Na-β-アルミナはガラス溶解炉用耐火物並びに固体電解質として重要であるが, 更にその特有な層状構造に由来する異方性を持つ興味ある物質である. 本報告ではβ-アルミナ固溶体 (Na
2O・9.23Al
2O
3) の焼結体 (12mmφ, 97%密度) をNaNO
3-KNO
3系融体に浸したときのNa-Kイオン交換の速度を重量変化を測定しながら280-440℃で測定した. すべての実験で得られた交換速度は時間の1/2乗に比例しており, 焼結体内のNaあるいはKの相互拡散によって交換過程が律速されていることを示している.
Na-β-あるいはK-β-アルミナをNaNO
3-KNO
3融液中で交換するとき, 拡散係数はNaやKの濃度が増していくほど10
-6-10
-7から10
-7-10
-8cm
2/sに減少し, その活性化エネルギーは単結晶の4-5kcal/molの値から10-13kcal/molに増大する. これらの状況はいわゆる混合アルカリ効果に相当している. Na-K混合β-アルミナをKNO
3あるいはNaNO
3融液中で交換する場合, 同様に中間組成で最小の拡散係数を示すのが見られる. Na-β-アルミナをK50 at%以上のNaNO
3-KNO
3融液中で交換するとき, またK50at%以下のNa-K-β-アルミナを純粋なKNO
3融液中で交換するとき, 焼結体はKの侵入による膨張で破壊した.
交換後のNa, Kの濃度分布をEPMAで測定し, これからマタノの拡散係数を種々の組成で得た. 300°-400℃, 10-30分の交換で100-1000μmの拡散層が見られた.
抄録全体を表示