窯業協會誌
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93 巻, 1076 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 坂村 博康, 安井 至
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 165-169
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Na2O-K2O-Al2O3-SiO2系ガラスの内部摩擦を周期約1Hzのねじり振動を用いて測定した. 単一アルカリ系にみられる高温ピークは非架橋酸素と関係があることを示し, 混合アルカリ系にみられる混合カチオンピークは非架橋酸素の有無に関係なく存在していることを示した. また混合カチオンピークは異種アルカリ量の比にあまり影響されずに一定温度域で現れ, 高温ピークの発生位置とは異なっていた. したがって混合カチオンピークは高温ピークとは異なるものであり, また非架橋酸素が含まれている混合アルカリガラスにみられるピークは両者が重畳した状態で現れているものと考えた. 混合カチオンピークの緩和機構には従来からいわれているように2種のアルカリによって生じる相互作用が関与していると考えた. また高温ピークの緩和機構には非架橋酸素だけでなくアルカリイオンも関与していると推察した. 低温ピークと高温ピークにかかわっているアルカリイオンの違いはそのイオンの配位状態の違い, すなわちアルカリイオンに対する非架橋酸素の影響の違いによるものと考えた.
  • 中村 雅彦, 塩見 治久, 奥田 進, 長野 利雄
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 170-174
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Sb2O3を固溶したSnO2系半導性釉内での電気伝導組織を明らかにする目的で, 半導性粉末の体積含有率 (Ve) と釉の導電率との関係を, 不均一系中での導電組織に対する各種モデルにあてはめて比較検討した. 釉の導電率は, Ve>3.88vol%では, Scarisbrickの近接型不規則モデルが良い一致を示すことより, 半導性粒子周囲の比較的低抵抗の溶解被覆層が, Ve≅3.88vol%程度から, 3次元的な連結経路を形成するような組織であると考えられる. Ve<3.88vol%では, 実効媒質 (Maxwell) モデルが適用できることから判断して, 被覆層の連結は, 高抵抗のガラス相で分断された組織をとると考えられる. 更に, 半導性粒子を立方体と仮定し, それら粒子が単純立方格子配列をとるとして, 被覆層の溶解平衡時の平均厚さを概算し, 被覆層内部の導電率分布を, 上記モデル系に対してBubeが提案した関係式を基に試算した.
  • 中村 浩, 梅林 正気, 岸 和司, 谷 英治, 小林 和夫
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 175-181
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Si6-zAlzOzN8-zz=1, 酸素を4当量%過剰の組成になるように配合したα-Si3N4, α-Al2O3及びAlNの粉末に各種化合物 (酸化物9種類, 炭化物7種類, 窒化物4種類) を各々5wt%添加し, 1850℃, 300kg/cm2, 1時間加圧焼結し, 得られた焼結体の曲げ強度, 結晶相及び組織を調べ次の結果を得た. 添加物の曲げ強度に及ぼす効果は, 次の四つに分類される.
    (1) 室温強度は著しく増加するが, 高温で強度が低下するもの (MgO, Y2O3, ランタニド酸化物).
    (2) (1) とほぼ同様の傾向を示すが, (1) ほど室温強度の向上及び高温強度め低下が顕著でないもの (TiO2, ZrO2, ZrN, ZrC, HfC).
    (3) 室温及び高温強度とも若干増加するもの (SiC, TiC, NbC, TiN).
    (4) 強度レベルを低下させるもの (BN, TaN).
  • 柘植 明, 上蓑 義則, 石塚 紀夫
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 182-185
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    窒化ケイ素粉末試料中の塩素の定量法として, 試料を加圧酸分解後, 原子吸光分析する方法を検討した. 酸分解に用いたテフロン製加圧容器からの塩化水素の揮散を防止するために, 試料中の塩素のおよそ数倍量に相当する既知量の硝酸銀を酸分解を行う前に加えた. 窒化ケイ素0.5gに硝酸銀溶液2mlを加え, フッ化水素酸10ml, 硝酸2mlを用いて, 160℃で16時間加圧酸分解した. 分解液中の塩化銀沈殿を濾過した後, 濾液中の銀濃度を原子吸光分析法で測定することによって, 試料中の塩素量を間接定量した. ヘキサフルオロケイ酸イオンなどのマトリックス成分は, 塩化銀の沈殿や銀の吸光度に影響しなかった. 酸分解過程における塩素の回収率はほとんど100%であった. 銀の添加なしで分解したときには, 約70%であった. この結果から, 試料分解の前に銀を添加することにより塩素の揮散が防止できることが分った. NBSガラス標準試料を分析したところ, 分析結果は標準値と良く一致した. この定量法の検出限界は0.002%であった. 市販の窒化ケイ素中塩素を定量したところ4.5%-0.008%の分析値 (相対標準偏差1%-25%) を得た.
  • 高橋 一郎, 宇佐 美三郎, 中門 公明, 宮田 寛, 志田 茂
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 186-194
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    各種の微小欠陥を付加したSi3N4とSiCの強度試験を行うとともに, 他の実験結果も併せて整理し, 欠陥寸法, 切欠き半径と強度の関係を求めた. その結果, 実際の機械部品で対象とするような100μm程度以下の微小な欠陥では, 破壊靱性値KICを一定とする線形破壊力学による評価結果は非安全側を与え, この傾向は結晶粒径の大きい材料ほど大であることが明らかとなった. 表面加工傷, 空孔, 人工欠陥等の各種の欠陥についての実験結果は, その形状効果を補正した等価き裂長さを用いることによって, 欠陥寸法と強度の関係は同一に取り扱うことができた. また, 各種セラミックスについての強度試験結果を, 等価き裂長さと平均結晶粒径の比ae/dと小さいき裂と大きいき裂の臨界応力拡大係数の比KC/KICの関係で整理すると, 材料の種類によらずほぼ同一の関係となることが明らかになった. この関係は本報で提案した結晶破壊モデルから導かれる関係式で比較的よく説明され, 更に平滑材における結晶粒径と強度の関係及び切欠き半径と強度の関係についても, 本モデルによる関係式で実験値の傾向は良く表された.
  • 野上 正行
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 195-200
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Si及びZrのアルコキシドを原料にして, 50mol%までのZrO2を含むZrO2-SiO2系多孔質ガラスを作り, その細孔特性と耐アルカリ性の検討を行った. 部分的に加水分解したSi(OC2H5)4にZr(OC3H7)4を反応させて作った固化体を500°-800℃で加熱して, 平均細孔径約20Å, 比表面積200-400m2/gの多孔質ガラスを作製した. ガラスの耐アルカリ性は, ZrO2量の増加とともに著しく向上したことから, この系のガラスは耐アルカリ性に優れた多孔質ガラスとして利用できることが分った. NaOH水溶液へのガラスの侵食量は浸漬時間に比例して増加し, 侵食に対する活性化エネルギーは, ZrO2の含有の有無によらず約45kJ/molであった. NaOH水溶液に浸漬したガラス表面に, Zrに富んだ化合物の皮膜ができたが, ガラス表面への接着は弱く, この皮膜はガラスの侵食を抑制する働らきをしないと考えられた.
  • 内川 浩, 宇智田 俊一郎, 小川 賢治, 岡村 隆吉
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 201-208
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    セメントへのCaOの添加, 混合粉砕がその初期水和, 凝結過程に及ぼす影響について検討した. 添加されたCaOは混練液相のCa(OH)2飽和比 (一定イオン強度下における測定Ca(OH)2濃度と飽和Ca(OH)2濃度の比) の上昇を速め, ピークに至るまでの時間を著しく短縮する. これに対応してセメントの水和発熱曲線における第2ピークの立ち上がり時期, すなわちエーライトの誘導期終了時期は短時間側にシフトし, エーライトの活発な水和が早く開始され, セメントの凝結時間短縮の原因となっていることが分った.
    この効果は, CaOの単なる添加よりも混合粉砕を行った方が大きく, CaOの粒度及びセメントとの微視的均斉性が大きな要因になっているものと考えられる.
    C3Sに対するCaOの添加効果は極めて複雑であり, 不純物の有無によって全く反対の効果が現れる. また不純物を含まないC3SにおいてもC3AやC4AFが共存する系ではCaO添加の効果が著しく異なることが分った.
  • (第2報) 各種網目形成3価イオンの類似性
    若林 肇, 寺井 良平, 山中 裕
    1985 年 93 巻 1076 号 p. 209-216
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    網目を形成する3価イオンの導入は, 酸素の結合状態に影響を及ぼし, ガラスの網目構造に特異な変化を与える. その変化が電気伝導度に与える影響について検討するために, 2Na2O・xR2O3・(8-x)SiO2ガラス (R: B, Al, GaそしてLa) について, 固体から溶融状態までの温度範囲で伝導度を測定し, また, 酸素の架橋状態の変化を知るために, 光電子分光法によりOlsピークを測定・解析した.
    Tg以上の溶融状態では, 各系における3価イオンの増加は, 電気伝導度を低下させた. 特に, 網目を形成するB3+, Al3+そしてGa3+の各イオンは, [RO4]-Na+/ΣNa+の増加に対して伝導度を直線的に減少させ (ただし, Al/Na≦1, Ga/Na≦1), また, それらの値も同組成比をもつガラスで互いに一致した. したがって, それらは元素が異なっても, 各系の網目構造の類似性が保たれれば, Na+イオンの移動度に与える影響が同じであることを意味する. Tg以下の固体状態では, 伝導度の組成依存性は単純ではなく, ガラスの凍結された温度に平衡する構造に依存する. 従来から問題となっているB3+イオンとAl3+イオンの伝導度に及ぼす挙動の違いも, この凍結温度の違いによって説明できる. 一方, La3+イオンは網目修飾イオンとして働き, その増加はすべての温度域で伝導度を急激に減少させる.
    Andersonモデルによって, 伝導の活性化エネルギーにおけるNa+イオンの結合エネルギー項の増加を見積もったところ, R/Naが0から1まで変化するにつれて約4-5kcal/molの増加であった.
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