ポリアルキルアリルスルホン酸ナトリウムをC
3Sに対し混和剤として添加し水和させたときの, 溶出するCa
2+, 可溶性シリカの分析, 発熱量, 水和率, 吸着量, ζ電位の測定を行って凝結遅延や水和C
3Sへの吸着の機構を明らかにした. 三斜晶C
3Sを合成粉砕して, 水C
3S比1.3のペーストを作り, 混和剤は0.02%から1.00%の濃度をもつよう添加した. 混和剤の濃度が増すとともに溶出するCa
2+, シリケートイオンは増加した. Ca(OH)
2の結晶析出と水和率は0.02, 0.06%濃度でわずかに増加したが, それ以上の濃度で減少した. カロリーメーター測定では, 水和発熱ピークは濃度増加とともに遅れたが累積発熱量は0.10%添加まで増加した. それ以上の濃度では減少した. これらから, 減水剤の吸着は, 各ナフタレン核体に結合しているSO
3-のうちの幾つかがC
3S結晶表面のCa
2+に結合することによりもたらされることが分った. SO
3-は各ナフタレン核体に存在するため, そのチェーンの間にかなり多くのすきまを残したままで粒子面に平行に吸着されるので, Ca
2+, シリケートイオンの溶出は強くは妨げられず, また一部のCa
2+はカルシウム塩を作りながらも水和は進行すると考えられる. したがってこの界面活性剤の使用は, C
3Sへの0.10%以内の添加で有効である. これらの吸着の変化は, ζ電位の測定により確認された. 負のζ値はSO
3-によりもたらされ, また0.02, 0.06%減水剤添加で透過時期に正を示すのはCa
2+の吸着によるものであることも理解された.
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