窯業協會誌
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93 巻, 1073 号
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  • 桑原 勝美, 杉山 幸三, 伊藤 基樹
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 11-16
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    LixV2O5多結晶体を調製し, β相中のLi+イオン分布について考察した. 固相反応による試料調製に際して, 従来用いられてきたリチウム源, Li2OやLi2CO3の代わりにLiVO3粉末を用いた. LiVO3, V2O5及びV5O3の混合粉末からなるタブレットを窒素雰囲気中560℃で予備加熱し, 得られた試料を粉砕, タブレットへ加圧成形そして窒素気流中560℃で11時間再び加熱した. 最終生成物はX線回折によりβ相であることが明らかとなった. LixV2O5試料を物理化学的に調べるためにLixV2O5/LISICON/Li0.25V2O5電池を構成した. 電池の起電力はリチウム含有量とともに単調に変化した. このことから試料のβ単一相領域は0.22≦x>0.55であること, 並びにこの相におけるLi+イオンは可能な陽イオン位置, すなわち7配位, 8配位及び4面体位置, に無秩序に分布していることが示唆された.
  • 池田 勉, 森 忠芸, 飯田 武揚, 三田村 孝
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 17-22
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アルゴン流通下 (150-200ml/min), 300°-1100℃の温度範囲で化学量論比の塩化ジルコニウム (IV), 炭素源として活性炭を, 還元金属としてAl粉末及びMg粉末を用いて, 効果を調べた. ZnではZrCを合成できなかった. ZrCl4-Al-C系では500°-1000℃でAl3Zrの合金が生成し炭化は800℃以上で進み, 1100℃でZrCのみとなったが結晶性はよくなかった. また, 1100℃, 1h反応でのZrCl4の昇華損失は65.5%に達した. これに対して, ZrCl4-Mg-C系では500℃以上でZrCが生成した. この場合, 500°-700℃でZrが, 400°-1000℃でMgCl2が観察された. また原料中の微量の酸素により, 400℃以上でMgOが800℃以上でZrO2が生成した. そこでMgの混合比を化学量論比の1.5倍にしたところ, ZrO2は認められず, 逆に, ZrC及びMgO量が増加した. 反応生成物を1N塩酸で洗浄処理したところ, MgO及びMgCl2は除去され, 800℃以上でZrC単相となった. 1100℃, 1h反応で得られたZrCは微粉末 (粒径0.1-0.3μm) で, 格子定数a=4.686Å, 結晶子径は159Åであった. またこのときのZrCl4の昇華損失は0.2%であった. 以上のことから, 還元金属としてMgが有効であることが分った.
  • 若林 肇, 寺井 良平
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 23-29
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ホウケイ酸ガラス (2Na2O・xB2O3・(8-x)SiO2) の電気伝導度を固体から溶融状態までの温度範囲で測定し, 組成 (構造) と電気伝導度の関係を, これまでに報告されているNMRの結果とともに検討した. また, 600℃における各ガラスのナトリウムイオンの自己拡散係数を, 22Naのトレーサーを用いて測定し, 電気伝導の値と比較した.
    その結果, 転移点以上の温度ではホウ酸の導入に従って生成する [BO4]-Na+/ΣNa+の比率が増加するにつれて, 比例的に電気伝導度が低下し, その比が1となり, 非架橋酸素イオンの消失するB/Na≧2の組成領域では, 一定となることが明らかとなった. このことから, ホウ素の酸素4配位化が, ナトリウムイオンの結合状態を変化させ, それによって電気伝導度を減少させるという, 明確な組成依存性を示すが, 一方, 3配位の [BO3] グループは, 電気伝導度にあまり大きな影響を与えないことが分った.
    反面, 固体状態においては, これまでの報告結果と同様, ホウ酸の増加は電気伝導度を単調に減少させ, その活性化エネルギーを増大させた. ここに現れた溶融状態との違いは, 融液状態から固体状態に移行した温度 (凍結温度≈Tg) が組成によって大きく異なり, この差が電気伝導度に大きな影響を与えるからであると結論した. B/Na≧1のこの系のガラスにおいて, Tgが100℃低下することにより, 電気伝導の活性化エネルギーは約3.5kcal/molの増加となり, その増加分は, Andersonモデルによる活性化エネルギー中のひずみエネルギー項の変化によると判断された.
  • 前川 尚, 佐藤 淑代, 横川 敏雄
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 30-37
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化物イオンを含むアルカリホウ酸塩ガラスにX線を照射した際形成される各種Vk中心 (X2-中心, X=F, Cl, Br, I) の吸収スペクトルを測定した. K2O-B2O3-KCl系ガラスではCl2-中心の形成量はK2Oの濃度が20mol%を超える塩基性側では急激に低下した. この結果は, Na2O-B2O3-NaCl系ガラスで見られた以前の結果と一致し, ホウ酸塩ガラス特有の構造変化と対応していると判断された. 一方Na2O-B2O3-NaX (X=F, Br, I) 系ガラスではF2-, Br2-中心の生成量もCl2-と同様酸性側ガラスで大きいことが判明したが, I2-中心の形成量の組成に対する顕著な依存性は見られなかった. このことは分極率の大きいヨウ化物イオンの酸化物ガラスでの溶存状態が他のイオンとは異なるためと解釈された. Vk中心による吸収スペクトルは各種ハロゲン化物結晶で観測されるよりも高エネルギー側に現れた. ガラス中でのCl-Cl伸縮振動に基づくラマンシフトの結果と併わせ, ガラス中ではVk中心は結晶中よりも若干安定に存在することが結論された. 一般にハロゲン化物イオンはVk中心を形成する他に母ガラスの欠陥中心を解消する捕集剤としての役割を持つことも認められた.
  • 大塚 寛治, 荻原 覚
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 38-45
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    還元雰囲気で焼成されるエレクトロニクス用アルミナセラミックスの有機バインダーのバーンアウトは困難な作業の一つとして認識されている. 92%アルミナ質セラミックスとポリビニールブチラールバインダーの系からなるシステムの還元雰囲気焼成時のバインダーの分解とセラミックスの焼結の相互関係について第1報で現象的な調査がなされた. 第2報で原料混合条件の変化によるそれらの相互関係が研究され, その結果に対する機構の検討もなされた. また第3報では焼成物の厚みを主体とした物理寸法の影響, 収縮率の方位による変化とそのばらつきの原因が研究された. これに引き続き, 第4報では焼成物の寸法精度に影響を与える焼成収縮率のばらつきを小さくする要因を探索し, その結果の解析がなされた.
    焼成収縮率のばらつきを小さくする要因として次の項目が有効なものである.
    (1) シート中のバインダーの含有量を減らす
    (2) 焼成雰囲気中 (H2+N2+H2O) の水蒸気濃度を増す
    (3) 焼成体表面通過ガス量の増大
    (4) 炉内ガス圧の減少がある. 第1報から第4報を焼成収縮率のばらつきの減少という観点から整理すると図13及び図14のようになる.
  • 平田 好洋, 南園 広志, 島田 欣二
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 46-54
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    3Al2O3・2SiO2に相当するSi(OC2H5)4とAl(OC3H7i)3の混合物とpH=7.0-11.9のアンモニア水から得られるSiO2-Al2O3粉体の性質を調べた. 生成粉体の化学組成は反応条件によらず2Al2O3・SiO2に近くなった. pH=9.1以下の水で生成する粉体は約0.1μm以下の球状粒子からなる非晶質相であった. pH=10.0以上の水ではX線的にはAlの水酸化物が生成した. 非晶質粉体はIRスペクトルの解析より, Si(Al)O4 4面体とAlO6 8面体が不規則に酸素を介して結合した構造であると解釈された. 生成粉体は示差熱分析で980°-1005℃に発熱を示し, Al-Siスピネル相へ変化した. 1100℃, 1時間の加熱で生成するスピネル相の格子定数は7.894±0.003Åで, 粉体による差は小さかった. 非晶質のSiO2-Al2O3粉体を1200℃以上に加熱するとムライト化が急速に進行し, 高温においてはθ-及びα-アルミナの生成も認められた. ムライトのa軸長は加熱温度の上昇に伴い減少し, 低温で生成するムライトほどAl2O3に富む固溶体であることが示唆された. 熱処理粉体の平均粒径は1300℃までわずかに減少した後, 1400℃以上では急激な粒成長により増大し1600℃では約0.5μmとなった.
  • 田中 英彦, 猪股 吉三
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 55-60
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    炭化ケイ素焼結体のクリープを検討した. 用いた材料は0.2wt%のホウ素と2.0wt%の炭素を添加して常圧焼結したβ-SiCである. クリープの測定は63-267MPaの圧縮応力, 1620°-1760℃の温度で行った. 炭化ケイ素焼結体は一定のクリープ速度を示した. その活性化エネルギーは約790kJ/molであり, 応力指数は2であった. クリープ変形によってき裂や気孔が導入されることは認められなかった. 拡散機構によってSiC焼結体のクリープを解釈した.
  • 梅林 正気, 岸 和司, 谷 英治, 小林 和夫, 伊藤 普, 中村 良三
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 61-67
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Al2O3, ZrO2, Si3N4, サイアロン, BN, AlN, SiC, TiC, B4C及びCとNi及びNi-Mo合金の接触角を1気圧の窒素ガス雰囲気で測定し次の結果を得た.
    (1) Al2O3及びZrO2とNi及びNi-Mo合金の接触角は120-130°で, 反応及び接合はなかった.
    (2) Si3N4, サイアロン, BN及びAlNとNi及びNi-Mo合金の接触角は, 90-140°で, 若干反応があったが, 接合はなかった.
    (3) Si3N4及びサイアロンとNi-30wt% Moの接触角は減圧下 (6×10-4Torr) で, 0°となった.
    (4) 炭化物はいずれも, Ni-Mo合金と反応及び接合した.
    TiC及びZrCは, Ni-10wt% Mo以上で接触角が0°となった. SiCは, Ni-40wt% Mo以上で接触角が0°となった.
    (5) ZrC-Ni/Ni-Mo系で, 次の反応があった.
    ZrC+Ni→Ni-Zr alloy+グラファイト
    ZrC+Mo→MoZr2+Mo2C
    ZrC+Mo2C→(Zr,Mo)C
    (6) SiC-Ni/Ni-Mo系で, 次の反応があった.
    SiC+Ni→Ni silicide+グラファイト
    SiC+Mo→MoSi2+Mo2C
  • 小山田 了三, 古賀 秀人, 星野 朝則
    1985 年 93 巻 1073 号 p. 68-72
    発行日: 1985/01/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    PbO-SiO2系及びPbO-SiO2-K2O-Na2O系ガラス中のMn3+イオンの光吸収スペクトルとガラスの屈折率を測定し, ガラス組成と吸収ピーク波数及び屈折率の関係を調べた. PbO-SiO2系にMnO2を添加したガラス中のMn3+の吸収ピーク波数はMnO2添加量か増加するとともに低波数側ヘシフトした. 屈折率はMnO2添加量か1.0mol%まではほぼ一定となった. PbO-SiO2-K2O-Na2O系ガラス中のMn3+の吸収ピーク波数は [K2O]/[K2O+Na2O] の値の増加とともに低波数側ヘシフトし, 混合アルカリ効果ははっきりとは現れない. 屈折率は [K2O]/[K2O+Na2O] の値の増加とともに直線的に減少し, 混合アルカリ効果は明確には認められない.
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