1) 試薬品CaSO
4・2H
2Oおよび天然石膏を熱分解して半水石膏と無水石膏を得る場合, 試料によつてそれらに差異があるかどうか調べたが熱分析, 熱天秤, 熱容量等の測定結果から, 本質的な差異はないと思われる。
2) 熱分解はいずれも吸熱反応で第1段は100℃内外, 第2段は160℃内外で, 試料の量, 加熱速度で分解の様子が異るが, 本質的なものでない。
3) 第2段の熱分解生成物は加熱温度を200℃附近にとどめた場合極めて吸湿性の高い無水石膏で, これは比較的速かに空気中の湿分を吸収して半水石膏になる。従来これをv'ant Hoffの命名で可溶性無水石膏と呼び, Posnjakはγ-無水石膏と名付けたが, 本研究でもこの種のものが存在することが認められた。
4) 焼石膏製造に際して行う熟成の意味を明かにし, 焼石膏の性質は水和の際に存在する他の不純物等に影響される方が一般的な熱分解による影響より大きいように思われる。
5) 石膏が半水石膏, 半水石膏が無水石膏まで熱分解するに要する分解熱量を測定計算し, 又石膏, 半水石膏の比熱を測定計算した。
本研究は文部省科学研究費補助によつて行われた。また比熱測定について御援助を賜つた東京工大高木豊教授と長崎助手に感謝の意を表する。
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