カルシウムカーバイド系脱硫スラグによる高アルミナ質耐火物の損傷機構を明らかにするため, 脱硫操業率96%の混銑車のスラグライン部から回収した耐火物の調査, 脱硫の直前と直後の混銑車スラグの調査, 及びCaC
2を含む数種の合成スラグと高アルミナ質耐火物との高温での反応実験等を行い, 次のような結果を得た.
(1) 混銑車から回収した耐火物の稼働面にはち密な反応層や変質層があり, スラグの浸透, コランダムの析出がみられる.
(2) 混銑車スラグの塩基度は脱硫前の0.1-0.4から脱硫後の1.6-4.5の間で変動する.
(3) 高炉スラグは高アルミナ質耐火物を溶損し, 反応層をあまり形成しない. 他方, CaC
2を含むスラグはき裂を伴った反応層を形成し, その厚さはCaC
2量の多いほど大きくなる. 反応層内には, 金属シリコン, 針状のコランダム等の生成がみられる. き裂の生成は各種鉱物の生成やシリカの還元等の反応による耐火物の組織変化に起因すると考えられる.
(4) 脱硫操業時における高アルミナ質耐火物の損傷は, CaC
2を含む高塩基度スラグによりき裂を伴った反応層を形成し, スラグの塩基度の低下とともに, この反応層がスラグの中に溶解するという過程の繰り返しによるものと考えられる.
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