日本臨床外科学会雑誌
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76 巻, 5 号
選択された号の論文の64件中51~64を表示しています
症例
  • 笠井 明大, 山内 淳一郎, 安田 将, 安食 隆, 赤平 純一, 石山 秀一
    2015 年 76 巻 5 号 p. 1201-1205
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,男性.背部痛を主訴に前医を受診した.腹部CTにて石灰化を伴う後腹膜腫瘤を認め当院消化器センターへ紹介となる.腹部造影CTでは膵尾部背側に約30mmの内部に石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.腹部MRI検査ではT2強調画像で高信号,T1強調画像で低信号を認め,dermoid cystが疑われたが,診断確定のため手術を行う方針となった.手術は5ポートにて行った.膵下縁と横行結腸間膜の付着部を切開すると後腹膜腔に既知の病変を認めた.周囲組織との剥離は容易であり,後腹膜からの栄養血管を切離して,腫瘤を臍部の創より摘出した.術後は特に問題なく,第6病日目に退院となる.病理検査ではcolon duplicationの診断であった.完全鏡視下に切除しえた後腹膜消化管重複症の報告は大変稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 杉田 浩章, 斎藤 健一郎, 小杉 郁子, 高嶋 吉浩, 宗本 義則, 三井 毅
    2015 年 76 巻 5 号 p. 1206-1210
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.他疾患の精査を契機に骨盤内腫瘍を指摘され当科紹介となった.腹部骨盤CT検査では,骨盤内左側に45mm大の充実性腫瘤を認め,強い造影効果を伴っており多血性の間葉系腫瘍を疑い,診断と治療を目的に外科切除の方針とした.術中の出血量減少目的に術前TAEを施行し,2日後に手術を施行した.出血量420gで完全切除が可能であった.病理組織学的には,特定の配列を示さない紡錘形細胞の増生と間質への膠原線維の介在を認め,CD34が陽性であることから孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor;以下SFT)と診断した.SFTは中皮下の結合組織由来の稀な間葉系腫瘍であり,骨盤内発生はさらに稀である.稀少疾患である骨盤内SFTに対する術前TAEの有効性は確立されていないものの,本症例の経験から考慮すべき選択肢の一つと考えられる.
  • 田中 涼太, 亀谷 直樹, 加藤 幸裕, 中澤 一憲, 妙中 直之
    2015 年 76 巻 5 号 p. 1211-1214
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.慢性腎不全に対して約4年前に腹膜透析を導入され,以降,安定して腹膜透析を施行されていた.透析灌流液の注入時に左鼠径部の膨隆が出現するようになった.超音波検査と腹部CT検査での精査にて鼠径ヘルニアと診断され,手術加療目的で当科紹介となった.手術方法について説明したところ,腹腔鏡下手術を希望されたため,腹腔鏡操作を施行できない場合は前方アプローチに変更することなどを含めた十分なインフォームドコンセントを行い,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した.全身麻酔下,3portsで腹腔鏡操作を開始し,腹膜の肥厚や高度な癒着などは認めず,術中・術後とも合併症なく安全に型通りに手術を施行できた.また,術後早期に腹膜透析を再開し,術後2日目に退院とした.その後,約1年後の腹部CT検査では再発はみられていない.
  • 鍵谷 卓司, 笠島 浩行, 原 豊, 大橋 大成, 常俊 雄介, 遠山 茂
    2015 年 76 巻 5 号 p. 1215-1220
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性で,下部直腸癌に対して腹腔鏡下直腸切断術を施行した.病理組織検査で粘液癌の診断であったことから術後ハイリスク群と判断し術後補助化学療法を施行した.術後8カ月経過時,会陰部の膨隆と端坐位困難を主訴に受診した.会陰部に手拳大の膨隆を認め,腹部CTで骨盤底からの小腸の脱出を認めた.続発性会陰ヘルニアと診断し,経会陰アプローチにてULTRAPRO®PLUGおよびULTRAPRO®MESHを用いてヘルニア根治術を施行した.経過は良好で術後4日目に退院した.現在,術後1年7カ月が経過したが再発は認めていない.続発性会陰ヘルニアはまれな疾患であり,本邦でも報告例は少ない.発症機序や手術方法,報告例などに対して文献的考察を加えて本症例を報告する.
  • 中野 敢友, 井谷 史嗣, 黒瀬 洋平, 石井 龍宏, 淺海 信也, 高倉 範尚
    2015 年 76 巻 5 号 p. 1221-1226
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    腹会陰式直腸切断術後の会陰ヘルニアは稀な合併症であり,外科的治療法は確立されておらず再発率も高い.今回われわれは,腹会陰式直腸切断術後に発生した会陰ヘルニアを2例経験したので報告する.症例1は75歳の女性.直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術施行後3カ月目に会陰ヘルニアを発症し,経会陰アプローチにてメッシュを用いて修復を行った.メッシュを前壁は尿生殖隔膜および膣後壁,左右は仙結節靱帯,後壁は尾骨骨膜に非吸収糸にて縫合固定し会陰底を形成した.症例2は82歳の男性.前医での開腹腹会陰式直腸切断術後の会陰ヘルニアに対して,同じく経会陰的にメッシュを用いて前壁は尿生殖隔膜,左右は仙結節靱帯,後壁は尾骨骨膜に固定して修復を行った.会陰ヘルニアに対するメッシュ使用後の再発予防のためには両側方における仙結節靱帯への非吸収糸による確実な固定が重要であり,そのためにもアプローチとしては経会陰的が有利である.
支部委員会報告
日本臨床外科学会・日本外科学会共催(第76回日本臨床外科学会総会時開催)第13回臨床研究セミナー
編集後記
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