日本で最初に製作された風洞は,明治41(1908)年に東京帝国大学理学部理学科の田中館愛橘教授が長持を用いて作られたものである.その後,大正初期に当時の陸軍や海軍の研究所,また,東京帝国大学航空研究所に幾つかの風洞が建設され,太平洋戦争が勃発する直前の昭和15(1940)年頃には民間企業も含め,風洞建設のピークを迎える.日本第一号の風洞から,昭和15年頃ピークを迎えた風洞建設を年代ごとに追って調べた結果に基づいて解説する.
技術試験衛星9号機(Engineering Test Satellite-9: ETS-9)は,次世代静止通信衛星の産業競争力強化に向けた技術実証を目的として開発を行っている.衛星バス技術についてはミッション機器の搭載量を増加させるために全電化推進バスの開発を行うとともに,そのために必要となる大電力化・高排熱技術の開発を行う.また通信の大容量化とフレキシビリティ技術の獲得に向けた通信機器の開発を行う.詳細設計結果を元にETS-9の概要についてバス及び搭載ミッションの状況について述べる.
宇宙には地上に無い新たな価値があり,それが地上の課題解決に役立つ新たなソリューションを生み出している.これらの宇宙で生まれるソリューションは,人類共通の目標であるSDGsの達成に貢献し,その重要性は益々高まっている.本記事はこの観点に立ち,地上を超えた宇宙の新たな価値を大きく三つに分類し,それらがどのようなソリューションを生み出して行けるかを解説する.そして,民間企業が実際にどのように宇宙で生み出すソリューションを地上の課題解決に活かして行くのか,実例として,横河電機が行っているISS(International Space Station)の微小重力を活用した生命科学実験,人工衛星からの広域観測データを活用したリモートセンシング,そして月面での極限環境での居住に対応した省エネルギー循環型システムの検討を紹介する.