窯業協會誌
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92 巻, 1066 号
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  • 小松 和蔵, 守吉 佑介, 伊熊 泰郎
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 299-307
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    焼結論と実験結果等と対比しつつ最近の焼結論の進歩を総説した. まず, 1950年代までの基本的な初期焼結理論を簡単に要約し, 複合焼結の立場から焼結地図を述べその問題点に言及した. 更に焼結速度式導出に関する最近の報文を紹介し, 今後の問題点も記述した.
    中期焼結では, 粒径分布を統計的に扱った中期焼結の速度式を説明し, 理想的な焼結論と現実の系の関連における問題点 (特に粒度分布等) についても概説した. 終期焼結では, ち密な焼結体を得るための粒界及び気孔の相対移動速度の重要性について論述した.
    最後に, 液相焼結に関するKingeryの最初の理論を説明し, 最近の技術的進歩により得られた新しい実験事実とこの理論の対比から理論の問題点を述べ, 新しい理論等についても紹介した.
  • 渡辺 宏, 近崎 充夫
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 308-313
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    安定化ZrO2の耐高温腐食性を検討するためにNa2SO4-25% NaCl溶融塩を用いて, Y2O3安定化ZrO2, CaO安定化ZrO2及び安定化剤であるCaO, MgO, Y2O3粉末の高温腐食試験を850°-1050℃で大気中で行った.
    安定化ZrO2の安定性は, 安定化剤と溶融塩との反応性に左右され, Y2O3安定化ZrO2では安定化剤Y2O3が溶融塩と反応しないために良好な耐食性を示す. またMgO安定化ZrO2では安定化剤MgOが溶融塩との反応性を示さないために耐食性良好と考えられる. 一方, 安定化剤CaOは溶融塩中のNa2SO4と反応してCaSO4に変化する. その結果, CaO安定化ZrO2ではCaOと溶融塩との反応に伴う脱CaO現象のために試験後の粉末における単斜晶ZrO2の存在割合が増加する. またCaO安定化ZrO2焼結体においても粉末の場合と同様, 腐食試験により焼結体中のCaO含有量が低下し単斜晶ZrO2の存在割合が増加する. 腐食試験後の焼結体試料では, 焼結ままの試料に比較して耐熱衝撃性が大きく低下する.
  • 八尾 健, 神野 博
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 314-319
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1400℃及び1300℃で雰囲気の酸素分圧を変化させて焼成した酸化アルミニウムコバルトにおいて, 粉未X線回折の強度を測定し, アルミニウム並びにコバルトの4面体サイト及び8面体サイトへの分布の仕方, 酸素パラメーター, 及び空孔の存在する可能性を求めた.
    強度の大きい11本の回折ピークの積分強度を求め, ln(Iobs(hκl)/Icalc(hκl)) とsin2θhκl2の相関係数の絶対値が最も1に近くなるときの, 陽イオンの分布, 酸素パラメーター, 及び空孔の存在量を得た.
    陽イオンの分布, 及び酸素パラメーターは, 焼成条件によってはほとんど変化せず, 酸化アルミニウムコバルトは, 4面体サイトの20-30%をアルミニウムが, 80-70%をコバルトが占め, 酸素パラメーターが0.386-0.388の, 正スピネルと逆スピネルの中間の構造をとった. 高い酸素分圧で焼成した試料では, 4面体サイトに空孔の存在する可能性が示された. これは, Co2+の酸化によるCo3+の生成により, 2価陽イオン (Co2+) と3価陽イオン (Al3+とCo3+) の比が変化するため, 欠陥が生成することによると考えられる. Co3+の生成量は微量であるため, 陽イオンの分布にはほとんど影響を及ぼすには至らないと解釈される.
  • 鈴木 松郎, 平石 俊一, 吉村 昌弘, 宗宮 重行
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 320-327
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Al2O3:SiO2=3:2 (モル比) の混合アルコキシド又は混合ゾルを水熱処理した後, 焼成することによりムライト粉末を得た.
    混合アルコキシド又は混合ゾルの300°-400℃, 50MPa, 2時間の水熱処理により, AlとSiの両成分を含む擬ベーマイト類似相が生成した. アルコキシドより得たこの相の結晶はゾルから得たものより微細であった. ゾルを用いた場合, 500°-600℃, 50MPa, 2時間の水熱処理でAl2O3-SiO2-H2O間の反応が進行し, ハイドラルサイト (2Al2O3・2SiO2・H2O), AS (H)-II (5Al2O3・2SiO2nH2O) 及び少量のムライトが生成した. 一方, アルコキシドを同一条件で水熱処理しても, これらの相は生成しなかった.
    300℃, 50MPa, 2時間の水熱処理で得た擬ベーマイト類似相は600℃で脱水しAl-Siスピネルとなり, 1300℃でムライトに変化した. アルコキシドから得たムライト粉末はゾルから得たものより, 微細でかつ均一組成であった.
    ゾルの600℃, 50MPa, 2時間の水熱処理物は, 焼成により顆粒状の3:2ムライトと針状の2:1ムライトの混合物となったが, 低温 (800℃) の焼成でムライトに変化した.
  • 牧原 正記, 守屋 喜郎
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 328-333
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    トリメチルシリル (TMS) 化法を用いてオルトケイ酸エチルの縮合過程を反応温度及び触媒濃度を変化させて追跡した.
    単量体, 二量体, 環状四量体の消失, 生成速度は温度が高いほど大きくなり, 時間とともに高分子量化が進行した. TMS誘導体の分子量分布曲線は幾つかの特定の分子量位置にピークを持った曲線であり, ピークの位置は反応温度に関係なく一定であった. 重量平均分子量 (Mw), 数平均分子量 (Mn) の増加速度は, 反応温度が20℃上昇するごとに約5倍になった.
    溶液のpHの低いほど単量体の消失速度は大きく, 逆にMw=1000以上のオリゴマーの縮合反応速度は小さくなった. 分子量分布曲線の形は溶液のpHによって異なっているが, いずれのpHにおいても時間とともに粒子の成長がみられた. pHの低い領域では粒子の成長は, 同じような大きさの粒子が結合することによってゆっくりと進行する. 一方, pHの高い領域では粒子の成長は, 単量体あるいは二量体を取り込みながら, 急速に進行する.
  • 志沢 三明, 吉田 智則, 大塚 淳
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 334-340
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Ni2SiO4-Mg2SiO4-Zn2SiO4系固溶体の生成と色調及びその陶磁器用顔料としての適用性を検討した. 試料は, 酸化亜鉛, 二酸化ケイ素, 塩基性炭酸マグネシウム, 塩基性炭酸ニッケルを所定のモル比に配合し, 1300℃で3時間焼成して得た. (Ni, Mg, Zn)2SiO4系のオリビン型及びフェナサイト型固溶体の生成領域をX線分析により検討し, 各生成領域内で格子定数を測定した. 結果を要約すると次のとおりである.
    (1) Zn2SiO4は, Ni2SiO4に約25mol%, Mg2SiO4に約15mol%まで固溶し, また, Zn2SiO4には, Ni2SiO4が約10mol%, Mg2SiO4が約35mol%まで固溶した.
    (2) オリビン型固溶体 (Ni, Mg, Zn)2SiO4では, Ni2+とMg2+のM1, M2サイトに対する選択性の違いにより, 格子定数がVegard則から偏倚した (特に, bが大きく正に偏倚した).
    (3) 色調は, オリビン型固溶体では, 6配位Ni2+によるイエローグリーン, フェナサイト型固溶体では, 4配位Ni2+による青の呈色をした.
    (4) (Ni, Mg, Zn)2SiO4系のフェナサイト型固溶体は, 亜鉛マット釉中で安定であるが, 色調は, 試料粉末と若干異なり, 緑味の青の呈色がみられた.
  • 森本 繁樹
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 341-345
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ポーラスガラスを微細系の研究に使用することは, 再現性, 安定性等の点から非常に有効である. ポーラスガラス中に導入したKNO3結晶の大きさと特異な相転移現象との関連性を詳細に検討した.
    ポーラスガラス中のKNO3結晶の大きさは, 融点降下より計算した. 130Å以下のKNO3結晶では, 中間相であるIII相 (Rhombohedral) が検出され, 室温安定相であるII相 (Orthorhombic) への相転移は観察されなかった. しかし, 175Å以上のKNO3結晶では, バルク結晶と同様に相転移が進行した.
    III相 (Rhombohedmal) からII相 (Orthomhombic) への相転移において, 臨界核の大きさを見積もったところ, D*=130Åであった. これは, 実験結果と良好な一致を示し, この相転移が, 核生成-成長機構によって進行することを支持した.
  • 西野 忠
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 346-349
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    CaSO4-BaCO3系混合物をCO2気流中で加熱すると, 単純交換反応型でCaCO3とBaSO4を与えるのに対し, CaSO4-SrCO3やSrSO4-BaCO3系では単純交換反応生成物同士が相互に少量ずつ固溶した2相を与えることを前報で詳述した.
    生成固溶体の化学組成を調べることは,陽陰両イオンの拡散機構の解明に必要と考えられる.
    溶媒による選択抽出, 化学分析の容易等を考慮してSrSO4-BaCO3系交換反応生成物の組成を検討した.
    出発原料には単純交換反応生成物に相当するSrCO3とBaSO4を用い900℃で長時間処理したが, 生成相はSrSO4-BaCO3系反応生成物と同様, δ-SrCO3とBaSO4固溶体とを与えた. 両者は12N HCl-CH3OH溶液で処理しイオンクロマトグラフで分析した後, (2) 式, (4) 式を用いて両者のSr/Ba (モル比) を算出した. δ-SrCO3中のSO4量についても同法で独立に定量した.
    その結果, δ-SrCO3とBaSO4固溶体の化学組成はそれぞれ, (Sr0.80, Ba0.20)(CO3)0.98-0.99(SO4)0.02-0.01及び (Ba0.73, Sr0.27)(SO4)0.87-0.88(CO3)0.13-0.12と推定された.
    これらの値は選択溶媒に不溶で残留するBaSO4固溶体の放射化分析 (Ba:Sr=0.75:0.25) や化学分析 [(Ba0.766, Sr0.234)(SO4)0.879(CO3)0.121] の結果とよい一致を示すものと考えられる.
  • ESRパラメーターのゆらぎとガラス中の構造分布
    細野 秀雄, 阿部 良弘, 川副 博司, 金澤 孝文
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 350-359
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ソーダ・ホウ酸塩ガラスの広範な組成域でスピン・プローブであるCu2+とγ線照射で生成したCd+のESRスペクトルの線形を解析することによって, ガラスに固有な構造の分布を反映するESRパラメーターのゆらぎを評価した. 得られた結果は次のようにまとめられる.
    (i) Cu2+の線形は配位子場強度が構造のランダムネスを反映してガウス分布すると仮定し, それから変換で導かれるひずんだ形状をもつg||の分布関数を多結晶体に対する線形の表現に導入することにより, よく再現できた. g||のゆらぎの大きさはガラス組成に強く依存し, 次の順に増大することが分った.
    III<I<II, ここで, I: [Na2O]〓13mol%, II: 20〓[Na2O]〓35, III: 55〓[Na2O]〓70の組成域を表わす.
    (ii) Cd+の超微細構造の線形は等方性超微細結合定数aのゆらぎが線形を支配していると仮定して解析した. 求められたaのゆらぎの大きさはI≅III<IIの序列であった.
    算出されたゆらぎの程度のNa2O含量とスピン・プローブの種類による差異を, ガラスのネットワークやプローブイオンのまわりの化学結合の強度に基づいて議論した.
  • 横倉 修一, 岡田 稔
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 360-365
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    市場で繰り返し使用され, 表面傷の発生しているリターナブルびん (回収, 再使用可能) の強度特性をよりよく把握し得るような試験法として, 荷重試験法 (びんの所定位置に点荷重を加え, 所定の負荷速度で曲げ応力を発生させてびんを破壊させる方法) に着目し, その基本的な強度特性について検討を行い, 従来から製壜業界で実施されている内圧試験法 (びんに水圧を加え, 所定の負荷速度で引っ張り応力を発生させてびんを破壊させる方法) との比較的検討を行った. その結果以下のような知見が得られた.
    (1) 破壊起点が外表面にある場合, 荷重試験法によればリターナブルびんの市場での破損パターンとしての最も頻度が高い “ヒンジ割れ” (ヒンジ・ストレスに起因する割れ) を精度よく再現し得た. また破壊起点が内表面にある場合は, 内表面傷の影響を従来の内圧試験法に比べてより鋭敏に感知し得ることが分かった.
    (2) 荷重の負荷速度と破壊強度の関係につき検討を行い, Charles, Evansらにより導かれた疲労定数 (n) を求めたところ, n≒17-18程度の値が得られた.
  • 石田 信伍, 藤村 義和, 今井 寛治, 竹内 信行, Ohn MAUNG, 若松 盈
    1984 年 92 巻 1066 号 p. 366-371
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    京都の郊外に産し, 色付き陶磁器の優れた原料として用いられる赤土粘土及びその焼成物に含まれる鉄を主にESRと近赤外分光法で研究した. 赤土粘土の反射及びESRスペクトルと鉄の水酸化物のそれを比較することにより, 赤土粘土上の鉄は水酸化鉄ゲルの形で存在していることが分った. 焼成した赤土粘土表面上の鉄は, 酸化焼成ではα-Fe2O3とFe2O3-x (x≪1, α-Fe2O3が少し還元されたもの) の形で存在し, 還元焼成ではFeO, FeO1+x (x≪1, FeOが少し酸化されたもの), γ-Fe2O3及びα-Fe2O3の形で存在することが, ESR法で分った. 更に, 赤土粘土とそれより低濃度の鉄を含む信楽粘土よりなる素地の焼成物の色の由来について, 種々の酸化状態にある酸化鉄種の有無に関連づけて議論した.
  • 1984 年 92 巻 1066 号 p. A32-A36
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
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