ワラストナイト結晶の転移温度以上で焼成されたワラストナイト磁器の誘電特性の劣化原因を究明するために行った実験結果は, 次のように要約される.
その劣化の原因が, ワラストナイトの結晶型によるものかを調べるために, 高純度のβ-, 及びα-CaO・SiO
2を合成し, 分散法を用いて, 粉末状態で誘電率 (ε) と誘電正接 (tanδ) を測定したところ, β型では6.5, 及び4.2×10
-4, α型では8.6, 及び5.0×10
-4となり, 両者の特性にはほとんど差を認めることができなかった. 次に, ホットプレスによって得たち密焼結体により, 誘電特性を比較したところ, β型焼結体のε, 及びtanδは7.4, 及び3.9×10
-4で, α型焼結体では8.4, 及び4.4×10
-4となり, 結晶型による差はなく, このことが特性の劣化の原因でないことが分った.
そこで, 磁器の内部微細組織の観察を行った結果, 高温焼成において磁器中に生じたα型結晶と, ガラス質母相の熱膨張係数の差により, 冷却時に母相中に発生したと思われるクラックが, 誘電特性を劣化させる原因になったものと考えられる.
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