2種類の遷移型アルミナ, ガンマ型, シータ型がアルファアルミナに転移する際の水蒸気の効果が論じた. この際, 遷移型アルミナ格子中の水の作用も考慮した. ガンマ型には格子水があり, シータ型にはない.
まず, 一定時間, 各温度, 各水蒸気圧下で, 両型のアルミナを加熱し生成したアルファアルミナを定量した. 温度は, 1000℃ないし1270℃, 水蒸気圧は, 760mmHg, 17.5mmHg, 0.0005mmHgである. この結果, 水蒸気はアルファアルミナ生成温度を低下させること, ガンマ型の方が低い温度でアルファ型になること, が明らかになった. ついで, 760mmHg, 17.5mmHg水蒸気圧下で, 一定温度, 各時間加熱した. この結果, 17.5mmHgでは, ほぼ0次反応, 760mmHgでは飽和値を持つ1次反応となった. 低い圧の水蒸気下のシータアルミナ転移が活性化エネルギーが大きく, 高い圧の水蒸気圧下の両型の転移, 低い圧でのガンマ型の転移は, いずれも水蒸気の作用で, 活性化エネルギーが小さくなった. ガンマ型では, 格子水が, 顕著な触媒作用を示した. 水蒸気は, 結晶成長にも効果があるが, 核生成に対する効果の方が大きかった. 高圧水蒸気下では, 見掛け上, ある飽和のアルファアルミナ生成量が存在し, このため反応速度式は1次のものになった.
水蒸気の格生成に対する効果は, 遷移型アルミナ格子中のAl-O-Al結合を, Al-O(H)-Alに変え, 結合を破壊, 再編成するところにあると推論し, この反応の機構を6段階の過程にわけて提示した.
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