85で見いだされた.
No. 7 (急冷試料) の磁化は, 磁場6500 Oeで25emu/gに達した.
3) γ-Fe
2O
3とNiFe
2O
4のようなスピネル型フェライトの結晶の存在が, Fe
2O
3を高濃度に, NiOを比較的高濃度に含むある急冷試料において, 化学分析, キュリー点, X線分析, IRスペクトルによって確認された.
4) 析出した結晶の型は, 熱処理温度が増加するにつれ, γ-Fe
2O
3からα-Fe
2O
3そしてNiFe
2O
4に変化した.
5) 急冷試料の導電率において, 非常に高い導電率がγ-Fe
2O
3を含む組成で観察された. 異常に大きな誘電緩和スペクトルが, 20Na
2O・25Fe
2O
3・10NiO・25B
2O
3・20P
2O
5ガラスセラミックスで観察された.
磁気的性質の原因は, ガラスマトリックス中のγ-Fe
2O
3とNiFe
2O
4のような微構造の形成に関連している. このような微構造の形成は, 電気的性質に異常挙動をもたらすと考えられた.
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