ホウケイ酸ガラス (2Na
2O・
xB
2O
3・(8-
x)SiO
2) の電気伝導度を固体から溶融状態までの温度範囲で測定し, 組成 (構造) と電気伝導度の関係を, これまでに報告されているNMRの結果とともに検討した. また, 600℃における各ガラスのナトリウムイオンの自己拡散係数を,
22Naのトレーサーを用いて測定し, 電気伝導の値と比較した.
その結果, 転移点以上の温度ではホウ酸の導入に従って生成する [BO
4]
-Na
+/ΣNa
+の比率が増加するにつれて, 比例的に電気伝導度が低下し, その比が1となり, 非架橋酸素イオンの消失するB/Na≧2の組成領域では, 一定となることが明らかとなった. このことから, ホウ素の酸素4配位化が, ナトリウムイオンの結合状態を変化させ, それによって電気伝導度を減少させるという, 明確な組成依存性を示すが, 一方, 3配位の [BO
3] グループは, 電気伝導度にあまり大きな影響を与えないことが分った.
反面, 固体状態においては, これまでの報告結果と同様, ホウ酸の増加は電気伝導度を単調に減少させ, その活性化エネルギーを増大させた. ここに現れた溶融状態との違いは, 融液状態から固体状態に移行した温度 (凍結温度≈
Tg) が組成によって大きく異なり, この差が電気伝導度に大きな影響を与えるからであると結論した. B/Na≧1のこの系のガラスにおいて,
Tgが100℃低下することにより, 電気伝導の活性化エネルギーは約3.5kcal/molの増加となり, その増加分は, Andersonモデルによる活性化エネルギー中のひずみエネルギー項の変化によると判断された.
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