膨潤性を示すNa-テニオライト (NaMg
2LiSi
4O
10F
2), Na-フッ素四ケイ素雲母 (NaMg
2.5Si
4O
10F
2) 及びNa-フッ素ヘクトライト (Na
1/3Mg
8/3Si
4O
10F
2) を端成分とする3成分系で, 層間イオン量と8面体層の組成の相違に着目し, 固溶体の合成を試み, その固溶関係を検討した. 更に各固溶体の融解, 結晶化過程の挙動及び膨潤性の相違についても, 粉末X線回折法, DTA及び偏光顕微鏡を用いて検討した.
系内の各組成における生成物は, 多くの場合, 主に固溶体雲母であり, その層間隔は連続的に変化するので, 本系は完全固溶系と考えられる. このことから, 層間イオン量及び8面体層の組成及び空孔量を連続的に制御し得ることが分った. しかし, 冷却条件によっては, Na-フッ素四ケイ素雲母組成付近ではフッ素マグネシウムリヒテライトとα-クリストバライトが, Na-フッ素ヘクトライト組成付近ではα-クリストバライト, α-トリジマイトが, それぞれ共生物として認められる場合もあった.
各固溶体の融解, 結晶化過程の様子は, Na-フッ素四ケイ素雲母, Na-フッ素ヘクトライト側において, 共生物が生成しやすく, 固溶体の非平衡的挙動が顕著になったが, 各端成分から広がる三つの領域に分類でき, このうちNa-テニオライトの領域が最も広い範囲を占めた. なお, 融解, 結晶化温度は, 系内を通じてほぼ連続的に変化したが, Na-フッ素四ケイ素雲母組成付近のみ, 1000℃以下で分解が起き, 特異な挙動を示した.
膨潤性はすべての固溶体において認められ, Na-テニオライト側から, Na-フッ素四ケイ素雲母側とNa-フッ素ヘクトライト側に向かって, 膨潤度は連続的に増加する傾向があった. 特に後二者を端成分とする中間組成の固溶体では, 膨潤度は大きく, 水和により急激にゲル状を呈した.
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