CaSO
4・2H
2O及びCa(OH)
2が共存した場合の3CaO・Al
2O
3の水和は著しく遅延する. この過遅延の原因を明らかにするため, CaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2のサスペンション中に3CaO・Al
2O
3を分散させたときの液相濃度, 同時に固相水和物の経時変化等から検討した. その結果,
(1) CaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2の混合量にかかわらず, 液相濃度は常に1.80g CaO/l, 1.02g SO
3/lを示し, Al(OH)
4-の溶出は極めて少ない.
(2) この液相濃度を持続する時間 (高濃度持続時間) は混合するCaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2の量によって変動する.
(3) 高濃度持続時間終了後, 共沈体が急激に生成し, 7.6-9.6Å相の3CaO・Al
2O
3・CaSO
4・12H
2O-4CaO・Al
2O
3・
xH
2O系固溶体が肉厚の板状となって固相表面を覆う.
以上のことから, 混合するCaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2の役割を次のように考察した.
(A) 液相中のCa
2+, SO
42-を高濃度に持続させるに要するCaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2.
(B) 上記 (A) に寄与しない残りのCaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2.
水和直後, (B) に相当するCaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2が3CaO・Al
2O
3と瞬間的に反応して極めて結晶性の悪いAFt, AFm相を形成し, 未水和粒子表面を覆う. 過遅延の本質的な原因は, 造膜形成後, (A) に相当するCaSO
4・2H
2O, Ca(OH)
2が3CaO・Al
2O
3の周りを高濃度溶液で包むため, Ca
2+, Al(OH)
4-の溶出は困難になり, 水和は見掛け上停止するためである.
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