石英とCaOより180℃, 12時間の水熱反応で生成する11Åトバモライトについて, その結晶化度, Ca/Siモル比, 結晶の形や大きさ, 熱的挙動等に及ぼすBaCl
2, NaCl, CaCl
2, NaOH, KOHの添加効果が検討された.
(1) BaCl
2とNaClは結晶化度とCa/Siモル比を高くし, 異常型の生成を助長した. CaCl
2は結晶化度を低下させ, Ca/Siモル比を高める作用をし, 正常型の生成を助長した. NaOHとKOHは結晶化度を低下させCa/Siモル比を高めるが, 異常型の生成を助長した. これらの効果はNaOHよりはKOH添加時に著しかった.
(2) NaOH又はKOHの存在下で高結晶化度の11Åトバモライトを得るには, 無添加の場合より高めに出発Ca/Siモル比をとるべきである.
(3) BaCl
2, NaClは11Åトバモライトの
b軸方向への伸長を促し短冊状結晶を与えた. CaCl
2は結晶を薄くまた板状にする傾向がある. NaOHとKOHは微細な薄い結晶を与えた. これらの添加剤の中ではBaCl
2が
c軸方向に厚くしかも大きい結晶を与える優れた媒晶剤として機能した.
(4) これらの効果は添加剤がCa(OH)
2の溶解度を変えること, 及びアルカリ含有添加剤については11Åトバモライトの層間に水和Na
+又はK
+イオンが結合することに主に起因すると考えられる. すなわち, Ca(OH)
2の溶解度を高めるBaCl
2, NaClの添加は結晶化度を向上させ, 逆にCa(OH)
2の溶解度を低下させるCaCl
2, NaOH, KOHの添加は結晶化度を低下させた.
11Åトバモライト層間への水和アルカリイオンの結合は熱的挙動における異常性を増大させるようである. NaOHとKOH間にみられるこれらの効果の差は, 水和アルカリイオン半径の差, 及びNa
+イオンは正の水和であるのに対してK
+イオンは負の水和をしているためであると考えられる.
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