以上, 当研究所で過去十数年にわたって道路用セメントについて研究して来た結果を述べたが, これを要約すれば次の通りである.
(1) ポルトランド・セメント系のセメントは過去百数十年の歴史を有し, 安心して使用でぎるので, この系のうちで道路用として好適のセメントを探究することに努めた. そして到達した結果は (2) のようである. 下記の目標で製造された道路用ポルトランドセメントは, コンクリートのウォーカビリチーを良好に保ち, 亀裂発生の危険性を少くし, 耐久性を高い水準に置くことが出来る.
(2) 道路用セメントの化学成分としては, クリンカーの焼成を困難ならしめぬ程度にアルミナ分は少く, 鉄分はやや多く
Fe
2O
3/Al
2O
3=0.90-0.93
の範囲にあり, CaOは普通セメントより多く, クリンカー中の化合物組成で示すと次の範囲が好適のようである.
3CaO・SiO
2 2CaO・SiO
2 3CaO・Al
2O
3 4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
358-63% 23-17% 3-4% 13-12%
(3) このセメントの物理的性質のうち粉末度としては, コンクリートの収縮を少くし, 曲ゲ強サ大で弾性率を小ならしめ, workableにするために
15μ限界の風篩残分=70-72%
の範囲にあることが好ましい.
(4) 上記の化学成分, 粉末度はコンクリート舗設の機械と技術に関連性を有すること言を俟たない. また, 工事のスピード, 交通開始の遅速にも関係して成分, 粉末度の多少の変更は必要である. 一般にセメントの焼塊は原料を入念に調合し適当に焼締め, セメントは均質なものが供給されなければならない.
(5) 以上の性質を有する道路用セメントは凍結融解に対する耐久性も大きく, 既に試験コンクリート道路として2現場で使用され, 各種の試験に良好な結果を示している.
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