チタニウムを釉に加えたときはシリコンと同じような作用を行うものである。すなわち, 色に影響し, 乳濁性を生ずる傾向があるばかりでなく, 著しい光沢を与え, 化学的抵抗性を増す。また, TiO
2の熱膨脹率恒数は4.1で釉組成に用いる普通の酸化物の大体中位にある。
TiO
2を釉に8%以上加えると, 被覆力が働くようになるか, 色をつける。例えば, 6%までは黄褐色がかった調子を与え, これ以上になると青色の調子を出し, 10%加えると結晶として析出し, 釉は再び黄褐色がかり, 最後にマットになる。これはTiO
2が釉ガラスに溶け難いためである。
TiO
2はまた, 下えのぐをつくるのによく用いられている。例えば, 純TiO
2をフリットに加え, 石灰質素地の下えのぐとして鉛釉の下に用いると赤味のある黄色を示す。
ルチル (金紅石) はTiO
2の不純なもので, 一般・にFeOを1-25%と少量のSiO
2, Cr
2O
3, V
2O
5, を含んでいる。このルチルも釉ではTiO
2と同じように利用されているが, 鉄の含有量の差によって色彩効果はまちまちで, したがってこれが有害物として考えられているが, 一方このFeOのあるために極めて美麗な色を出すことにもなる。陶歯 (鉱歯) の黄味がかった色などは純TiO
2にFeOを混合しただけでは現われにくい。逆に, この黄色をきらうためにコバルトを入れて消すこともあり, WO
3を少量添加するとSK 9焼成でわらのような黄色になるために, TiO
2を含む磁器素地にWO
3を入れて感じのいい黄色がかった磁器をつくるのに利用される。
また, 釉が光に対して敏感になるのはTiO
2の影響であることもよく知られている。
次にいろいろな釉に対する酸化チタニウムの影響を簡単に述べる。
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