V
2O
5を含むmixed network former系ガラス, V
2O
5-B
2O
3-P
2O
5ガラスの電気伝導と誘電緩和をこれらの微構造との関連において研究した。 電気伝導と誘電緩和の間の密接な相関関係から, 両方とも同じ電子ホッピングプロセスに起因していると思われる. 直流の導電率はV
2O
5含量に依存し, モル比B
2O
3/P
2O
5で1/3から3/4に相当する組成で極小を示した.
一方, 化学分析より決定した原子価比V
4+/V
totalはP
2O
5をB
2O
3で置換するとともに単調に減少した. Mottの理論によれば, その直流の導電率は, 原子価比V
4+/V
total=0.5で極大を示すことが期待される. V
2O
5-B
2O
3-P
2O
5系ガラスにおいて, 導電率の極小がV
2O
5含量に依存し, 原子価比V
4+/V
totalで0.2から0.6において観察された. この異常な挙動は, このタイプのガラスの直流の導電率が必ずしも原子価比V
4+/V
totalによって決定できないことを示唆している. この異常性を検討するため, 分子容, 分子屈折, IR測定及び電子顕微鏡観察の結果からガラス構造が特徴づけられた. 分子容の組成依存性は, 導電率に極小をもつ組成付近で急激に変化した. また分相が観察され, その分相は, 導電率に極小を示す組成の両側で異なる形態を示した. Vitreous BVO
4, amorphous V
2O
5とガラスのIRスペクトル間の類似性から, BVO
4とV
2O
5の構造単位がB
2O
3を多量に含有するガラスにおいて存在することが示唆された. したがって, B
2O
3量の多い組成の直流導電率の大きな増加は, これらの構造単位に帰することができる.
一方, 導電率に極小を示す組成付近のV-O-V非対称振動によるIRの吸収の消失は, V-O-V非対称振動が電子ホッピングプロセスに関係していることを示唆する.
これらの結果は, 微構造の変化がこのタイプのガラスの直流導電率の組成依存性を支配しているものと結論された.
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