粒子励起X線 (PIXE) 分析法は, 最近, 広い分野で使われ出している分析法であるが, その主な利点は, 分析感度が高く, かつ, 非破壊で多元素同時分析が可能なことである. 一方, ファインセラミック原料中の不純物元素の種類と含有量は, 焼成後の製品の品質を左右する重要な要素であるが, その分析手段はいまだ確立しておらず, 数百ppm以下のレベルでは分析方法によって測定結果が大きく変動することがある. 著者らは, PIXE法によって, このセラミック原料中の微量元素分析を試み, 若干の知見を得たので報告する. まず, MgO試料に2MeVの陽子を照射した場合について, 陽子エネルギー及び, Ca, Fe, Znの
KX強度の深さ依存性を計算で求めた. その結果, MgO, SiC, Si
3N
4, Al
2O
3など, 平均の原子番号が10程度の物質のPIXE分析には1μm厚さの試料でも十分に薄いとはみなせないことが分かった. 1μmより薄い試料を調製するのはかなり難かしいが, それらの物質中における2MeVの陽子の飛程, 10.33mg/cm
2より厚い試料の作製は容易である. この厚い試料を用いて, 2MeVの陽子とHeイオンによる分析感度の違い, 及びそれに対するX線アブソーバーの効果も調べた.
抄録全体を表示