1) クロム系耐火物に関係深い諸鉱物の合成を試み, スピネル, ピクロクロマイト, マグネシオフェライト, フォルステライト, モンチセライト等はそれぞれの成分酸化物またはその炭酸塩に硼酸を鉱化剤として添加し, 目的物の熔融点以下に加熱して合成することができた。
2) クリノエンスタタイトは調合物が熔融するまで加熱して合成することができた。
3) FeOを成分とする鉱物は, 酸化雰囲気のもとでは蓚酸第一鉄から出発して合成することができた。FeOを含むスピネル族鉱物は空気中で加熱するとFeOがFe
2O
3に酸化される性質があり, その時の生成物はFe
2O
3との固溶体に相当するものが得られることが判ったので, 耐火物研究の観点から無駄ではなかった。
4) スピネルの合成に際して焼成温度の影響をしらべたところ, 反応率, 比重, 屈折率, 微細結晶粒の大きさ等は高温になる程大きい値を示したが, X線粉末法による格子常数には変化が認められなかった。このことはスピネルの相互固溶関係の研究に際し重要な意味を有すると考えられる。
5) 合成した各鉱物の格子面間距離と, それらの廻折線の強度の正確な値を求めて表示した。これは将来これら鉱物の同定に際し, 合成温度の差に影響されずに採用され得るものと考えられる。
6) 合成鉱物の微構造, 磁気感応性等をしらべた。
この研究にいろいろな便宜を与えられた本学山田久夫助教授を始め地質鉱物学教室の方々, 東京芝浦電気株式会社マツダ研究所伊藤集〓博士等に深謝の意を表わす次第である。
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