窯業協會誌
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87 巻, 1008 号
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  • 今岡 稔, 坂村 博康
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 387-394
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    中心に金属線を封入したアルカリケイ酸塩ガラス (SiO2 65mol%, Na2O 35mol%) を用い, 次の実験を行い内部摩擦の変化を調べた.
    (1) 電解実験: 試料表面を+又は-にして, 1.5V, 270℃であらかじめ長時間電解したガラスの内部摩擦を測定した結果, 低温ピークは減少し, 高温ピークは表面が-の時増大し, +のとき減少した.
    (2) 分極実験: 4.5Vまでの電圧を加えた状態でガラス試料の内部摩擦を測定した結果, 低温ピークには変化がなく, 高温ピークは電場の向きに関係なく, ガラス中の分極現象にほぼ比例して増大した.
    以上の実験結果から, 電解の結果試料表面のアルカリイオンが減少し, 非架橋酸素に隣接するアルカリイオンの空孔が増すと高温ピークが増大することが明らかになった. このことはクラウン化合物を用い, 化学処理により表面のアルカリ濃度を下げた場合も, 同じ結果が確認された. また一連の実験結果は, Dayらが主張する水素イオンの存在によっては, 到底説明できない.
    したがって, アルカリケイ酸塩ガラスの高温ピークは, 非架橋酸素が隣接するアルカリイオンの空孔との間を, 移動することによって起こるものと考えた.
    なお, 低温ピークについては, その原因となるアルカリイオンは, 限定された一部のイオンであると考えられた以外, 特につけ加えるべきことはなかった. アルカリイオンの空孔を取り巻く, 網目構造の変形に伴う内部摩擦の変化は, バックグラウンドの変化として認められた.
  • 花田 禎一, 吉岡 祥文, 曽我 直弘, 功刀 雅長
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 395-399
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    X線マイクロアナライザーを用いてPKβ線のスペクトルを測定して, そのスペクトル変化からリン酸塩結晶及びガラス中のリンの状態分析を試みた. PKβ線のスペクトルはリンの状態によりピーク位置, 形状とも変化したが, 本論文ではピーク位置の変化が化学的状態を反映しているとして, その変化についてのみ取り扱った. その結果, P=Oの結合を含むPO44面体を有するメタ, ピロ, オルトの各アルカリリン酸塩結晶におけるPKβ線スペクトルのピーク位置はアルカリとリンの濃度比, R/Pが大きくなるとともに直線的に短波長側に移行した. 一方, P=Oの結合を含まないPO44面体を有するBPO4及びAlPO4結晶のスペクトルのピーク位置は, P=Oの結合を含んだPO44面体を有する一連の物質が位置する直線上にはのらずに長波長側に位置した. 以上の結果はPO44面体中でのP=Oの結合の有無と, リンイオンに対してsecond neighbourにある元素の電気陰性度の大小との二つの因子を考慮することにより説明できた. またこれらの結果を基に, R/P<1であるアルカリリン酸塩ガラスにおけるPKβ線スペクトルの組成によるピーク位置変化からガラス中のリンの結合状態を調べた.
  • 久 修, 露木 尚光, 久富 孝司, 町長 治, 笠井 順一
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 400-404
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本報では結晶質12CaO・7Al2O3でなくCaO-Al2O3-SiO2系において得られる12CaO・7Al2O3組成のガラスを用いて水溶液, CaSO4・2H2O溶液, Ca(OH)2溶液中における水和挙動, 水和生成物の変化について調べた.
    その結果は次のようにまとめられる.
    (1) 12CaO・7Al2O3組成ガラスの凝結時間は結晶質12CaO・7Al2O3に比べ凝結遅延を示す.
    (2) 更に, 溶出曲線から見ると12CaO・7Al2O3組成ガラスのCaO, Al2O3の溶出量は結晶質12CaO・7Al2O3のそれより低くおさえられ, CaO 0.6g/l, Al2O3 2.2g/lの溶出量を長時間維持している.
    (3) CaSO4・2H2O溶液中において, 飽和溶液, 懸濁溶液いずれも, 水和生成物はettringiteでカルシウムアルミネート系水和物と共存していない.
    (4) Ca(OH)2の飽和溶液, 懸濁溶液においては水和初期の水和生成物は3CaO・Al2O3・6H2Oで, 結晶質12CaO・7Al2O3の水和生成物と異なる.
  • 水野 正雄
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 405-412
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ヘリオスタット式太陽炉を用いて試料を溶融後急冷し, その冷却曲線から試料の凝固点を求め, Al2O3 Ho2O3及びAl2O3-Er2O3系の液相線を決定した. 溶融後急冷した試料についてX線回折及び化学分析を行い生成相を調べた.
    ガーネット構造の3Ho2O3・5Al2O3, 3Er2O3・5Al2O3, ペロブスカイト構造のHoAlO3, ErAlO3及び単斜型の2Ho2O3・Al2O3, 2Er2O3・Al2O3の単一相は, 1600℃に加熱処理した試料と溶融後急冷した試料のいずれにも観察された.
    溶融後急冷して得られた3種の化合物の凝固点は, 3Ho2O3・5Al2O3: 1950±20℃ ErAlO3: 1963±20℃ 3Er2O3・5Al2O3: 1961±20℃ 2Ho2O3・Al2O3: 1975±20℃ HoAlO3: 1980±20℃ 2Er2O3・Al2O3: 1990±20℃であった.
    これらの化合物は高温X線回折を行った結果, 結晶転移は認められず安定相である.
    Al2O3-Ho2O3系における共晶点は, Ho2O3が19mol% (1780℃), 42.5mol% (1930℃), 60mol% (1910℃) 及び78mol% (1885℃) 組成で認められた.
    Al2O3-Er2O3系では, Er2O3が18mol% (1810℃), 42.5mol% (1930℃), 57mol% (1920℃) 及び80mol% (1880℃) 組成で認められた.
    Ho2O3及びEr2O3の冷却曲線は, 冷却の過程において凝固点以下での固相における構造変化を示す発熱ピークが認められた.
    これらの結果から, Al2O3-Ho2O3及びAl2O3-Er2O3系に対する高温平衡状態図を推定した.
  • 近藤 連一, 大門 正機, 浅賀 喜与志, 西川 直宏, 北島 圀夫, 平尾 穂
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 412-416
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    フッ素金雲母 [KMg2(AlSi3O10)F2] と四ケイ素雲母 [KMg2.5Si4O10F2] 系での固溶体の結晶育成を目的とし, 融解, 結晶化状態などの熱的挙動を検討した.
    固溶体は, その両端成分を混合, 再溶融して合成し, この系が完全固溶系であることを確認した.
    融解, 結晶化状態の実験は, 試料を白金るつぼ中に密封して, 急冷法と示差熱分析法で行った.
    二つの方法により得られた融点は, 若干の違いがあったが, 系全体の傾向は一致した. 四ケイ素雲母の組成に近づくほど, 固溶体の融点は低下し, 結晶化の際の過冷却も余り起こさない. また固溶体では, 端成分に比べ, 広い温度幅にわたって, 徐々に融解することが判明した.
    得られた結果を参考にして, 融液から固溶体の単結晶を得た.
  • 萩尾 剛, 宮崎 憲治, 小林 和夫
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 416-422
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    コークス粉末に11種類のホウ化物を添加し, 圧力200kg/cm2, 温度2100℃, 保持時間30分の条件で加圧焼成した. そして, それらのホウ化物がコークスの焼結及び黒鉛化に与える影響について調べた. その結果, すべてのホウ化物はコークスの焼結及び黒鉛化に効果を与えていることが分った. 焼結効果の大なホウ化物はVB2, CrB2, CrB, Mo2B5, ZrB12及びLaB6であり, コークスの黒鉛化効果の大なものはCrB2及びZrB12であった. コークスの黒鉛化促進作用はホウ化物中の一部のホウ素のコークスへの拡散によるものと考えられた. その際, IVa及びVa族のニホウ化物は一部のホウ素を失い炭化物を, またVIa族のニホウ化物は低ホウ素含有化合物を生成することが分った.
  • 岸岡 昭, 宮石 徹, 木下 真喜雄
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 422-429
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Na2O-Al2O3-P2O5系及びK2O-Al2O3-P2O5系ガラスの粘度を, 108.5-1013ポアズの範囲でペネトレーション法により測定した. logηと1/Tとの間には直線関係が得られた. logηが10, 11及び12のときのそれぞれの温度 (等粘度温度) をAl2O3含有量に対してプロットすると, いずれの系においてもAl2O3の増加につれて温度が上昇するが, その上昇のしかたはP2O5の多い系列のほうが急激であった. 特にNa2O系ガラスで, P2O5 42.5mol%以上の系列と37.5mol%以下の系列との間で, 等粘度温度の上昇に大きな相違があり, 後者ではその上昇が非常に緩やかであった. この等粘度温度の変化はガラスの密度や屈折率の変化ともよく対応していた. P2O5含有量によるこれらの性質の相違は, Al3+イオンのガラス中での構造上の役割の違いに基づくものと考えられ, リン酸塩ガラス中のAl3+イオンの配位数 (高P2O5ガラスで主として6配位, 低P2O5ガラスで主として4配位) によって説明することができた.
  • 鈴木 弘茂, 長谷 貞三, 丸山 忠司
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 430-433
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    無水ホウ酸, カーボンブラック及びマグネシウム粉末の混合物を加熱して, ホウ素含量の異なる2種類の炭化ホウ素粉末 (平均粒径0.6μm) を調製した. 粉末を十分に精製後, 得たままの粉末及びホウ素と炭素を添加して粉末中の炭素含量をいろいろに変えた粉末の焼結性を純ヘリウム1気圧中2200°あるいは2250℃で調査した. その結果, B (あるいはB4C)-C系の共融点付近の炭素含量25-30at%の時, >90%TDを達成できることが分った. ことに, 炭素含量27.7at%の粉末は2200℃の焼結で93.7%TDへ達した. 炭素によるち密化促進効果をB-C系の状態図から論じた.
  • 山根 正之, 岡野 誓太朗
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 434-438
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    塊状のシリカガラスを低温合成する上での必要条件を得るために, ゲルの加熱に伴う細孔径分布及び赤外吸収曲線の変化を調べた. シリコンメトキシドの加水分解により作製したゲルは多孔体で, 直径が20Å-80Åの細孔を含んでおり, 高温でゲル化したものほど気孔率が高かった. ゲル中での脱水縮合反応は800℃でほぼ完了した. ゲルの無孔化は650℃以上で著しくなった. 直径が20Å程度の微細孔しか含まないゲルは700℃でほぼ無孔化したが, 多数の小片に砕けた. これに対し50Å-80Åの比較的大きな細孔を含むゲルは, 800℃でもまだ多孔質であり, 加熱前の形状を保っていた. これらの現象と石英ガラス中での水の拡散係数が非常に小さいことを考慮して, 50Å-80Åの比較的大きな細孔を含むゲルを1000℃まで加熱した. ゲルをまず250℃まで真空中で加熱し細孔に吸着している水を除去した. 空気を導入して, 残留有機物を分解させた後, 再び真空中で800℃まで加熱し, その温度で脱水縮合反応で生じた水が, ゲルの開気孔を通って系外に去るまで保った. 充分水を除去してから1000℃まで加熱して無孔化を行いシリカガラスにした.
    この方法で種々の形状のシリカガラスを, ホットプレス等を行わずに作製することができた.
  • 佃 康夫
    1979 年 87 巻 1008 号 p. 438-442
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では, 透明Y2O3と黒色Y2O3焼結体のインライン透過率の測定及び比較検討を行った. 透明Y2O3焼結体については, 全透過率の測定も行った.
    Y2O3焼結体の原料粉としては粒径4-6μm, 純度99.99%のY2O3粉末を使用した. この粉末から作製した圧粉体を水素ふん囲気中, 2270℃ (2543K) の温度で焼結して透明Y2O3焼結体を得た. 黒色Y2O3焼結体を作製する場合には, 透明焼結体を露点-36℃ (237K) の水素ふん囲気中, 2000°-2200℃ (2273-2473K) の温度で再び加熱した.
    インライン透過率の測定波長範囲として0.2-13μmを選び, 測定試料の厚さを0.76mmとした. 全透過率測定用の光源としてはタングステンランプを使用した.
    透明Y2O3試料は0.24-10.5μmの波長範囲で透光性を有し, 波長0.7μmでは80%のインライン透過率を示した波長6.3μmでは透過率84%の最高値に達した. また, その吸収係数は0.9-6μmの波長範囲で約3cm-1の値を示し, 短波長側と長波長側の吸収端は, それぞれ波長0.22μm及び10.5μmに現れた.
    2000℃ (2273K) の温度で黒色化したY2O3試料の0.24-2.6μmの波長範囲におけるインライン透過率は, 透明Y2O3試料より低下し波長0.45, 0.524, 0.646, 1.410及び2.240μmにおいてY2O3の構造的欠陥に起因すると考えられる吸収ピークが示された.
    2200℃ (2473K) の温度で黒色化したY2O3試料の0.24-0.7μmの波長範囲におけるインライン透過率は0となり, 波長0.7μm以上から透光性を示す. また, 波長6μmでは透過率84%の最高値に達するが, 7.5μm以上の波長域では7.84, 8103, 8.64及び9.03μmの波長に4個の吸収ピークが現れた.
    透明Y2O3試料の全透過率は82.3%であった.
  • 1979 年 87 巻 1008 号 p. A51-A56
    発行日: 1979/08/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
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