市販のセラミック繊維質断熱材の熱伝導率を測定し, そのかさ密度及び温度依存性について検討を行った.
繊維質断熱材の熱伝導率の測定に非定常熱線法を適用することの是非を調べるために, 種々のかさ密度を有する試料について, 対流時間に対する熱線の上昇温度を測定したところ, 本実験で採用した試料寸法が適切であり, 対流の影響も無視しうることを示す直線関係が両者の間に成立した. 熱線をマット状試料の重ね合わせ面に対して平行及び垂直に設置して得られたλの測定値を比較したところ, その差は9%以下で大きな異方性はみられなかった. したがって, 繊維質材料でも非定常熱線法の適用が可能であることが分ったので, この方法により種々のかさ密度を有する断熱材について, 室温から1200℃までの温度範囲でλの測定を行った. 得られた結果は次のように要約される.
(1) 繊維素材 (アルミナ質, ジルコニア質, アルミナーシリカ質) の熱特性が断熱材の性質に反映され, 同一かさ密度で比較した場合に, それが明確に現れた.
(2) 繊維質断熱材の熱伝導率 (λ) は, かさ密度 (ρ) の増加に伴って下に凸の曲線になる傾向があった.
(3) 各種断熱材のλは, 温度上昇に伴って増加するが高温ではふく射伝熱の寄与が増大するために低温の場合とは逆に, ρの小さいものほどλは大きくなった.
(4) アルミナーシリカ系繊維質断熱材の空気中におけるλ, ρ及び測定温度 (θ) との間には, 次のような実験式の成り立つことが分った.
λ=
a・exp(
bθ) ここで,
a=0.1-0.4ρ+0.7ρ
2 b=1.9×10
-3-2×10
-3ρ
この関係式により, 各使用温度における最適かさ密度の推算が可能となった.
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