窯業協會誌
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89 巻, 1032 号
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  • 望月 英世, 藤本 淳二, 西 保夫
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 393-402
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    PbO-Nb2O5-SiO2-Al2O3系ガラスから強誘電性の斜方晶系PbNb2O6を析出させるにはガラス組成にNiOのような遷移金属酸化物を付加し, 急冷ガラスを1250℃から45℃/minで冷却するとき最も析出量が多かった. このときNiOは斜方晶系PbNb2O6析出の際の結晶核となるものと推定し, X線マイクロアナライザーにより析出初期の球晶の中心付近でNi濃度が増加することを確かめた. 強誘電性の斜方晶系PbNb2O6の微構造は網目状に配列した針状結晶であった.
    急冷及び結晶化ガラスとも吸収電流が観測され, これらガラスの電圧, 電流特性は比例関係を示さず, 吸収電流は空間電荷分極によるものと考えられた. 立方モデル式に従って強誘電性結晶析出の結晶化ガラスのマトリックス相の誘電率ε2を計算すると結晶の体積分率の増加とともにε2は増加し結晶化ガラスの誘電率に近づく. 直流伝導の活性化エネルギーEdcは1.00-1.36eVで通常の電子伝導性ガラスのEdcに比べはるかに大きい. 急冷ガラスのEdcは結晶化後もほとんど変わらない. 急冷, 結晶化ガラスとも交流伝導の活性化エネルギーEacEdcのほぼ2倍で, 直流と交流で伝導機構が異なることを示し, 結晶相の導電率がガラス相のそれより低いことが推察された.
  • 林 国郎, 福井 雅男, 西川 友三
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 403-411
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    市販のセラミック繊維質断熱材の熱伝導率を測定し, そのかさ密度及び温度依存性について検討を行った.
    繊維質断熱材の熱伝導率の測定に非定常熱線法を適用することの是非を調べるために, 種々のかさ密度を有する試料について, 対流時間に対する熱線の上昇温度を測定したところ, 本実験で採用した試料寸法が適切であり, 対流の影響も無視しうることを示す直線関係が両者の間に成立した. 熱線をマット状試料の重ね合わせ面に対して平行及び垂直に設置して得られたλの測定値を比較したところ, その差は9%以下で大きな異方性はみられなかった. したがって, 繊維質材料でも非定常熱線法の適用が可能であることが分ったので, この方法により種々のかさ密度を有する断熱材について, 室温から1200℃までの温度範囲でλの測定を行った. 得られた結果は次のように要約される.
    (1) 繊維素材 (アルミナ質, ジルコニア質, アルミナーシリカ質) の熱特性が断熱材の性質に反映され, 同一かさ密度で比較した場合に, それが明確に現れた.
    (2) 繊維質断熱材の熱伝導率 (λ) は, かさ密度 (ρ) の増加に伴って下に凸の曲線になる傾向があった.
    (3) 各種断熱材のλは, 温度上昇に伴って増加するが高温ではふく射伝熱の寄与が増大するために低温の場合とは逆に, ρの小さいものほどλは大きくなった.
    (4) アルミナーシリカ系繊維質断熱材の空気中におけるλ, ρ及び測定温度 (θ) との間には, 次のような実験式の成り立つことが分った.
    λ=a・exp(bθ) ここで, a=0.1-0.4ρ+0.7ρ2 b=1.9×10-3-2×10-3ρ
    この関係式により, 各使用温度における最適かさ密度の推算が可能となった.
  • 萩尾 剛, 宮崎 憲治, 小林 和夫
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 411-418
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    コークス粉末に0-10wt%のLaB6を添加し, 圧力200kg/cm2, 温度1400°-2200℃の条件で加圧焼成し, コークス粉末の加圧焼成における作用について調べた. その結果, 2000℃以上の加圧焼成により密な焼結体が得られた. また, 得られたコークスのX線パラメーター特にd(002) 値はLaB6の添加量の増加に伴い, 大きな変化を示した. すなわち, そのd(002) 値は添加量の増加に伴い減少したが, 2-4wt%で最小値を示し, それ以上では逆に増大した. 最小値を示した添加量は焼成温度が高くなるほど減少した. 更に添加量が増えるとd(002)値はほぼ一定の3.405Åとなり, その006 X線回折線は完全に消失した. 2000℃以上でのコークスの焼結はLaB6-炭素系における液相の生成によるものと考えられ, また, コークスのX線パラメーターの変化はホウ素及びランタン原子のコークスへの侵入によるものと推定された.
  • 鷹木 洋, 小久保 正, 田代 仁
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 418-426
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    (0-30)Na2O・(0-33)BaO・(8-23)Al2O3・(43-62)TiO2(mol%) の組成の融液を板状ガラスに成形後粉砕し, 得られたガラス粉末 (297-500μmφ) 2gを95℃の2N NaOH水溶液100mlに浸漬したところ, ガラスの重量減少率は, TiO2及びBaO含有量が増加するにつれて低下し, Na2Oを特に多量に含む場合を除いてG20ガラス (1Li2O・11Na2O・1Al2O3・71SiO2・16ZrO2, wt%) のそれよりはるかに低かった. 上記組成のTiO2の一部をZrO2で置換すると, 更に重量減少率が低下し, またその融液から繊維状ガラスを得ることができた. しかし, 得られた繊維 (60-270μmφ×5mm) 5本を200mlの上記液に浸漬した後の直径減少量はG20ガラスのそれより大きかった.
    以上の結果より, この系のガラスは水溶液の体積Vに対するガラスの表面積Aの割合A/Vがある程度大きい時には侵食されにくいが, A/Vが小さい時には侵食されやすいと考えられた. この系のガラスがA/Vの大きい時に侵食されにくいのは, TiO2のアルカリ性水溶液中での溶解度が極めて低く, またBa2+イオンがガラス表面のTiO2に吸着しやすいためであると考えられた.
    この系のガラス繊維を95℃のポルトランドセメント浸出液 (NaOH 0.88g, KOH 3.45g及びCa(OH)2 0.48g/l) に浸漬した場合は, 192時間後も直径減少が認められなかった.
  • 加藤 悦朗, 村瀬 嘉夫, 立松 康政
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 426-433
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    炭素セラミック系複合抵抗体の温度及びふん囲気安定性の基礎研究として, 熱分解炭素を用い, 炭素層平面に垂直及び平行方向の接触抵抗をそれぞれ反映するようにセットされた薄片積層 [F] 及び自由堆積状態粉末 [P] の, 室温-300℃でのふん囲気変化による抵抗変化を測定した.
    抵抗の対数と絶対温度の逆数の関係は [P] では湾曲するが [F] では傾斜小のほぼ直線である. [P], [F] ともに導電の見掛けの活性化エネルギーは炭素の熱処理温度 (HTT) が高いほど小さくなり, 2500℃程度以上のHTTで熱分解黒鉛の体積抵抗のそれにおおよそ等しくなる.
    [P] の抵抗に対する200°-300℃での空気中酸素の効果は炭素のHTTによって異なり, 面間隔が乱層構造のそれに等しくなる温度よりHTTが低いか高いかによって抵抗を増大又は減少させる. [F] の抵抗は酸素によってHTTに関係なくすべて減少する. 炭酸ガス, 水蒸気, ベンゼン蒸気, プロパン, 都市ガス等は [P] と [F] に対しそれぞれ特徴ある抵抗変化挙動を示す. これらの変化は酸素の場合と異なり, 炭素のHTTには関係がなく, いずれも [P] か [F] かで異なる.
    200°-300℃での抵抗に及ぼす空気中酸素の特異な効果は, 層平面末端炭素やそれらを接合する未組織炭素に対しては障壁を高め正孔の移動度を低下させ, 層構造炭素に対しては吸着酸素への電子の移行によって正孔濃度を増大させるとして説明することができる.
  • 吉村 順一, 滝 貞男, 丸谷 新治
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 433-439
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    水熱法により, SAW (表面弾性波) 用の有望な圧電材料として期待されているベルリナイト (α-AlPO4) 結晶の合成を検討した.
    溶媒は6.1Mリン酸水溶液を用い, オートクレーブは白金ラインニングを施した内容積56mlのモーレイ型のものを用いた. 溶解度の温度こう配が負であるため, 結晶の育成は, オートクレーブ上部の低温域に培養材を保持し, 下部の高温域に種子をつるす逆温度差法で行った. 培養材及び種子には, リン酸アルミニウム試薬をリン酸溶液とともにオートクレーブ中に充てんし, 150°-220℃あるいは150°-260℃の間で, 温度をゆっくり上昇させてゆくことにより合成したベルリナイト微結晶を用いた. 充てん率は80%, バッフル板の開孔率は30%とした. 育成温度200℃では, 0°-30℃の温度差について検討したが, 自発核発生が多く, よい結晶は得られなかった. 温度差及び周囲温度の変化による温度差の変動が過大であったためと思われる. 育成温度を250℃, 温度差を10°-12℃としたとき, かなり透明度のよい結晶を最大0.43mm/day (c軸方向) の成長率で得ることができた. 結晶は転位, 双晶, インクルージョンを多数含んでいる.
  • 金子 泰成, 杉之原 幸夫
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 440-443
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    2, 3, 4及び5価の陽イオンを含むリン酸塩ガラスの光電子スペクトルを測定し以下の結果が得られた.
    (1) 2価イオンを含むリン酸塩のO1sスペクトルより, 架橋酸素と非架橋酸素の識別が可能であることが分った. しかし二重結合酸素と非架橋酸素は識別できないようである.
    (2) 2価イオン中では, Znは他のイオンとかなり異なった挙動を示すことが分り, アルカリ土類イオンに限定すれば, O1sケミカルシフトへの作用度はMg<Ca<Sr<Baの順となる. また架橋酸素と非架橋酸素の相対強度比はかなり理論値に一致する.
    (3) 3, 4, 5価イオンを含むO1sスペクトルより, ケミカルシフトに与える作用度として, Si<Al<Fe<Vの順になることが分った.
    (4) P2pスペクトルのケミカルシフトと組成の関係を調べた結果, 単に電気陰性度と陽イオン酸素間引力では説明できないことが分った.
  • 山崎 憲五, 山口 嘉信, 吉村 昌弘, 宗宮 重行
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 444-451
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    室温においてCA2とオルトリン酸溶液とを混練すると35℃では3-5時間, 15℃では3日間ほどでリン酸結合による自硬性の硬化体が得られた. この硬化体の圧縮強さは養生期間の増大に伴い徐々に増加し溶液/固体比1.2, リン酸濃度50%試料で常温最大圧縮強さは大体800-900kg/cm2であった. この硬化体はX線的に非晶質であったが, AlKαけい光X線スペクトルの化学シフトの測定よりAl原子はP-O-Al結合を形成しリン酸塩結合を強化しているものと推測された. この硬化体の熱処理を行ったところ約300℃付近で最大強度約1000kg/cm2が得られたが, これより高温では強度が減少し700°-900℃で最大強度の約1/3に減少し, 更に高温では再び強度が増加する傾向がみられた. この中温域における強度の減少はAlPO4などの結晶化や相変態によるものと考えられる. すなわち, この硬化体はX線回折によれば約650℃までは非晶質であったが, それ以上では顕著な結晶化が起こり, トリジマイト型AlPO4やクリストバライト型AlPO4及び試料の組成に対応した各種Ca塩相が生成した.
  • 峠 登, 広瀬 貴司, 南 努, 田中 雅美
    1981 年 89 巻 1032 号 p. 451-455
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Ge20BixSe80-x (x=0-13) 系及びGe20BixSe70-xTe10 (x=0-11) 系半導電性カルコゲナイドガラス (x>7.5でn型, x≦7.5でp型) における光伝導度のスペクトル応答性, 照射光強度依存性, 及び光感度を, 光吸収特性とともに調べた. スペクトル応答性において, Bi含量の少ない場合を除き, 二つのピークが観測された. 低エネルギー側のピークは光学的基礎吸収に対応し, その位置はBi含量が変化してもほぼ一定であった. これは, 光学的バンドギャップがほとんど変化していないことを意味している. 高エネルギー側のピークは, 基礎吸収よりもかなり高エネルギー側に位置しており, 電極との界面が関与しているものと考えられる. 照射光強度依存性より, 光励起されたキャリアの再結合過程は, 光強度が弱い領域では一分子的であり, 強い領域では二分子的であることが明らかとなった. 光伝導感度は, Bi添加による伝導型の変化に伴って増大することが見出され, これらのガラスが光伝導材料としても期待されることが示された.
  • 1981 年 89 巻 1032 号 p. A48-A52
    発行日: 1981/08/01
    公開日: 2010/04/30
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