本研究は, レーザーフラッシュ法によってち密なY
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3焼結体の熱定数, 特に熱拡散率及び熱伝導率を求めることを目的とするものである.
焼結温度2270℃ (2543K), 露点-36℃ (237K) の水素ふん囲気中の焼結で得た相対密度100%の黒色Y
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3焼結体を測定試料として使用した. 熱定数測定装置は, 三鬼エンジニアリング社製のTPL-18型であり, 波長0.6943μmのAl
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3-Cr
3+レーザーを試料の加熱用光源として用いた. 測定温度が900℃ (1173K) 以下の場合には, 直径0.05mmのクロメル・アルメル熱電対を用いて試料の温度変化を測定した. 測定温度が900℃ (1173K) 以上の場合には, 光高温計を用いて試料の温度変化を測定した. 測定温度として20°, 150°, 1025°及び1800℃ (293, 423, 1298及び2073K) を選んだ.
上記温度域における黒色Y
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3焼結体の熱拡散率は, それぞれ8.3×10
-2, 6.9×10
-2, 1.6×10
-2及び2.1×10
-2cm
2/s (8.3×10
-6, 6.9×10
-6, 1.6×10
-6及び2.1×10
-6m
2/s) であった. これらの熱拡散率から算出した熱伝導率は, それぞれ7.5×10
-2, 4.2×10
-2, 1.1×10
-2及び1.4×10
-2cal/cm・s・deg (31.7, 17.6, 4.60及び5.86J/m・s・deg) であった. 上記の黒色Y
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3焼結体の熱伝導率は, 文献値よりやや大きい値であった. この差異を明らかにするために, 文献値の場合に用いられるような白色Y
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3焼結体の20℃ (293K) における熱伝導率を測定した結果, 文献値に示された4.7×10
-2cal/cm・s・deg (19.7J/m・s・deg) に近い5.0×10
-2cal/cm・s・deg (20.9J/m・s・deg) を得た. これから, 本測定による熱伝導率が文献値より高いのは本測定におけるY
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3試料として, 黒色焼結体を使用したことによるものであり, 黒色焼結体の熱伝導率は, 白色体より高いことが分った.
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