日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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74 巻, 9 号
選択された号の論文の59件中51~59を表示しています
症例
  • 原田 真吾, 阿部 哲夫, 久保 博一, 長田 俊一, 長谷川 誠司, 小尾 芳郎
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2610-2613
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.以前より右鼠径部の膨隆を自覚していた.右鼠径部膨隆が急速に増大し,用手的に整復困難なため当院を受診した.既往歴は41歳時,右大腿ヘルニア根治術.来院時,右鼠径靱帯尾側に表面平滑,弾性軟,鶏卵大の無痛性腫瘤を触知した.用手的還納は困難であった.腹部CT検査で膀胱の右前壁が右大腿静脈内側から尾側方向に突出していたため,大腿輪をヘルニア門とした膀胱ヘルニアと診断し,根治手術を施行した.手術時所見で膀胱が大腿輪より滑脱していた.膀胱を骨盤側に還納後,大腿ヘルニア根治術を施行した.術後経過良好で術後12日目に退院した.術後1年経過するが再発は認めていない.今回われわれは大腿輪をヘルニア門とした膀胱ヘルニアの1例を経験したので報告する.
  • 渡邉 佑介, 小島 康知, 松川 啓義, 塩崎 滋弘, 大野 聡, 二宮 基樹
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2614-2618
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    Lipoleiomyomaは多くが子宮発生の良性腫瘍であり,腹膜からの発生は非常に稀である.今回われわれは,腹膜から発生したlipoleiomyomaの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は65歳,女性.肺癌術後のPET-CTにて骨盤腹側に卵円形腫瘤を指摘され,精査目的に当院外科紹介.CT・MRIにて,65mm大の脂肪成分の混在が示唆される充実性腫瘤が認められた.またPETでもFDGの異常集積は認めなかったが,悪性の可能性も否定出来ないため腫瘤摘出術を施行した.手術所見は腹膜由来と考えられる腫瘤であり,腹腔内臓器に異常は認めなかった.病理組織診断にて平滑筋細胞の交錯する束状の増殖巣に,部分的に脂肪細胞群の増殖巣が不規則に混在したlipoleiomyomaと診断された.腹膜発生の報告例はPubMedで検索し得る範囲では3例,本邦においては検索し得なかった.
  • 小野田 雅彦, 吉田 久美子, 勝木 健文, 古谷 彰, 河野 和明, 加藤 智栄
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2619-2623
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.56歳時に胆石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.術後2年目に臍下創の腹壁瘢痕ヘルニアを発症し,直接縫合術を施行したが,1年後に再発したため,ポリプロピレンメッシュを用いた修復術を施行した.その術後11年目に腹壁瘢痕ヘルニアの再々発により外来を受診した.CT上,ヘルニア門の最大横径は104mmであった.また,臍から膿性排液があり,メッシュ感染を伴っていた.今回の手術は,メッシュの完全除去後に,components separation法を用いて腹壁再建を行った.術後経過は良好であり,第8病日に退院となった.正中型の腹壁瘢痕ヘルニアに対するcomponents separation法を用いた修復術は,生理的で強固な再建が可能であり,人工物の使用をためらうような症例に対して特に有用な術式であると考えられた.
  • 平賀 俊, 山口 拓也, 吉川 健治, 戸口 景介, 外山 和隆, 今井 稔
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2624-2629
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    会陰ヘルニアは直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術や骨盤内蔵全摘後の稀な合併症である.今回われわれは,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術後に発症した会陰ヘルニア,傍ストマヘルニア合併症例に対して,腹腔鏡下に修復を行った1例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.直腸癌肛門浸潤の診断にて腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.術後傍ストマヘルニア,会陰ヘルニアを合併したため手術を施行した.傍ストマヘルニアに対して腹腔鏡下にパリテックスTMパラストーマルメッシュを使用し修復術を施行し,同時に会陰ヘルニアに対し腹腔鏡下でパリテックスTMコンポジットメッシュを用い修復術を施行した.術後経過良好であり,現在再発兆候を認めていない.
  • 大平 学, 当間 雄之, 宮内 英聡, 鈴木 一史, 西森 孝典, 松原 久裕
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2630-2634
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニア術後の再発が著明に減少した現在,術後の慢性疼痛は最も問題となる合併症といっても過言ではない.特に術後の神経性疼痛は難治性で,QOLの著しい低下につながる.今回,鼠径ヘルニア術後の神経性疼痛に対して,神経切除術を行い,著明な除痛が得られた症例を経験したので報告する.症例は20歳台の女性で,他院での右鼠径ヘルニア根治術後1カ月から右鼠径部に強い疼痛が出現した.各種鎮痛薬でも改善がなく,術後9カ月で当科紹介となった.Tinel兆候陽性で,患者の強い手術希望があったため,手術を施行した.腸骨鼠径神経が外腹斜筋腱膜の縫合糸に巻き込まれており,これを解除し,triple neurectomyを施行した.疼痛は術前visual analogue scale(以下VAS)が80であったが,術後1カ月で5まで低下した.
  • 河内 順, 村山 弘之, 荻野 秀光, 篠崎 伸明, 前川 貢一, 渡部 和巨
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2635-2638
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    32歳,男性.一カ月前に転倒し左下腿を打撲.その後,左下腿に皮膚潰瘍が多発し近医より紹介受診.診察上軽度の左下腿静脈瘤があり,超音波検査では左大伏在静脈の逆流,拡張を認め,静脈うっ滞性潰瘍と診断した.また多発する皮膚の母斑,左足肥大から,Klippel-Trenaunay 症候群と診断した.軟膏,弾性ストッキングなど保存的加療を試みたが軽快せず,腰椎麻酔下に大伏在静脈のストリッピング手術を行ったところ徐々に潰瘍は治癒した.Klippel-Treanunay症候群は先天性血管形成異常であり,しばしば静脈うっ滞による皮膚潰瘍を併発することで知られる.治療として下肢圧迫療法が行われるが,表在静脈の逆流が確認できれば静脈瘤に対する手術は有用であると考えられた.
  • 田邉 和孝, 徳家 敦夫, 影山 詔一, 尾崎 信弘
    2013 年 74 巻 9 号 p. 2639-2644
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の女性で,大腸がん検診で便潜血陽性を指摘された.大腸内視鏡検査で1型下行結腸癌を認め,術前検査で膵尾部癌および早期胃癌を認めた.cStage IIの下行結腸癌,cStage IVaの膵尾部癌の診断にて膵体尾部・脾合併切除,下行結腸部分切除術を施行した.早期胃癌は内科で経過観察となった.術後1年6カ月で多発肝転移にて永眠された.病理組織学的検査所見にて膵癌は粘表皮癌であった.膵粘表皮癌は非常にまれであり,膵癌取扱い規約では腺扁平上皮癌の亜型として分類されている.膵腺扁平上皮癌は膵癌の約2%とまれだが,早期から転移をきたすなど予後不良である.膵癌と他臓器癌の同時性重複は約3%との報告があるが,膵粘表皮癌との同時性重複癌は検索しえた範囲では報告を認めなかった.膵粘表皮癌がまれであるうえに,今回われわれは胃癌と大腸癌の同時性3重複癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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編集後記
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