湿式法によって合成した. 2-6mol% Y
2O
3を含有するジルコニア微粉末を用い, 温度1400°-1600℃で焼成することによって, 相対密度99%以上のち密なY
2O
3部分安定化ジルコニア焼結体を得た. 機械的及び熱的性質を検討する目的で, これらの焼結体を用いて次の測定を行った. (1) 微構造の観察, (2) 3点曲げ強度及び破壊靱性, (3) 熱伝導度と熱膨張係数, (4) 230℃における熱的経時劣化. これらの測定から, 次の結果を得た.
焼結体の微構造に関して
(1) 焼結体は2mol% Y
2O
3組成では正方晶のみ, 6mol% Y
2O
3組成ではほぼ立方晶のみの粒子から構成されており, その中間の組成では, 約2mol% Y
2O
3組成の正方晶粒子と6-7mol% Y
2O
3組成の立方晶粒子が混在した組織からなっている.
機械的性質に関して
(2) MI法によって求めた破壊靱性値は, Y
2O
3含量が少なくなるに従って, 急激に大きくなる. この傾向は正方晶から単斜晶への応力誘起変態量の増加とよく一致する. 曲げ強度は, 2-3.5mol% Y
2O
3組成で, 1000MPa以上と最高値を示し, 破壊靱性から予想されるほどの組成依存性を示さない.
熱定数に関して
(3) Y
2O
3含量が少なくなるに従って, 熱伝導度は大きくなり, 熱膨張係数も若干大きくなる.
熱的経時劣化に関して
(4) 焼結体を200°-300℃に長時間保持した場合, 正方晶から単斜晶への相転移が起こり, クラックが発生するが, この現象は焼結体の粒子径と密接な関係があり, 3mol% Y
2O
3では, 粒子径を0.5μm以下に小さくした場合, 1500時間保持後でも生じない.
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